ここのところ、頭のふらつきや強いめまいを訴える人が立て続けに幾人か来店されました。季節的にこの時期はギックリ腰の方が増えるのは例年のことですが、ふらつきやめまいを訴える方が多くなるのは例年とは違う感じです。
 これまで、めまいを訴える方には頭蓋骨を整え、血液循環の流れを整えることで対応してきました。めまいの原因の一つとして内耳のリンパが関係していることがあります。局所的にリンパの流れが悪いので、内耳の中で三半規管の機能が悪くなっていると考えられるからです。ですから、頭蓋骨を整えることで耳の位置を整え、静脈の流れを整えることでリンパの流れを改善することが施術の主な手段となります。ただ、このような方は自覚があるかないかに関わらず、音の聞き取り検査をすると右と左で聞き取る音色が違っていることがほとんどです。あるいは、どちらかが難聴気味であると訴える場合もあります。
 ところが、最近来られた数人は音の聞き取りにはさして問題はなく、強いめまいと、起き上がるとふらついて歩くこともできない、というものでした。共通していることは、状態が悪いときは血圧がとても高くなっているということです。おそらく血が頭にちゃんと届いていないので、心臓が一生懸命になって血液を頭まで届けようとしているのではないかと思います。そしてもう一つの共通点は首が曲がっていることです。つまり頚椎がずれているということです。

頭部に行く総頚動脈と椎骨動脈

 頭に血液を送る動脈には、皆さんが“首切り”などでイメージできる頚動脈(総頚動脈)と頚椎の際に沿って昇る椎骨動脈の2つがあります。どちらも大切な動脈に変わりはありませんが、総頚動脈は生命維持に、椎骨動脈は頭の回転、脳の働きに関係が深いのではないかと私は考えています。頚椎がずれますと椎骨動脈の流れが悪くなると考えられますので、脳の働きが鈍るのだと思います。“頭がスッキリしない、ボーッとした感じ”になる原因の一つでもあると考えられます。そしてその状態がひどくなると、ふらつきやめまいを起こすのかもしれないと考えることもできます。
 また、洗濯物を干す動作など上を向くとクラクラするといった場合、あるいは下を向くとクラクラすると言った場合は、頭蓋骨と頚椎の関係がおかしいことも考えられます。椎骨動脈が圧迫を受けて血が流れなくなるのかもしれません。

頚椎の歪みに関係する主な筋肉

 さて、頚椎がずれる理由はたくさんあります。上から見ていきますと、後頭部と第1頚椎、第2頚椎の間には後頭下筋群があります。後頭部と首の境がコチコチになって、指圧すると痛気持ちよいばあいは、後頭下筋群がこわばっている可能性があります。後頭部と第1頚椎の関係が悪くなりますと、上を向いたり下を向いたりするとき、血管が圧迫を受ける可能性は高くなります。さらに、噛みしめや歯ぎしりなどで第1頚椎がずれることはよくあることです。
 第1~第4頚椎は肩甲骨と肩甲挙筋でつながっていますので、肩甲骨がずれるとその影響でこれらの頚椎もずれます。第2~第6頚椎は斜角筋で肋骨(胸郭)とつながっています。体が捻れ胸郭が歪みますと、斜角筋がこわばりこれらの頚椎に影響を与えます。
 第6・第7頚椎は菱形筋で肩甲骨とつながっています。腕の使いすぎで腋の下(前鋸筋)がこわばりますと肩甲骨が外にずれます。それによって菱形筋がこわばり、これらの頚椎に影響を与えます。
 また、頚椎の中で全身をうかがいしる目安となるのは第7頚椎ですが、これは骨盤と関係が深いですから下半身の問題で第7頚椎がずれ、その影響で上部頚椎がずれるということもよくあることです。

 実際のところ、頚椎が歪んでずれている人はたくさんいます。それでもほとんどの人はめまいやふらつきを起こしません。ですから頚椎のずれだけに注目してみても状態を改善できるかどうかはわかりませんが、このような状態の人は後頭部と第1・2頚椎の間が強情なこわばりであり、幾重もの原因が重なっていると考えています。施術をしてもなかなか“余裕のある首”の状態にはなってくれないので、より繊細な施術が求められます。

 先日来店された方は60歳代の男性で、めまいというよりふらつきでした。夜中に目が覚めトイレに行こうとしたらクラクラっときて、それ以降同じ状態だということでした。もう仕事はしていないとのことですが、前日はジャガイモを植える作業を一日中していたということでした。施術前に血圧を測ってもらうと、かなり高い値でした。体を見ると頚椎4番が左側に大きくずれていてやはり首がかなり曲がっていました。(めまいを起こす人は頚椎4番のずれが目立ちます。)畑仕事でずっとしゃがみ続けていたとのことで、左側の母趾先がコチコチに硬くなっているほか、腋の下(前鋸筋)もガチガチに硬くこわばっていました。また噛みしめもあり、体全体もかなり歪んでいました。これらを整えることによって首の曲がりを修正し首に余裕ができる状態にすると、ふらつきの状態はだいぶ良くなりました。再度血圧を測ったもらうと、少し高めながらも許容範囲におさまっていました。
 その後、起き上がっていただき、座った状態でいろいろ確認をしていきましたが、しばらく座っていると血の気が引いていく感じがするようになったとのことで、再度腋の下の前鋸筋をゆるめますと状態は良くなりました。

 ここで「血の気が引く」というのは大きなキーワードです。寝た状態では大丈夫でも、起き上がると血液が頭に昇らなくなるということですから、施術前に血圧がかなり高かった理由はここにあると思います。
 さらに首を整えただけでは血液が昇らない状態を改善することができませんでしたが、腋の下をゆるめることによってそれが改善されたことの事実は、理由はともかくとして、大きなヒントになりました。
 これまでも、ほとんど音が聞こえなくなる難聴や、目の霞みや不快感などを最終的に腋の下の奥の奥のところのこわばりを解消することで改善できた経験がありますが、そこは脳への血流に関係するポイントがあるのだとの思いを強くしました。

 体の不調は、それまでほとんど自覚なく過ごしていたものの「突然やってきた」という感想をお持ちの方がほとんどです。「血液検査とか病院での検診で何も異常はないと言われたのに、急にこうなった」ということをしばしば耳にします。これについて正確に説明することはできませんが、体はいろいろな不具合があったとしても自己調整能力を発揮して頑張っていますが、もう頑張りきれなくなると、プッツンしたように一気に不調があらわになってしまう、という感じがしています。それを良いように考えれば、休息のサインであり、体を整える必要性のサインであると受け取ることができます。
 ですから、ふらつきやめまいと血圧異常が重なるような場合は、単に病院の薬に頼るのみならず、体を根本的に見直し生活習慣を改めることが必要なのかもしれません。
 “規則正しい生活”は死語になりつつある現在ではありますが、体は自然と調和して動く精妙な機械です。生活習慣、薬への依存、精神的ストレスなどを見直していただければと思います。