仕事がら、筋肉や骨格に関する専門知識以外のことは、ある程度浅くてもいいから広く知る必要があります。ところが目・鼻・耳といった感覚器官に関する書籍はとても科学的といいますか、専門的で、なかなかすんなりと頭に入ってきません。
 そんな中、このたびブルーバックス(講談社)から発刊された「驚異の小器官 耳の科学」を見つけました。まだ発刊されて間もないのですが、私にとって読みやすい本でした。
 感覚器官は微妙な働きをするところですから、ちょっとした認識の違いが結果を大きく左右すると言いますか、見立てを謝るとまったく何も改善しない領域です。専門知識のほとんどない私が、これまでの施術経験から見いだしてきた見解が果たして正しいのかどうか、医師や科学者はどのように考えてアプローチしているのか、そんなことが知りたかったのです。


 この本はなかなか解りやすかったです。そして私たちが普通に疑問に思っていることなどに正面から答えを出してくれています。
 耳の病気は小さなお子さんを抱えている人にとっては何よりも”中耳炎”が気になるでしょうし、働き盛りの方々にとっては突発性難聴やめまいなども気になるところです。高齢者にとっては加齢性の難聴、補聴器の選び方が身近な問題としてあると思いますが、それについてもストレートに回答を出してくれています。また耳垢や耳掃除についても詳しく書かれていて、「耳かきで皮膚を傷つけないよう気をつけなければいけない」と言ってきた私の見解が正しいことが解って良かったとも思っています。ただイヤホンの使いすぎに否定的な私は、そのことについても触れてあればいいのにな、と思っていましたが、それはありませんでした。

 ところで本日は、はるばる茨城県より右耳の難聴(音が響く)、右側腰痛、右膝の腫れと痛み、という右半身に三つの症状を抱えた方が来られました。予約は60分コースでしたし、茨城ではまた来ていただくというわけにもいかなし、ともかく時間内にこの3つを何とかしないといけいない、という施術を行いました。
 腰痛と膝の不具合に関しては、頻繁にやっている施術ですからそれほど緊張するようなことはありません。ところが難聴に関しては原因として何が潜んでいるかわかりませんので、本当に心を集中して取り組まなければなりません。それも短時間で結果をださないと申し訳ありませんから。
 そこでこの本を読んで知った知識として、左右同じ音を聞かせても右耳だけ響いて嫌な思いをするのは、”耳管開放症”という病名で、本来閉じているべき耳管が開いてしまっているため、音がそこで共鳴し嫌な響きとなってしまう、ということが頭に浮かんできました。つまり、耳管の働きが悪いということです。それを念頭に施術を行いましたが、結局のところはいつもと同じで、強い噛みしめ癖によって咬筋がガチガチにこわばり耳のある側頭骨が大きくずれているのを修正することでした。15分くらい念入りにこわばりを取っていき、最後に音を鳴らして響かなくなったのを確認して施術を終えました。そして「噛みしめ癖が原因ですから、それに注意してください。 仕事に集中しているときとか、きっと噛みしめているはずですから。」とアドバイスをしました。
 結局、60分で要望されていたことをこなすことができて、私もほっとしました。

 本を読んで得た情報が役に立ちました。私の行ったことは耳鼻科の先生とはまったく違うアプローチでしたが、結果をすぐに出すことができて自分なりに改めて自信につながりました。
 難聴でもさまざまな状況があるということを本から学びました。すべての状況に対して私のやり方で結果が出せるかどうかわかりませんが、今後の施術に役立つ情報を得ることができました。