これからやってくる寒い季節、“冷え”に苦労する人も多くなると思います。手足の冷えはとても辛い思いをもたらすかもしれませんが、極端な場合を除いて、自律神経が正常に働いている証でもあります。
 身体にとってお腹の冷えは大敵です。お腹、つまり内臓が冷えると酵素の働きが鈍るため消化・吸収・栄養・排泄といった生理機能が快適にできなくなる可能性があります。ですから、身体は自律神経の働きによって手や足の表面にある毛細血管に血液を送る量を制限するようになります。血液の温度を下げないためです。それによってお腹を冷えから守ろうとするのです。
 運動や作業をしているときは温まるが、それらを止めると間もなく手足が冷たくなる、というのが寒い季節では理想的な状態かもしれません。反対に冬でも手足がポカポカしているような人は、体温を外に無駄に出しているということですから、お腹の冷えを警戒する必要があります。

小腸区への刺激

 さて、胃腸の働きが悪い人で、お腹が冷えていることが原因の一つであると見受けられる人が時々来ます。こういう人は足裏を触ると、土踏まずの深い部分がゴリゴリしてとても硬くなっています。表面を触っただけではわかりません。手の親指などでグッと押し込むと、板のように硬くなっているものが奥に感じらます。そのような人はお腹が冷えている可能性が高いです。
 この部分は足つぼ(足の反射区)では“小腸区”にあたります。小腸はその日に食べたものを夜寝ている間に吸収して栄養にする働きを行っているところです。つまり、寝ている間は小腸に血液が集まるのです。ちなみに東洋医学(中医学)では心臓と小腸は表裏の関係にあると考えられています。昼間は心臓が血液循環の中心であり、夜中は小腸が中心であるという見方が遙か昔からなされていたということです。

 私は胃腸の働きが悪くて足裏の深い部分が硬くなっている人には、本人の了解を得て、この小腸区をグイグイ刺激してほぐします。時間としては片方1分くらいでしょうか。押し始めの15秒くらいはそれほど痛がりませんが、それから非常に痛がるようになります。それでも力を弱めることなくほぐすように刺激し続けます。するとやがて痛みが弱くなり施術を終えます。
 両足の施術を終えると、お腹の深い部分にあったこわばりもゆるみ、呼吸も良くなります。その場ですぐにお腹の温度が上がるわけではないと思いますが、お腹の働きが良くなったように本人も感じてくれます。

 そして「痛いけど、自分でも毎日やってください。」と申し上げますが、次回来店されたときに確認すると、「ちょっとやったけど‥‥」とほとんどの人が継続してやってくれません。
 お腹の冷えはあらゆる内臓の病気につながると思います。私からすると、ストレッチとかヨガとか体操とか、そういうことも日常のケアとして大切かもしれないけれど、それにほんのちょっと足裏への刺激も加えて欲しいと、そう願っています。

 ”朝起きた時が一番調子悪い”というのは、“寝ているときの血液循環が悪い”とほとんど同じ意味です。
 そういう人は試しに、この足裏奥への刺激を何日か続けてみてください。きっと寝起きの状態が変わってくると思います。