「どんな枕も合わなくて、いったいどんな枕にすればいいのか?」という質問をよく受けます。テレビショッピングなどを通じて枕をいくつも買ったり、独自に枕をあつらえたりしてみても、どうしてもしっくりと合うものに巡り会えないという話をしばしば耳にします。
 私はもう何年も枕を使用していません。スポーツタオルを四つ折りにして、そのうえに頭を置いて寝ています。普通はそれで大丈夫なのですが、時折もう少し高さがほしくなることがあります。そんな時はきっと体が歪んでいるのだろうと考えていますが、それでも睡魔に負けてすっかり寝入ってしまいます。
 体型的に申せば、首が前にでいる人は枕の高さがある程度必要だということになります。低い枕だと顎が上がってしまい、上を向いたような感じになってしまうので口呼吸になりやすくなってしまいます。しかし枕が高すぎると首の後ろ側が伸ばされた状態になりますので、首を痛める可能性も高くなりますし、肩こりの原因もなると思います。

 さて、枕の高さや材質に関係なく、首の後ろ側や後頭部に何かが当たること自体が不快に感じる状態というのがあります。時々「襟の高い服を着ると肩がこる」という人がいますが、このような場合も同じ状況だと考えられます。
 筋肉や筋膜(筋筋膜)が正常な状態ではなく、変調してゆるんだ状態になりますと、そこに物が当たることが不快で耐えられなくなり、別な場所にこわばりをつくってしまいます。ハイネックの服を着て筋筋膜がゆるんでいる首の部分に生地があたると肩につながっている筋肉がこわばってしまうため「肩がこってしまう」となります。筋筋膜がゆるんでいる首や後頭部に枕があたることによって喉や胸の筋筋膜がこわばってしまうと、呼吸がしづらくなってしまうことも考えられることです。床に入って“さあ寝よう”と思ってもなかなか寝付けない場合は、このことが原因なのかもしれません。
 筋筋膜がこのような状態の時には、どんな枕でも“合わない”と感じられるでしょう。それは枕の問題ではなく、筋筋膜の変調が原因です。反対に、筋筋膜の状態がしっかりしていれば、どんな素材の枕でも違和感は感じないと思います。(枕の高さは別にして)
 
筋筋膜の変調

 話は変わりますが、椅子にすわると腰が張ってきて痛くなってしまう場合があります。太ももを座面につけないように浅く座っていると大丈夫ですが、深く座ると腰痛や坐骨神経痛になり耐えられなくなったりします。こういう場合は、太もも裏側の筋筋膜が変調してゆるんでいるからだと考えることができます。
 その他にも、“仰向けで眠ることができない”、“うつ伏せで寝た方が朝が楽”というような場合は、背中の筋筋膜に変調があるため、その部分を床につけたくないということなのかもしれません。

変調‥こわばり=あたると痛い、ゆるみ=あたると他のところに痛みが出る
 筋筋膜が収縮したままの状態で伸びない状態を“こわばり”、反対に伸びきった状態で収縮することができないのを”ゆるみ”と私は表現しています。
 “こわばり”は筋肉が硬く太くなるのが特徴ですが、伸びない状態ですので、何か物が当たるとその部分が痛みを発します。歩きすぎたり、走り込んだ後などにふくらはぎの筋肉がパンパンに張ってしまい、マッサージなどをすると痛みを感じることがありますが、それは筋肉がこわばってしまっているからです。マッサージをしばらく続けていますとこわばりの状態が緩和していきますので、その後は揉まれることが気持ちよくなったりします。
 “ゆるみ”は筋筋膜が伸びきってしまい中抜けしたような状態で、頑張ることができないのが特徴です。物が当たったり、重みが掛かったりするとそれらに負けて耐えられなくなりますので、その部分ではなく他のところがこわばり痛みを出したりします。こういう場合は刺激の強いマッサージは禁物です。擦ったり、そっと手をあてて筋筋膜の状態を回復させるようにするのが原則です。但し、別なところに原因があって、その部分がゆるんでしまっている場合が多いので、根本的な原因を探し出してケアしなければ効果は期待できません。ある方は太ももの裏側がゆるんでいるため椅子に深く座ることができませんでしたが、その原因は背骨(胸椎12番)がぐらぐらしていて不安定だからでした。背骨を安定させると太もも裏側のゆるみが解消するため深く座ることができるようになりますが、背骨が不安定である原因を探し出し、それを整えるという施術が必要になります。

 枕が合わない、寝て起きると背中が張っている、なかなか眠りにつくことができない‥‥これらの原因を枕や寝具にしたがる傾向の人がけっこういますが、私から見ますと「そうではなく、体が整っていないから」と言いたくなってしまいます。そして高いお金を出して枕をあつらえたり、高級寝具を買うのではなく、体を整えるだけで全部解決してしまうのに、と思うこともしばしばあります。