頭痛や片頭痛に悩まされ、頭痛薬を飲まずにはいられないという人もかなりいるようです。いつもより激しい痛みに襲われたりしますと、「脳に異常があるのかも」と考えて脳外科を受診し、CTやMRI検査を受ける人もいます。
 非常に大切な頭の問題ですから、そういう行動をとられるのは正しいことだと思います。何も異常がなければそれだけで安心感を得られるわけですから。
 ところで、検査の結果“異常なし”と診断されても相変わらず頭痛が治まらない場合、「どうすればいいのだろう?」という次の問題が発生します。肩こりが強すぎて頭痛になったのか? あるいは別に原因があるのだろうか? もしかしたら体質なのかもしれない、などと疑いが湧いてくるかもしれません。

 さて、頭痛の多くは“緊張型”に分類される、筋膜のこわばりによるものです。つまり、簡単に表現すると“頭の皮が頭蓋骨を締めつけている状態”です。ですから、その締めつけを弛めますと速やかに頭痛は解消されます。そのためには筋膜のこわばりを解消する必要があるのですが、肩こりとは違って、いくら揉みほぐしたりマッサージをしたところでそうやすやすとこわばりが取れるものではありません。その場は少し良くなったように感じるかもしれませんが、次の日起きたらまた頭痛に襲われてしまうことも多いと思います。
 筋膜のこわばりというのは、“どこかが頭の皮を引っ張っている”というものですから、その引っ張りの原因を改善しなければなりません。この原因をそのままにして筋肉や筋膜をいくらマッサージしたところでこわばりは解消されないのです。
 頭痛の場合、その痛む場所によって原因が異なりますが、第一回目は後頭部の痛みについて取り上げます。

 首の付け根から後頭部にかけての頭痛に対しては、二つのケースを考える必要があります。
 ①後頭骨が上にずれてしまっているため、後頭部から首の後側の筋肉や筋膜が張った状態で緊張している場合と
 ②脊柱起立筋など背中の筋肉がこわばっているため、その連続性で首の後面の筋肉がこわばり後頭骨を下の方に引っ張るように緊張して痛みとなる場合です。
 
ヒラメ筋内側と仙骨・後頭骨

①後頭骨が上にずれている場合
 全身骨格の仕組みとして、通常、後頭骨は仙骨と対をなし連動性をもって上下に動いています。呼吸の際、正常であれば息を吸うとき後頭骨は下がり仙骨は上がります。息を吐くときはこの反対になります。つまり仙骨が上に動くと後頭骨が下がり、仙骨が下に動くと後頭骨が上がる、と捉えていただいて良いと思います。この原理で、後頭骨が上にずれていることを考えますと、仙骨、つまりお尻(骨盤)が下がっている状態であると想像することができます。その原因としてまず考えられるのはふくらはぎや足の筋肉の疲弊です。“足の筋肉が弱ってくるとお尻が下がり後頭骨が上がってしまう”と言ってもいいでしょう。
 また、頭蓋骨の骨の連動性として頭部の前面(顔面部)が下がると後頭部が上がってしまうというのもあります。顔面部はお腹側の影響を受けますが、お腹の冷えなどで腹筋が硬くこわばり、顔面を下に引っ張っていることが原因である場合もあります。

②背中の筋肉がこわばって後頭部を引っ張っている場合
 骨盤の背面から始まり、背中を真っ直ぐ上がって首の後面を通り後頭部につながっている筋肉があります。大雑把に脊柱起立筋群と呼ばれますが、この筋肉がこわばって首の背面から後頭部にかけてこわばりをもたらせている場合もあります。後頭部痛と同時に腰痛もあるようでしたら、このケースが疑われます。
 ふくらはぎや太ももの裏側に張りを感じるようならまず間違いないかもしれません。この場合は、骨盤を整え下半身や腰部のこわばりを改善することで脊柱起立筋のこわばりを解消する手段を取る必要があります。

 以上の二つ以外にも、頚部の骨(頚椎)が歪んでいるために、後頭部にこわばりができてしまい頭痛になっているという場合もあります。
 いずれにしましても後頭部痛の場合、腹部、背部、骨盤部の状態が影響を与えていますので、それを改善することが頭痛解消の方法になります。