5分ほど歩くと足が動かなくなり、しばらく休まないと歩き出せない。あるいはひどくなると、10メートルも歩けない、という症状がでる場合があります。「素足では全然普通に歩けるけど、靴を履くとすぐに疲れてしまう」という人もいます。
 「休み休みでないと歩くことができない」という症状の代表的な病名は脊柱管狭窄症ですが、脊柱管狭窄症以外にも同じような症状がでることがあります。それを今回はお話ししたいと思います。
 
足の伸筋腱と屈筋腱

足趾が丸まっている人は靴を履くと疲れやすい
 工場で働いている人は安全靴を履いています。1トンの重さにも耐えられる靴だそうですが、この靴は先が硬く強くなっているほか、長靴のように足先に大きな空間があるようです。その感じは、もしかしたら長靴のようであるかもしれません。私が小学生の頃、雨の日はゴムの長靴を履いて通学していました。すると普段靴のように足にフィットしていませんし、足先の空間が大きいので地面を蹴るときに靴を安定させるため指先を丸めるように力を使わなければなりませんでした。例えば同じ15分の通学路でも、普段靴では苦もないのに、長靴では歩くとことが疲れてしまいます。
 指先に普段以上に力を入れたので疲れるのか? あるいは他の理由で疲れるのか?
 これが今回のテーマになります。

 ところで、指先を丸めることを筋肉の働きに置きかえて考えますと、指先の足底側の筋肉(長母趾屈筋と長趾屈筋)を縮め、指先の甲側の筋肉(長母趾伸筋と長趾伸筋)を伸ばすことになります。15分、あるいは30分や1時間くらい長靴を履いて歩く程度であれば、この状態を続けたとしても少し休めば筋肉に問題が起こることはほとんどないと思います。しかし一日8時間、それが週に5日間ということになりますと、足底側の長母趾屈筋と長趾屈筋はこわばった状態、反対側の長母趾伸筋と長趾伸筋はゆるんだ状態になってしまいます。
 安全靴や長靴だけでなく、おしゃれなサンダルや先細の靴やヒールの高い靴などを愛用している人は、外反母趾になりやすいというのもありますが、指先が丸まった状態、つまり甲側の筋肉がゆるんだ状態になっている可能性が高いと言えます。
 以前に、”枕が合わないのは、後頭部や頸の後ろ側の筋膜がゆるんでいるため”というのを取り上げましたが、靴を履くと長く歩くことができない、疲れやすいというのも同じ理屈があてはまります。

ゆるんでいるところに靴があたると筋肉の働きがおかしくなる
 こわばっている部分に何かがあたると痛みを感じることが多いです。こわばっている部分というのは縮む方向に力が働いているところなので、それを引き伸ばすような刺激や動作に対しては拒否反応を示し痛みを感じやすくなります。これとは反対にゆるんでいる部分に物が接触しますと、その部分は刺激に抵抗する力を持っていませんので、その歪みが他の部分にでるようになります。伸びきった状態のゴムの部分に力を加えるとゴムはその刺激に耐えられなくなるので他の部分に助けを求める、といった感じでしょうか。
 長母趾伸筋(腱)や長趾伸筋(腱)あるいは足の甲の筋膜がゆるんだ状態で、歩く度にその部分に靴と接触する力が加わりますと、その部分ではその力(刺激)を処理しきれずに膝や腰などに負担が及ぶことになります。これが、素足では普通に歩けるが、靴やサンダルを履くと急に腰が重くなり疲れやすくなってしまうことの原理です。(私はそう考えています。)
 この状態が進みますとスリッパを履くことができなくなったりします。靴下を履いているくらいの刺激は大丈夫でも、スリッパに足をくぐらせた瞬間に息苦しくなって足がおぼつかなくなってしまう方もいます。

 「足袋なら軽快に動けるけど、靴を履くと足が上がらなくなってしまう」という建設作業に従事している方もいました。「座ったり、寝たりしているぶんにはどこも痛くないけど、散歩するとすぐに腰が痛くなってしまう」という方もこのような状態だと思います。
 足趾の先(第一関節)が曲がっているような方であれば、その指先を伸ばすようにストレッチして長母趾屈筋、長趾屈筋のこわばりを改善するようにすれば、症状は少しよくなるかもしれません。あるいは足趾先を動かす長母趾屈筋、長趾屈筋、長母趾伸筋、長趾伸筋の本体(筋腹)はふくらはぎの一番深い部分にありますので、ふくらはぎの深い部分をようくマッサージすれば症状が改善するかもしれません。しかし本格的に改善したいと考えるのであれば、ここでの施術をしていただくのが一番だと思います。それが早いです。

下腿の伸筋と屈筋

 病院などで「長く歩けない」「部屋の中では大丈夫だけど、外に出ると歩けなくなる」などと訴えますと、まず脊柱管狭窄症の疑いがかけられ、レントゲンやMRIなどの診断を受けることになるかもしれません。それでも原因がよくわからなければ、いろんな検査を受けなければならなくなるかもしれません。あるいは原因不明として処理されたり、“精神的な問題かも”などと言われてしまうかもしれません。
 私から見ると「ただ足の筋膜や筋肉がゆるんでいるだけです」となります。そしてそのゆるみを解消するだけで症状は大きく改善しますので、そのような悩みをお持ちの方は是非ご来店いただければと思います。