今回は、ものを噛むと左の顎がコリコリ音を出すので、家族と一緒に食事を摂ることができなくなったという訴えです。
さっそく顎や顔に触り状態を確認しましたが、左側の顎がガチガチに硬くなって動きが悪くなっているというわけではありませんでした。反対に硬くこわばっているのは右側の顎でした。ところが首から下の方を見ていきますと、左側の筋膜が下の方に引っ張られていました。この筋膜は当然、左顎や顔の左側にもつながっていますので、左顎が常時下の方に引っ張られている状態であることがわかりました。この引っ張る力によって食べ物を噛むとき、左顎が変な動き方になるため音がしてしまうのではないかと考えました。
そして左側の筋膜が張っている原因を探っていきますと、胸郭(肋骨)が捻れているからでした。
胸郭の下部が左側(反時計回り)に、上部の方は反対に右側に捻れていましたが、このような捻れをもたらしている原因は右腕のにありました。そこで、「過去に右手にケガをしたことがありますか?」と聞きますと、「子供の頃(40年ほど前)に人差し指か中指の先にヒビが入ったことがある。どっちだったかは憶えていない。」との応えでした。
そこで右手の動きを確認するため、いろいろ質問しましたが「チョキが右手は上手くできない」という応えが返ってきました。さっそく人差し指、中指と確認しましたが、中指の第1関節のところを触ってあげるとチョキが上手くできるようになります。チョキをつくった状態で触っていた私の手を離すと、チョキが横に拡がるのではなく前後に拡がる形になってしまいます。
直感的に“これが根本的な原因だ”と感じました。そこで座っていただき、煎餅を食べてもらいました。その人の右手で左手のケガをした中指の先を触ってもらいながら煎餅を噛んでもらうと、左の顎も軽快にしっかりと噛むことができました。顎の音もなく、不安定さもありません。ところが、中指を触っている手を離してしまうと、とたんに左側で噛むことができなくなります。左側で噛もうとしてもよく噛めないため、口の中の煎餅を右の奥歯の方へ持っていってしまいます。
結局、右手の中指の先の骨膜(だと思います)を施術しました。手を離してもしっかり左側で噛める状態になったのを確認して施術を終えました。
今回の件を専門的に申し上げますと、左側で噛みづらくなり噛むと音がしてしまう直接的原因は、胸郭の捻れによって左顎を下に引っ張る力が掛かっていたからです。そして胸郭を捻れさす原因は右側の前鋸筋のこわばりです。それによって胸郭の上部は右側に下部は左側にと捻れをもたらしていました。さらに右の前鋸筋がこわばってしまう原因は、かつての骨折による中指先の骨膜の状態が戻りきっていないからだと考えられます。ですから、その骨膜の状態がよくなるように中指の先を施術しました。
コメント
コメント一覧 (2)
このケースでは胸郭の下半分が半時計回りに捻れているとのことですが、これはよく見受けられる胸郭の左下が盛り上がっているケースとは逆の病態ということでしょうか?
それともよく見受けられる上体が左に回旋している病態なのでしょうか?
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
この記事は1年半ほど前のことなので詳細な記憶はないのですが、改めて回答させていただきます。
右利きの人の多くは胸郭の上部が右側に捻れていることが見受けられます。それは右の前鋸筋のこわばりによるものが多いのですが、それ以外にも右眼や右のそしゃく筋のこわばりも原因となります。そしてその反動として胸郭の下部が左側、つまり頭から見ると反時計回りの方向に捻れています。これがまず一つです。
以上とは別に胸郭の左側が盛り上がっている、つまり肋骨左側の下部が前に突き出ているような状態も多く見受けられます。この原因の多くは左側の腸骨が後に傾いていることで、それに連動するように左の肩甲骨が後に傾き、同様に左側の胸郭も後に傾きます。左の腸骨が後に傾いているのは骨盤の歪みによるものですが、仙骨の上部(仙骨底)が背面から見て時計回りに傾いている場合が多いのですが、それは右利き、右体重の人の一つの特徴でもあります。
その他には、噛みしめその他の理由で左側の小胸筋がこわばっているため、左胸郭を上に引きつけているというケースもあります。
ですから、以上の二つが合わさりますと胸郭下部が反時計回りに捻れながら左胸郭が後に傾くという状態になります。
私はこの二つを分けて考え、それぞれに施術を行うようにしています。
以上でよろしいでしょうか。
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