今日は、90歳の男性で、脊柱管狭窄症と診断され両方の下肢が足指の先まで痺れているという人が来ました。
 下足からスリッパに履き替えるのも一苦労で、杖を使ってやっと施術ベッドまで3~4メートルの距離をたどり着くことができたという状態です。
 脊柱管狭窄症とか腰椎ヘルニアとか坐骨神経痛はシビレが特徴ですが、お尻がカチカチにこわばっていたので、明らかに坐骨神経痛です。
 なんとかベッドにうつ伏せになっていただき、足~骨盤にかけて一通り施術を行いました。坐骨神経痛の最大の特徴はお尻にある梨状筋がこわばっていることです。どんなやり方にせよ、この梨状筋のこわばりさえ解消できれば坐骨神経のシビレや痛みは軽快します。ところが30分ほど施術を行いましたが、梨状筋のこわばりは取り切れませんでした。カチカチだったものが柔らかくはなりましたがこわばりの状態は変わりません。
 その後座っていただき、「いつもどちらの手で杖をもっているんですか?」と尋ねました。
 右手で持っているとのことでしたので、右手を見ました。すると案の定、手がカチカチにこわばっていました。そして10分間ほど右手のひらをかなり強い力で揉みほぐしました。けっこう痛がっていましたが、これほど硬くなっているのであれば仕方がありません。
 そして立っていただき、歩いていただきました。すっかり改善したというわけではありませんが、両足もスイスイ上がるようになり、杖を使いながらですが普通に歩けるようになりました。
 そして「楽になった。手は痛かったけど‥‥」と仰って帰られました。

 杖を使っている人にはよくあることですが、足の動きが悪くなるとどうしても杖を持つ手に力を入れて、手の力で踏ん張るようになってしまいます。すると“手のひらの土手(手根の部分”)がカチカチにこわばってしまいます。そしてそのこわばりが腕の筋肉を通じて背中に及び、骨盤を歪ませてしまいます。それによって下半身の状態がさらに悪化してしまいます。
 杖でなくとも、例えばギックリ腰になり腰や下半身に力が入らないため立ち上がるのもままならなくなりますと、腕の力を使って布団から、あるいは椅子から立ち上がろうとするため、同じように手の筋肉が強くこわばってしまいます。すると膝が痛くなってしまったり、腰痛が長引いてしまったりします。
 私はギックリ腰や膝痛の施術では必ず手の状態を整えます。それが症状を早く回復させる秘訣だと思っているからです。