多くの“めまい”は、内耳(三半規管)がある側頭骨(耳のある骨)のズレや鎖骨下静脈(鎖骨と第1肋骨の間)の流れを改善することによって速やかに改善していきます。施術としては1回か2回ですむのがほとんどです。ところが今回の方のめまいはなかなか強敵でした。
 その方は70歳近くの女性です。10月11日に来店され、「斜め右上を向くとグワングワン目が回ってしまう」というのが症状でした。過去のめまいの状況について話を伺うと「40代の時と50代の時に一回ずつめまいの症状があって病院で治療を受けたがなかなか回復せず、40代の時は1年くらい、50代の時は1年半くらい症状が治まらなかった。」「病院に行っても治療らしきことはせず薬を出されるだけなので、今回は病院には行っていない。」ということでした。
 ベッドに横になったもらい、めまいのテストをしました。めまいのテストは、首を横と縦に何回か振ってもらい、それぞれ筋肉の働きが落ちるかどうか、つまり身体から力が抜けてしまうかどうかを確認する単純なものですが、これがけっこう的確に当たります。めまいの兆候を持っている人は、頭を動かした後、軽ければ1秒くらい、状態が重ければ5秒とか、しばらくの間力が入らない状態になってしまします。横に回したとき力が抜ける場合は内耳に問題があり、上下に振ったとき力が抜ける場合は血流に問題があるのではないかと私は考えていますが、それが正しいかどうかはわかりません。目安としているだけです。そしてこの方は横も縦も両方力が抜けてしまう状態でした。
 その後、頭蓋骨を整える施術と鎖骨下静脈の流れを整える施術を約1時間ほど行いました。そしてテストしたところ施術前よりはだいぶ良くなりましたが、それでも少しだけ力が抜ける状態でしたので、もう一度来ていただくことにしました。なお、当初の訴えである右上を向いたときにめまいがするというのはおさまりました。ただ、帰りがけ玄関で靴を履いて立ち上がったときにクラッとしたようなので、今回のは普通のめまいとは少し違うのかな? と思いました。

 結局、その後何回か来ていただいたのですが、「午前中は大丈夫だけど夕方になると症状が現れる」「今日は大丈夫かな、と思っていたけど布団を上げ下ろししたときにめまいがした」「一昨日は治ったかと思ったけど、昨日は朝からめまいがひどかった」「めまいというかクラッとすることはあったけど時間は5秒くらいで短くなった」など症状が一進一退を繰り返す状態が2週間ほど続きました。
 そして私もいろいろ考え、最初の簡単なテストのやり方だけでなく、書類を見てもらい、その文字がしっかり見えて頭に入るかどうか、それをやや下を向いた状態、やや上を向いた状態、右を向いた状態、左を向いた状態で確認してもらったりしました。立った状態、座った状態でどう変化するかなどもテストしました。
 そうしますと、座った状態で右目だけ角度によって文字がにじむことがわかりました。座った状態で見え方が変わるということは、鼡径部(股関節)に問題があることが予測できまして、もも上げをしてもらうと案の定右側の上げ方がちょっと不自然でした。その後、過去のいろいろな病歴や不具合歴などを尋ねていきますと、かなり前に美容師の仕事をしていてドライヤーをかけると左肘が痛くなり腱鞘炎になったことがあるということでした。
 左腕は全体に筋肉が張った状態でしたが、確かに肘はゆるんでいました。そしてそのゆるんだ左肘を修正してしっかりさせると右目の状態が良くなりました。さらに鼡径部で血流が悪くなっているので、そこも調整しました。そして3日後に再び来ていただくことにしました。
 
 再び来店されたとき3日間の状態をお尋ねしましたが「一度だけ、夕食の後しばらくテレビを観ていて立ち上がるときに少しクラッとしたが、あとは大丈夫だった」ということでした。この方はめまい以外にも左膝に力が入らなくて階段の上り下りで膝頭が痛むという症状を持っていたようで、鼡径部と左肘とこの左膝の状態を整えるように施術して、今度は5日後に来ていただくことにしました。
 5日後、「もう、めまいの方はすっかり大丈夫です。あとは膝だけです。」と仰いました。結局めまいを改善するのに3週間以上かかってしまいましたが、私にもよい経験になりました。これまでめまいに対しては、耳を整え、鎖骨下静脈を整えれば良いと思っていたのですが、目の見え方も考慮に入れなければならないし、鼡径部も関係するのだということがわかりました。

 二日酔いで布団に入ると天井がグルグル回ってしまうものも含めて、めまいは内耳にある三半規管の機能がおかしくなっている場合と、椅子から立ち上がったりするとき脳への血流が間に合わず一時的な脳貧血をおこしてクラッとしたりしてしまう場合とがあります。
 きっとこの方は左肘がおかしくなってからずっと右目への血流が悪く一時的な軽い脳貧血状態だったのだと思います。それだけでは自覚症状として不調をかんじる程ではなかったのですが、それに他の要因が重なったとき、はっきりとした症状として、めまいが現れたのかもしれません。それが40代の時と50代の時に一回ずつ、そして今回だったのではないでしょうか。
 今回、左肘を改善することによって、また鼡径部を整えることによって、不調のベースとなっていた血流の問題は改善されたと思います。ですから、もうこのように手強いめまに悩まされることはないかもしれません。そして、そうあって欲しいと願っています。

 めまいに限らず、同じような不調や不具合を時々繰り返してしまう人は、根本的な問題としてこの方と同じように血液循環不良が隠れているかもしれません。そんなことを今回は実感しました。