四十肩や五十肩は腕が上がらなくなったとか、腕を後に回すことができなくなったとかいう症状として認識されている人が多いと思います。しかしそのような症状にならなくても、肩関節が痛くなった、腕が重だるくなった、腕や手にしびれを感じた、寝ているとき腕や肩がうずいた、腕が重く感じられた、というような経験された人は、五十肩と同じ類の肩関節痛を経験した方と考えられます。
 肩関節痛の原因のほとんどは、肩関節や肩甲骨に関係する筋肉がおかしくなったか、肩甲骨、鎖骨、肋骨(胸郭)の位置関係がおかしくなったことです。五十肩(四十肩)や肩関節痛の詳細については後日に改めて取り上げますが、今回は痛みやしびれや可動制限が回復したと思った後も、肩関節がしっかり治っていない限りもたらされる状態について説明します。

 右側にふり向くと右肩が張って痛みをだし、右側の太ももが左側に比べて太く、右膝が時々痛みを発するという方が来店されました。本日は4回目の来店でした。肩こりは昔からあって、それは体質的に仕方がないのかな、と思われていたということですが、2年ほど前から右太ももが太くなっている感じがし、ジーパンを履くのが右側だけきつくて大変だということです。また最近になって歩いているとき、台所に立っているときなどに右膝に痛みを感じるようになったということです。
 本人の当初の希望は右太ももの太さと右膝の痛みを改善して欲しいということでした。右太ももはかなりむくんでいて筋肉も張っていました。そこでまずむくみを取ることから始めました。鼡径部で血液の流れが悪いことがむくみの主な原因と考えられますので、それを改善する施術を行いました。そして膝の痛みは大腿直筋という太もも前面の筋肉がこわばっていてスネの骨(脛骨)がずれていたためでしたので、それを改善しました。
 初回の施術から一月ほどして2度目の来店をされました。「太ももの状態は良くはなったが、それでもまだ気になる。膝はしばらく良かったがまた痛くなってしまった」ということです。ということは、前回の施術では不十分だったし、根本的な原因を改善していなかったということです。そこで、いろいろお話しを伺いながら全身を改めてチェックしていきました。すると両肩とも肩の付き方(肩甲骨と腕の位置)がおかしく、どうもそれが怪しいと思いました。肩こりや首の痛みに直接関係するところです。それが太ももや膝に影響を与えている可能性があると考えました。
 「いつ頃から肩こりを感じているのですか?」(私)。
 「ずっと昔からで‥‥」。
 「中学生の頃は肩が凝っていましたか?」「中学・高校生の時は何か運動をしていましたか?」(私)
 「いつから肩こりだったかはよく覚えていないけど‥‥。高校の時は陸上部でした。」
 [肩の付き方がおかしいですが‥‥、陸上部では、あまり肩や腕には関係ないのかな?」(私)
 「よく懸垂をやらされました。陸上競技でも腕を鍛える必要があるので。」
 “懸垂”=“ぶらさがること”ですからすぐに肩関節が伸びてしまったのかもしれないと考えました。
 「腕がおかしくなったとか、肩関節が痛くなったとか、ありませんでしたか?」(私)
 「そういえば去年は2回ほど左腕が上がらなくなって‥‥。でもすぐに良くなったので気にしませんでした。」
 これで、この方の肩関節がおかしいことと、首~肩にかけて痛みが生じる理由が大方わかりました。
 肩は両側とも内に入っていて(肩甲骨が被っている感じ)腕が内旋(内側にひねれている)しています。、腋の下はガチガチに硬く(特に左側)、腕を大きく上げてもらっても途中までしか上がりません。(本人の自覚では目一杯上がっていると感じていたようです)また、この方は右利きなのですが、何かの作業をするときは左手ばかりを使っているということでした。そしてそれは昔からだということです。
 “右利きなのに左ばかり使う”ということは、右手が使いづらい、右手に力が入らないということです。これは右太ももと右膝に関係の深いことです。

 途中の施術については省略しますが、本日は太ももの改善が主目的の来店でした。
 「そういえば思い出したんですが、2年前に交通事故で車の左側をぶつけられたことがありました。」
 「その時は何でもなかったのですが‥‥。ハンドルをとっさに右にきったのだと思います。」
 と冒頭に言われました。
 施術を何度か重ねているうちに、すっかり忘れていた大事なことを思い出すことはよくあることですが、とても重要な情報です。これまでの“懸垂によって肩の筋肉が伸びてしまった”こと以外に、打撲あるいは力一杯ハンドルを切るという筋肉にとっては負担の大きい動作をした経験があり、それ以降、右側の太ももが太くなり膝もおかしくなったという関連性が見えてきました。
 今日は施術時間の多くを左肩の施術に費やしました。腋の下がガチガチに硬くなって肩の付き方がおかしいのは懸垂と事故の影響だと思ったからです。懸垂で伸びてしまった筋肉以外に、ハンドルを思い切り右に回したことによって伸びてしまった筋肉があるはずで、それを改善しなければ問題は解決しないと考えました。腋の下は幾つかの筋肉が複雑に入り組んでいます。その中で伸びてしまった部分を探して施術することはなかなか根気のいる作業でしたが、それでも次第に腋の下の硬さが取れていき、腕の上がりも良くなり肩の付き方も改善していきました。首も楽に大きく動くようになり、右太もももほとんど左側と同じようになりました。完璧とまではいかないまでも、本人が十分納得できるところまでいきました。
 「これで施術は終わりますが、また気になるようになったらまた来てください」と言って施術を終えました。

 この方は、ご自分では肩関節がおかしいとは全然思っていませんでした。日常生活で不自由を感じることがほとんどなかったからです。一時的に左腕が上がらなくなったことはありましたが、すぐに症状が隠れてしまいまいしたので気にもしていなかったわけです。しかし自分が肩こりだと思っていた首肩の張りは、昔の懸垂の影響でもたらされたものであるし、右手に力が入らないために左手ばかりを使っていたのもその影響でした。そして2年前の事故の後、右の太ももが太くなり、右膝に違和感を感じ、左腕が上がらなくなる経験をしました。これらはきれいに時系列的につながっていますし、深く関連し合っています。私は今日の施術を終えたときに「やっと根本原因にたどり着けた」と思いました。あとは伸びてしまった筋肉の部分が順調に回復してくれれば「もう大丈夫だ」と思いました。

 今はそうでなくても、かつて肩関節痛や腕がおかしくなった経験をお持ちの方は、その時以来、体の何処かがおかしくなった、肩こりがひどくなった、という感じがしている人がけっこういると思います。
 私たちの体の筋肉は、どこかがおかしくなって使えなくなると、別の筋肉がその働きを補うようにカバーする仕組みになっています。例えば「五十肩になって半年くらい腕が上がらなくなったけど、放って置いたら自然に腕が上がるようになった」とか「一年くらい五十肩改善体操やリハビリをしていたら痛みはなくなった」という場合は、これにあてはまると思います。これらは五十肩が治ったのではなく、痛みを感じなくなるように筋肉の使い方が変わったという方が近いと思います。もっと平たく表現しますと、肩周辺の筋肉をこわばらせることで肩関節の安定を維持するようになりますので、関節の不安定さによる痛みは改善されますが、肩の動きが十分に行えない状態になります。「大丈夫だった時の様には腕が後に廻らないけど、生活に支障はないし、加齢もあって、仕方がないかも」と思ってしまう感じでしょうか。
 肩だけのことであれば、“支障がなければ良い”という考え方で問題はないと思います。ところが、それだけではすまないのが私たちの体の仕組みです。この方のように脇の下の筋肉が強くこわばると、まず呼吸が悪くなります。それによって睡眠が悪くなったり、歯ぎしりの癖を持つようになるかもしれません。あるいは重心が外側に移動しますので、いつの間にかO脚気味になったりします。もちろん肩こりを強く感じるようにもなりますし、首の動きも悪くなるでしょう。
 ですから過去に肩関節がおかしくなり、その後体が変化したと感じる人は、肩関節をしっかり治すことをおすすめします。

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