10日ほど前に「目の下のくま」を改善したいと顔の整体を受けに女性が来ました。くすみは比較的簡単に改善しますが、目の下のくまは内臓からの影響もありますので、そう簡単には改善しない場合が多いです。
 この方は、噛みしめの癖もあって首や肩もガチガチに凝っていました。腰も痛く仰向けで寝ることができません。さらに、お腹がパンパンに張っていて呼吸も良くありません。施術はまず本人の希望通り、顔の整体から始めました。
 噛みしめを取って、顔の骨格を整え、特に目の下のゆるんでいる部分はしっかりするようにしました。施術をしながらいろいろお話しを伺っていくと、もう長い間お腹の調子が良くないとのことです。3~4年前からは消化器科の病院を頻繁に訪れるようになり、それでも胃腸の調子が良くならないので漢方薬やいろいろなサプリメントを試しているとのことです。そしていつも体全体が冷えていて血行が悪いと言っていました。
 目の下のくまは、きっとこのお腹の調子や血行不良と関係しているはずです。お腹の状態は腹筋がとても硬くなっていて、本当はそれほど太っているわけでもないのに、お腹全体が腫れたようになっているので本人も太ってしまったと思っていました。食事を摂ってもすぐに胃が張ってしまい一人前を満足に食べることができないということです。
 私としては“目の下のくま”のことよりも先にお腹の問題を改善するべきだと考え、そのように施術しながら話しました。初回は多くの時間、顔の施術に時間を費やし、お腹への施術は少ししかできませんでしたが、「まずお腹を良い状態にしましょう。そうすれば目の下のくまの問題はだんだん改善されていくはずです。次回はそのつもりで来てください。」と言いました。
 それから3日して「胃と腸が痛くなり、吐き気もしたので病院に行ってきたが、それでも施術はできますか」と連絡が入りました。私は「こちらに来た方が、その痛みや吐き気はすぐによくなると思いますよ」と返事を返して来店していただきました。来店時は胃と下腹部(小腸)のところを手で押さえた状態で、体が真っ直ぐに伸ばせませんでした。胃腸に痛みが出たのは気候が急に寒くなったことが関係あったのかもしれません。とりあえずベッドに仰向けで寝ていただきお腹への施術を始めました。みぞおちのところの腹筋がコチコチに硬くなっていました。この硬さによって胃が圧迫をうけ痛みにつながっているのだと思いました。さらに下腹部全体がパンパンに張っていて呼吸も満足にできない状態です。ともかく痛みと吐き気を取るのが先決です。腹筋への施術を10分くらい続けていると、痛みも取れ体が少し温かくなってきたということです。その後、ホットパックでお腹を温めながら足裏と手のひらの胃と小腸の反射区を揉みほぐしました。それから後はずっとお腹への施術のみを行いました。施術時間は60分でしたが、胃に痛みは少しは感じるが、その他はだいぶ楽になったということで帰られました。
 そして一昨日の朝電話が入り「胃腸の調子はよくなって食事も普通にちかく摂れるようになったが、体がすごく冷たく感じてしまい、喉の調子が悪く咳が出てしまう。」と来店されました。今回の施術もお腹が中心です。相変わらずお腹は張った状態で呼吸の状態も良くありません。施術を始めて15分くらいすると「体が温まってきた」と言い、それから「今まで血行不良が原因で体が冷たく胃腸が悪いのだと思っていましたが、お腹が原因なのですか?」と質問されました。
 私は「だいたいそうです。お腹というより腹筋がこわばってしまい、それによって腕や脚の筋肉もこわばり、肩関節や股関節が詰まってしまい血液循環が悪くなっているのでしょう。こうして腹筋が少し伸びると関節での血行も改善するので全身の血液循環が良くなり体が温まるのだと思います。そして腹筋が伸びやかになると、腹筋の下にある胃や腸の動きもよくなり、そうなることでさらに体が温まるのだと思います。腰の筋肉がガチガチに硬くなってしまうのは腹筋の働きが悪いからで、腹筋の状態が良くなれば自ずと腰の筋肉もゆるんで痛みはなくなります。」と答えました。実際、腹筋の働きが悪いと、体を支えるために腰の筋肉が本来以上に頑張るためとてもこわばります。仰向けで寝られないというのは腹筋に原因がある場合が多いです。

 ところで、筋肉は冷えにとても弱い性質を持っています。今の時期、朝の寒さの中では手先に力が入らず思うように動かせなくなりますが、それは筋肉が冷えに弱いからです。胃や腸といった内臓も筋肉でできています。ですから、お腹が冷えますと当然内臓の働きも悪くなります。さらに腹筋の働きも低下しますが、すると多くの場合、みぞおちの辺りがこわばります。そのこわばりが胃を圧迫し肝臓の働きにも影響を与えると考えられます。胃は痛みや気持ち悪さ、膨満感などで私たちの感覚に訴えますが、肝臓は沈黙の臓器ですので何も訴えてきません。しかしその位置が胃の右側にあることを考えると、みぞおちの硬さは肝臓にも影響を与えていると考えるのが自然です。
 
腹直筋施術

 腹筋の調整方法を言葉にするのは難しいですが、だいたい臍を中心とした部分の少し深めのところに手を当てます。お腹が冷えているときの腹筋は、表面は柔らかいのですが、少し手を深く入れた行きますと、硬い板状のものに突き当たります。それが硬くなって動きの悪くなった腹筋です。施術をしばらく継続していますと腹筋の働きが少しずつ回復してきます。すると、なんとなくお腹が伸びたよう感じになります。そこで止めずにさらに施術を続けていますと徐々にみぞおちのこわばりがゆるんできます。そうなることで胃が動ける状態になり、やがて胃の不調は改善していきます。

 冷え症は手や足の冷えが主な部位ですが、体がガクガクするような寒気や、ふるえるような寒さを感じるのは低体温による冷えです。体が芯から冷えています。この場合、体が普通の状態の人であれば、運動をしたり、暖をとったり、湯船に浸かったりすれば症状はやがて消えていきます。ところが慢性的にお腹が冷えている人は、外から温めたり、温かい食べ物を摂ってもその場限りで、すぐに冷たくなってしまいます。一般的に冷えは体質であったり、血行不良が原因であると考えられているかもしれません。しかし私が施術を通して経験したところでは、腹筋の状態と呼吸の状態が悪いことが原因である場合が多いと思います。どう表現すればよいかわかりませんが、呼吸は大きな波であり、うねりです。呼吸の状態が良い場合は、呼吸のリズムに合わせて体全体がゆったりとしたひとつの波で調和します。ところが呼吸の悪い場合は、お腹だけペコペコ上下に動くだけだったり、あるいは胸だけがハッハッと動くだけだったりで、波にはなりません。そんな場合でも腹筋の状態と胸郭の状態を改善すると、それまでペコペコだったものが、いきなり息が大きく入るようになって呼吸の波が生まれるようになります。するとどんどん血液が回りだすのか顔色も良くなり体が温まってきます。そしてこわばっていた腕や脚の筋肉もゆるんできて、私から見れば「ああ、ちゃんとした体になったな」と感じられるようになります。

 体の冷えや血行不良に対しては、体を温める食物やサプリメントや漢方薬が有効であると思われているようです。それはそれとして大事かもしれませんが、腹筋の働きを良くすることと呼吸で胸郭がちゃんと可動するようにすることの方がよっぽど早く効果が現れると私は考えています。
 冷え対策にテレビや雑誌などで紹介されている方法を試しても、たいして効果が感じられない人は、是非腹筋の働きが良くなるよう調整してみてください。