本人はずっと“むくみ”だと思っていたのに、実は坐骨神経痛だった、あるいは“むくみ”と坐骨神経痛の両方が重なっていたということがしばしばあります。内臓の病気からくるものは別として、夕方になると膝下がむくんでかったるくなり、夜は足を高くしないとなかなか寝付けないなど、血行不良によるむくみも辛いことですが、それは急を要して改善しなければ状態があっかするというものでもありません。しかし、坐骨神経痛による“足のだるさ”は状態が悪化しますと、しびれや痛みに変わったり、足が動かせなくなるほどになる危険性もありますので、早急に改善していただきたいと思います。
 血行不良のむくみによる足のだるさの特徴は、やはり夕方にかけて症状が重くなるといった点です。朝方はむくんでいないが、仕事が終わる頃になるとふくらはぎがパンパンにむくみ、ブーツや靴を履くのがきつくなるというのが一つのの傾向です。
 一方坐骨神経痛による足のだるさは、時間帯はほとんど関係ありません。そして活動しているとき、動いているときは症状を感じませんが、じっと座っていたり、横になったりして静かにしているときに症状を感じやすくなるという特徴があります。ですから、「だるいと言えば、いつもだるい」というような感想を持つようになります。

 数日前に来店された30歳代のお母さんです。その方の自覚症状は「日中動いているときは特別症状も苦痛も感じないが、夜布団に入って眠りにつくと脚全体がなんとなく痛みを感じ、朝起きると足がむくんでいる。」そして「背中が痛くて仰向けで寝ることができない。」というものでした。
 “動いていると他のことに紛れて気にならないが、じっとしていると症状が目立ってくる”というのは、ある種の耳鳴りもそうですが、常に軽微の症状があり続けているということかもしれません。まず軽度の坐骨神経痛か、あるいは大腿神経痛の疑いがあります。“朝起きると足がむくんでいる”というのは、一般的によくある“仕事後のむくみ”、”夕方のむくみ”とは違って、何処かで血行不良になっているのか、腎臓の機能が弱っているからかもしれません。
 背中の痛みは肩甲骨の辺りとその下の肋骨下部の両方にありました。肩甲骨周辺の痛みは、肩甲骨の位置がおかしいことが原因ですが、その下の痛みは腎臓が少し腫れていて肋骨からの圧迫を受けているからだと考えられます。「仰向けで寝ると背中が痛い」というのがその兆候です。ですから“坐骨神経痛と腎臓”というのが、今回の施術のキーワードになります。
 
 腎臓が少し腫れることはよくあることです。それで腎機能がおかしいとか、腎臓が病的であるということではないと思いますが、疲れが溜まると腫れてしまうのかもしれません。“耳の調子が少しおかしい”というが腎臓が腫れているときによくある症状です。これに対しては、私は専ら足裏や手のひらの腎臓反射区を利用して施術を行います。けっこう痛みを感じるかもしれませんが、反射区を強めの指圧で刺激し続けます。するとそのうち硬かったり粘っこかったりしていた反射区の部分が柔らかくなります。これで大概の腎臓の腫れは改善されますので背中下部の痛みは良くなりますが、もし反射区への施術だけで改善しない場合は耳のズレを修正するため顔の整体を行います。腎臓の状態はむくみに大きく関わりますので、当然むくみ対策の施術でもあります。
 予想していた通り、反射区への施術を終えますと肋骨下部の腫れはおさまり、「仰向けで寝ていても痛みを感じなくなった」とおっしゃいました。おそらくこれで起床時の足のむくみも良くなるだろうと思われます。

 次に坐骨神経痛の方ですが、以前にも記しましたように坐骨神経痛は神経が腰椎の椎間板で圧迫される(ヘルニア)か、殿部の梨状筋がこわばって圧迫されるかのどちらかが多いのですが、どちらの場合も右側か左側のどちらか片方に症状がでることが多いです。今回のように両脚に同じような症状がでるというのは、別の理由で両側の梨状筋が同時にこわばってしまった可能性が考えられます。
 背骨(腰椎)を一つ一つ確認していきますと、腰椎2・3・4番の棘突起が上の方を向いていました。私の手でそれらを下に向けますと殿部の梨状筋のこわばりが改善します。ですからこの方の場合、何らかの理由で腰椎が本来の状態ではなくなったために、常に梨状筋が少しこわばった状態にあり、それが坐骨神経を軽く圧迫し続けているので軽度の坐骨神経痛になったのだと思われます。結局、仙骨が歪んでいたことがその原因でしたので、それを調整して施術を終えました。

下半身の皮神経

 尚、下半身のしびれやだるさに関係する神経には坐骨神経と大腿神経があります。大腿神経は概ね内転筋や太ももの前面と外側面に関係しますが、それは腰神経叢であり腰椎の2~4番に関係します。坐骨神経は太ももの裏側と膝から下、足先までに関係しますが、仙骨神経叢であり腰椎4・5番と仙骨に関係します。
 この方の場合「脚全体が痛みを感じた」と訴えていましたので、坐骨神経痛のみならず大腿神経痛(大腿外側皮神経痛)も併発していたと思われます。

 “むくみ”か“神経痛”かの判別は、普通の人にはなかなか難しいところです。ふくらはぎから下のむくみであれば、足リフレ(足つぼマッサージ)でだるさがスッキリしてしまうことも多いのですが、坐骨神経痛が絡んでいる場合はそれでは解決しません。足リフレの効果は、その時だけ心地良く感じても半日ももたないでしょう。夜に足リフレをやって久々に気持ちよく眠れたとしても「翌朝起きたら、まただるさを感じる」というようになってしまいます。
 坐骨神経痛は症状が軽微なうちに改善してしまいましょう。「何となく気になるけど‥‥」と放っておくと症状が徐々に進み、ある日突然足が動かせなくなることもあります。
 慢性的に脚にだるさやかったるさを感じている人は、「私のふくらはぎのだるさは、むくみのせい」と決めつけない方が良いと思います。