体の中心部と外側部のライン

 体に歪みをもたらす原因として着目するポイントはいくつかあります。その中で“手のこわばり”は骨盤の歪みにつながる大きな要因です。
 整体的に体を観たとき、体の芯となる内側部(中心部)と体の細かい運動に関わる外側部という分け方もあります。その考え方で手と足を捉えますと、手では小指側、足では母趾(親指)側が内側部になります。足の方は母趾が内側にありますので、すぐに連想できると思います。
 母趾から内股にかけてのラインには内転筋があります。つまり母趾から内転筋にかけてのラインがしっかりしていると、体の重心が中心部にあるため、体を効率よく動かすことができますし、少々きつい仕事をしたところで体が崩れてどこかがおかしくなるという可能性は低いでしょう。
 この母趾から内転筋にかけてのラインを延長していくと、腹部ではお臍のラインとなる腹直筋、そして腕や手の方では、腋の下に近いところを通り、手の小指側につながる筋肉ラインになります。
 では、今度は反対に手の方から足に向かって外側部のラインをみてみます。手では親指から始まり肘の外側を通って肩の外側にかけて進みます。腹部では腹直筋の外側にあって、体を捻る働きをする外腹斜筋を経由し、太ももの外側、スネの外側というラインを通って足の小指(小趾)につながります。
 このライン上の体幹(胸から股関節まで)には前鋸筋、外腹斜筋という体の捻れに影響を強く与える筋肉がありますので、手の親指の筋肉が変調(こわばったり、ゆるんだり)しますと体が歪むことになります。

 手の小指側ラインの筋肉の働きが弱まると体を支える力が弱まって骨格がグラグラし、体に力が入らなくなります。反対にこのライン上の筋肉がこわばると体の伸びが悪くなり、体からしなやかさが失われます。また、手の親指側ラインの筋肉の働きが弱まったり、筋肉がこわばったりしますと体が捻れることになり、血液やリンパの流れが悪くなったり、様々な運動に悪い影響を与えることになります。

 実際のところ、不調を感じているほとんどの人は、小指側も親指側もともに筋肉が変調をおこしています。たとえば包丁を使う、何かを握る、はさみを使う、ペンで文字をたくさん書く、これらの動作では小指側の筋肉を収縮させて(小指を曲げて)動作の安定性を保ちながら、親指や人差し指でこまかい作業をするようになりますので、作業内容がハードであれば小指側も親指側も筋肉が変調をおこすようになります。
 そこで、体を快適に保つためには、一日の終わりに(例えばお風呂の中で)手の小指側のつけ根(小指球)と親指側のつけ根(母指球)を中心に掌のマッサージを行うことをおすすめします。
 体はある程度までは疲労が溜まっても、ライン上のどこかで調整する働きを持っています。ところが、疲労が溜まりすぎたり、適度な休息を与えることなく無理して頑張り続けますと、調整力が効かなくなり、不具合を招くようになります。そうなると、整体的施術が必要になりますので、日常生活でのケアを丁寧に行っていくことをおすすめします。

母指球のこわばり
小指球のこわばり