顎関節症の症状にもいくつかパターンがありますが、その中で口を開いたり閉じたりするときに顎が左右に揺れてしまう場合について説明します。
 片方の歯ばかりで噛む片噛み癖で、噛む筋肉が強くこわばってしまうとこのような状況になります。あるいは、体の使い方に偏りがあったり、手から肩関節にかけてのケガや過去の脱臼の影響によって顎が歪んでしまい、口がストレートに開閉できなくなることもあります。そして、こちらの方が多いかもしれません。
 一時的に片噛みになることは誰にもあると思います。例えば硬い煎餅やお肉、スルメなどは強い力を使って咀嚼しないと飲み込むことができませんが、きっと多くの人はどちらか片方の奥歯をたくさん使っているのではないでしょうか。そうなりますと、噛んでいる方の咬筋はこわばりますので伸びが悪くなり、顎を大きく開くときにバランスが悪くなり、顎が揺れてしまうことになるかもしれません。しかしながら、これは一時的な状況ですから、その後両方の奥歯で食物を噛むようにしていれば、何日かでこのような状態は解消すると思います。
 ただし、片方の歯で噛みしめてしまったり、歯ぎしりをしてしまう癖を持っていますと、慢性的に顎のバランスが悪い状態になってしまいますので、口を途中まで(食事をとるくらい)開くのは大丈夫でも、大きく開けると違和感を感じたり顎が揺れてしまうような状況かもしれません。これは何日かすれば解消するという状態ではありません。噛みしめて硬くこわばってしまった咬筋をゆるめる必要がありますし、再発しないためには噛みしめてしまう原因を解決する必要があります。顎の不具合を訴えて来られる方の多くはこのような状態ですが、施術をすれば顎の状態は速やかに改善します。
 ところが噛む筋肉だけを施術しても改善しない場合があります。体の歪みが顎関節に影響を与えている場合です。自分の体の歪みを把握することはなかなか難しいことですが、①臍が体の真ん中にあるかどうか、②両肩の位置が同じ状態かどうか、などが顎関節に関わるところなので、鏡に自分の姿を映してみて確認することは可能です。

 例えば、右利きの人が過去に右肘を脱臼したとします。それが何十年も前の幼い頃のものだったとしても、しっかり治していない限り必ず肘に影響が残っています。するとその人は右手の力が十分に発揮できない状態になっています。それでも右利きなので、たくさん右手を使い続けなければなりません。言い換えれば、筋肉の働きが悪い状態なのに、それでも筋肉をたくさん働かせなくてはなりません。すると肘に力が入らないのでそれを補うように、手首や指先の筋肉が酷使される状態になってしまいます。このため手や手先の筋肉に強いこわばりができてしまい、その影響で右腕は左腕に比べていつも硬く張った状態になります。腕のこわばりは肩甲骨を本来の位置より外側にずれさせます。すると肩甲骨から首や頭蓋骨につながっている筋肉もこわばり、頭蓋骨が歪んだり、あるいは首の筋膜が張って下顎骨をずらしたりしてしまいます。こういう経路で顎関節が歪み、口を大きく開閉させると顎が揺れる状況をつくってしまいます。
 さらに下顎骨の右側がいつも右下方に引っ張られているので、口を閉じるとき左側に比べて咬筋に余計力を入れなければなりません。すると必然的に右側顎関節は噛みしめの状態になってしまいます。

 肘を脱臼した例をあげましたが肩の脱臼も同様で、腱鞘炎やバネ指などもしっかり治っていないと、同じような状況になります。仮に利き腕ではない方のケガであれば、それほど筋肉を酷使することもないので顎関節がゆがむほどにはならないかもしれません。しかし、引っ越しとかで重い荷物をたくさん運んだりして両腕を酷使すると、やはり弱い方の側の顎関節がおかしくなるかもしれません。

・顎関節の異常は3つのパターンに分けて考える
①一時的な片噛みによる顎関節の歪み
 これは一時的なものなので、通常の日常生活を続けていれば自己治癒力でやがて解消されると考えられます。
②歯ぎしりや噛みしめの癖による顎関節の不具合
 慢性的なものなので、こわばった咬筋は頑固です。積極的に施術を行わないとなかなか改善しないと思われます。さらに歯ぎしりや噛みしめを起こしてしまう原因まで解消しないと、本当の意味での改善にはつながらないと考えられます。また、歯ぎしりや噛みしめの癖が原因で体が歪んでしまいます。
③体の歪みからくる顎関節の不具合‥これは同時に噛みしめの状況を招く
 体の歪みが原因で筋肉や筋膜が頭蓋骨を歪ませ、変な力がいつも顎関節に加わっているため顎が揺れるように動いてしまいます。こういう人は、口を大きく開かなくてもどちらかの顎関節がカクカクしたり、シャリシャリ音を立ててしまう場合が多いです。また顎関節に不自然な力がいつも働いているため、噛みしめてしまう癖になりやすいです。
 ですから施術の順序としては、まず体の歪みを修整し、その後噛みしめによる顎周辺の筋肉を調整して顎関節がストレートに開閉できるようにします。

 来店されるほとんどの人は、上記の②か③です。平均するとどちらも60分くらいの時間はかかってしまいます。しかし、ほとんどの場合は一度の施術で何とかなります。
 ただ、顎を大きく開くときやその後閉じるときに鳴るクリック音を完全になくすことはなかなか難しい場合が多いです。それは顎関節の中にある軟骨(関節円板)の問題で、軟骨が変形してしまった場合は整体的アプローチでは不可能かもしれないからです。

追記:母親が緊急入院してしまったため時間がとれずブログを更新することができませんでした。今現在も入院中なので、しばらくの間はこれまでのように頻繁に更新することはできないかもしれません。今回は絵無しでわかりづらかったかもしれませんがご了承ください。