ホームページの“歩行について”のページを見て「どうして二人の姿はこんなにも違うのか?」という質問がありました。「足元の強さが違うからでしょう」と答えましたが、それからいくつか問答しましたので少しご紹介します。

Aさん:「私は立ったり歩いたりするとき、どうしても右足の裏がしっかり地面につかなくて、ピラティスの先生に歩き方とか指導されて、そのように歩こうとするのだけどうまくできない。親指と小指と踵の中心の3点で地面を捉えようと歩くと、だんだんと腰も痛くなってきて、首までおかしくなって。そのうち右半身全部がおかしくなってしまった。」

 その方の立位を見ると左脚は足全体で立っているが、右側は重心が小指側にあって、右の膝から下(脛骨)が外側にずれていました。そこで

私:「この状態ではいくら努力しても無駄です。というか、努力すると反対に体はどんどん崩れていきます。右側の重心が小指側にあるのに、その状態で親指を使って歩こうとすると、筋肉を変な風に使わなければならない。足裏全体でつけないのに、足裏全体をつけようとすると体の動かし方が不自然になる。だから、今の体の状態ではそんなことしない方がいいです。」

Aさん:「歩き方や立ち方を指導されてから、いつもそんなことを意識しているうちに体はどんどんおかしくなるし、できない自分(の体)はそんなに変なのかと落ち込んでしまう。」

私:「そんなの気にしなくていいですよ。体を整えれば普通に歩いてもちゃんと歩けるようになるし、しっかり足裏全体で立つこともできるし、全然大丈夫ですよ」

Aさん:「体を整えても、また戻ってしまうのでしょ? そうしたらまた悩むことになるし、私の体は生まれつきおかしいのかな?」

私:「歪んでいるのは関節であって、骨自体が歪んでいるわけではないので、体がおかしいなんて思わないでください。普段の使い癖によって筋肉のバランスが崩れて関節を歪ませているだけなので、その使い癖さえ改善すれば”戻ってしまう”というふうにはならないので。多くの人は腕や手の使い方の問題で、あるいは目の使い方で体を歪ませているので、これから原因を特定し、今後どんなことに注意したり、どんな運動をすればよいか最後に教えますから。」

 ということで施術を始めました。このブログでも取り上げたと思いますが、今のパソコン社会は腕を前に出して作業することばかりですので、腕と肩を前方に出す働きをする前鋸筋がこわばっている人がたくさんいます。するとどうしても足の小指側に重心がいくようになります。この方も仕事でたくさんパソコンを使っているようで、特に右側の前鋸筋がこわばっていました。
 そして小指側に重心があるのに、無理して親指を使おうとしたため、歩くとき親指を捻るようになり、右脚全体の筋肉のバランスが崩れたのだと思います。それによって首の右側や右肩から腕にかけ違和感が生じ、右手では小指と薬指に力が入らなくなってしまっていました。

 右側の膝から下の問題(O脚)でしたが、主に施術をしたところは右手と右側の前鋸筋、そして右目(こめかみ)でした。施術を終えると立っていただき、重心が両足とも親指と2趾の間くらいにあるのを確認してもらい、それぞれ片足立ちをしていただきました。そして何も意識せず歩いてもらいました。両足ともしっかり地面を捉えて膝がまっすぐ前に出て歩けるようになっているのを確認してもらうと、日々の注意事項と前鋸筋のストレッチ方法についてアドバイスしました。

 こうして文章を読んでいただいても、ほとんどの方は理解が難しかったかもしれません。
 世の中には様々なトレーニング法があって、そこに参加されている方々はインストラクターやトレーナーの指導に従って一生懸命やっていれば自分の体はだんだん良くなっていく可能性があると考えていると思います。ところが、体が歪んでいると真剣に取り組むほど体に負担をかけてしまうことがあります。ちょっとした修正を施すだけで歪みがとれることがほとんどですから、体を整えた上でトレーニングに取り組んでいただきたいというのが私が伝えたいことです。残念ながらトレーナーの方々のほとんどは、ご自分の専門分野のことしか知らないと思います。
「でも、体はそのようにできていない」「できない状態なのに無理させてはいけない。それは鍛えることではなく、しごきである」というのが私が言いたいことです。