ゆめとわのblog

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 ここで“顔が下がる”というのは頭蓋骨の中で、顔面(前面)の骨格が本来の位置より下がってしまうことを言っています。頬がたるんで下がる、顎のラインがたるんで下がる、というのとは本質的に意味が違いますが、顔の骨が下がると確実にそれらもたるんでしまいますので「顔のたるみの原因の一つとして骨格が下がっていることがある」と言うことができます。
 
 顔の骨(前頭骨、頬骨、上顎骨、下顎骨など)が下がる理由として考えられることは以下の通りです。
①頭蓋骨や顔の皮膚・筋膜・筋肉を損傷した場合
②からだの歪みの影響が頭蓋骨を歪めている場合
③噛みしめ、片噛み、歯ぎしり、食いしばりなどの癖によりそしゃく筋が変調状態にある場合
④歯茎が傷んだり弛んだりしている場合
⑤筋肉・筋膜・皮膚の疲労や衰え‥‥加齢など

 実際の施術では以上の5項目からの影響を考えて最終的に頭蓋骨を整え、表情筋の働きを整えるようにしています。ですから、おそらく皆さんがイメージしていると思われる「たるみを改善するに顔のマッサージをしてハリを回復させる」ということには重きを置いていません。

頭蓋骨の前後の関係‥‥前が下がると後ろが上がり、後ろが上がると前が下がる
 頭蓋骨において“前面”と言えば顔のことであり、具体的には前頭骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、下顎骨のことです。そして“後面”は後頭骨のことであると言ってもよいと思います。

頭蓋骨の後頭部と顔面部の関係

 頭蓋骨の前面と後面の関係はシーソーのようになっていて、片方が下がると他方が上がるという現実があります。後面の後頭骨は、後頭部~後頸部~背中~骨盤後面という筋肉、つまり脊柱起立筋によって仙骨に、他の背筋によって骨盤後面につながっています。ですから脊柱起立筋が伸びた(ゆるんだ)状態になりますとお尻(仙骨)が下がり後頭骨が上がります。猫背のような姿勢の人は背中の筋肉が伸びてしまいますので、このような状態になっています。すると前頭骨や鼻骨が下がり、それに追随するように頬骨、上顎骨、下顎骨が下がってしまいます。
 また頭蓋骨前面の下顎骨は喉や首前面の筋肉につながり、胸~腹部~骨盤前面(恥骨)につながっています。例えばお腹が冷えて腹筋が硬くなる(こわばる)と胸が下がり首前面や喉の筋肉が緊張して下顎骨を下げてしまうということが起こります。そして下顎骨を下げるだけでなく顔の筋膜も下に引っ張られますので、顔前面の骨が全部下がってしまいます。そして、実際、こういう状況は大変多いので顔を整える施術の最初に背中側とお腹側の状態を確認し、それらを整えてから顔への施術に入るという手順が多くなります。
 60分の施術時間のうち、最初の30分をからだを整えることに費やすということはよくあることです。なぜなら顔や頭蓋骨を集中的に整えたとしても、腹筋や背筋の影響で元の状態に戻ってしまうのであれば整体の意味がなくなってしまうからです。

鼻骨が下がると顔が下がる
 顔が下がっている人はほとんどの場合、鼻(鼻骨)が下がっています。顔を上げる施術を行う場合、目安にする部位がいくつかありますが鼻骨は最初の目安です。見た目にも、鼻骨が下がりますと鼻筋の通り方にシャープさがなくなりますし、鼻骨はちょうど両眼の間にありますのが、その周辺の凹凸が減りますので、光と影の関係で“ホリの少ない顔”のように見えてしまいます。反対に鼻骨が上がって本来の位置に戻りますと、額から真っ直ぐに降りる鼻筋がはっきりし、眼窩の凹みもしっかり現れますので、引き締まった顔立ちに見えます。

表情筋のこわばりが顔を下げる

 鼻骨が下がる要素として眼鏡の影響はあります。昨今は眼鏡もだいぶ軽くなっているようですが、それでも重さがあります。それが一日の多くの時間、鼻骨にぶら下がっていれば鼻骨と前頭骨を繋いでいる関節がゆるんでしまい鼻骨は下がってしまいます。
 その他にも鼻骨が下がってしまう理由は幾つかあります。後頭骨が上がっていることもその一つです。また鼻骨は上顎骨と関節していますので、上顎骨が鼻骨を引っ張るという状況で鼻骨が下がってしまうこともあります。鼻と眼の間、そして眼の下(頬骨周辺)には幾つかの表情筋がありますが、これらの筋肉は日々の生活の中で非常にたくさん使われます。そのため収縮して硬くなっていることが多々あります。(強めに指圧すると痛みを感じます)。これらの筋肉は上顎骨と鼻骨をつないでいますので、筋肉の収縮が鼻骨を引き下げてしまうという状態を招きます。実際、鼻骨を上がる施術では、この辺りの表情筋をゆるめます。すると鼻骨だけでなく頬骨も上がりますので眼窩の状態も良くなり眼が大きく開くようになります。
 そして定かな理由はわかりませんが、胸(胸骨)と鼻骨は深い関係にあります。胸骨上には筋肉はあまりなく、ほとんど筋膜の下に骨があるような感じになっていますが、この筋膜がゆるんでいますと鼻骨が下がってしまうという関係があります。胸は環境に対するセンサーのような役割をしていますし、心理的な状態も胸に現れます。心配事や不安があると胸は閉じてしまいますが(実際に肋骨が閉じます)、その他にも天気や季節的要因の影響を受けます。花粉症の時期鼻の通りが悪くなりますが、その理由の一つは鼻骨が下がっていることです。胸骨を観察しますと力弱く感じられ筋膜もゆるんでいます。ですから花粉症の症状を改善するために胸骨の状態を整えて筋膜のゆるみを解消する施術を行いますが、それは鼻骨を上げて鼻の通りを良くするためもあります。

からだの前面(腹側)の筋肉が顔を引っ張って下げてしまう場合
 東洋医学ではからだの陰(腹側)と陽(背側)の境目として「人中」というツボがあると考えられています。“人中”は上唇と鼻孔の中間にありますが、からだの急所とされています。また解剖学的には上歯と下歯の接点、つまり上顎骨と下顎骨が背側と腹側を分ける骨であると考えられています。それは顎関節のことでもあり、上歯(上顎骨)から上部が背側であり、下顎骨は腹側です。

腹筋のこわばりによる顔の下がり

 腹側の出発点は骨盤の前面(正確には骨盤底)であり、恥骨部から始まる腹直筋を例にとると解りやすいかもしれません。腹直筋は恥骨部から始まり肋骨(胸郭)の前面につながっています。仮にお腹の冷えなどによって腹直筋がこわばって(収縮した状態)いるとします。すると肋骨は恥骨部の方に引っ張られますが、その流れは首の前面を経由して舌骨を引っ張り下顎骨を下げてしまいます。腹直筋がこわばってしまう理由は“お腹の冷え”以外にもありますが、猫背などの悪い姿勢を長く続けていること、丸まっている姿勢が“楽”という状態もあてはまります。ともに腹直筋をこわばらせたり、こわばっていることを象徴しているからです。
 下顎骨とそれ以外の頭蓋骨は陰と陽の関係にありますが、同じ顔を形成していますので筋膜や皮膚はつながっています。ですから腹側のこわばりによって下顎骨が下がりますと筋膜や皮膚が顔全体を下に引っ張りますので、結果的に「腹筋がこわばると胸が下がり顔も下がる」と言うことができるようになります。他者とくらべてバストの位置が「なんとなく下にあるな」と思われている人、あるいは「本来の自分より胸が下がっているように感じる」と思われる時は、ほぼ間違いなく顔が下がっていると考えられます。

 また腹筋だけでなく、手で言えば、手のひらは腹側であり、手の甲は背側です。手のひらを大きく伸びやかに拡げようとしても中途半端で終わってしまい、拡げきれない人は腹側の筋肉がこわばっているということです。左手は伸びやかに拡げることができるのに右手のひらはこわばっているという場合、顔の右側だけが下がっているという状態かもしれません。実際にはもっと複雑にいろいろな状況が絡み合って顔の歪みをつくっていますのでこんなに単純ではありませんが、このような原理によって顔の歪みがもたらされている場合もあると理解していただければと思います。そして、こういうからだの歪みが顔の歪みをつくっているというケースがとても多いと感じています。

お尻が下がると顔も下がる
 “頭蓋骨の前後の関係”で説明しましたとおり、後頭部(後頭骨)が上がると顔は下がります。そして後頭骨は仙骨と対になって連動して動いています。通常の場合、呼吸で息を吸う時、仙骨が上がると共に後頭骨は下がります。つまり息を吸うとき顔があがります。このようにならない人は呼吸の仕方がおかしいか、顔が歪んでいると思われます。
 ですから、骨盤つまりお尻が下がっている人は常に後頭骨が上がっているため顔が下がっている状態であると言えます。骨盤が下がる理由はたくさんありますが、普段の姿勢や歩き方は大きな影響力を持っています。背中の丸まった悪い姿勢で背中の筋肉が伸びて(ゆるんで)しまった人は後頭骨も上がり仙骨も下がります。ムチウチを経験した人でしっかり治癒していない人の多くは首後面の筋肉がゆるんでいますので後頭骨が上がり骨盤が下がっています。ウエストが緩いわけでもないのにジーンズやスラックスがすぐに下がってしまうような人はお尻が下がっている人と言えます。

噛みしめや歯ぎしりの癖
 再三登場する噛みしめ、歯ぎしり、食いしばりの問題ですが、これらも顔の下がりに影響します。これらの癖を持った人は“ついつい顔に力が入ってしまう人”に分類されますが、そしゃく筋だけでなく頬を中心とした表情筋もこわばっています。上唇から頬骨にかけて頬骨筋や笑筋などがありますが、これらがこわばりますと頬骨を引き下げてしまいます。頬骨が下がりますと額の骨である前頭骨も下がりますので眼窩が下がり目が開きにくくなります。そして額が下がるということは顔全体が下がるということです。また鼻の周辺にも幾つかの表情筋がありますが、これらがこわばると鼻骨を下げますので、やはり顔全体が下がってしまうということになります。私たちは日常生活において喋ったり、笑ったりしてこれらの表情筋をたくさん使っていますが、その影響で頬骨の下にある筋肉がまるで骨のように硬くなっている人がたくさんいます。目の下の部分を強く指圧したときに痛みを感じるのは筋肉が硬くこわばっているからですが、この辺りの筋肉を指圧してゆるめるだけでも目が開けやすくなり額が上がる場合もあります。

側頭筋と咬筋

 また、そしゃく筋である咬筋は顎関節から頬骨につながっている頬骨弓に付着していますので、噛みしめや歯ぎしりなどによって咬筋がこわばってしまいますと頬骨弓、つまり頬骨を下げてしまいます。ですから顔が下がるのを予防するためには、噛みしめ、食いしばり、歯ぎしりなどの癖や表情筋のこわばりが蓄積しないよう気をつけなければなりません。また日々のフェイシャルマッサージでは、顔の表面(皮膚や表情筋)だけでなく深い部分や咬筋の硬さをゆるめるケアをすることが望ましいと思います。そのやり方は静かにじっくりと指圧することが一番です。みなさんがやりがちな、“グイグイ”揉んだり指圧したりすることは組織を傷つける可能性がありますのでやらないでください。

歯茎の問題
 歯茎の影響については、現在いろいろと事例を集めて考察しているところですが、現象面のみで申し上げれば「歯茎がゆるむと舌がこわばり顔が下がる」となります。
 歯茎がゆるむ理由としては、歯槽膿漏や炎症など病的な要因もありますが、私のところに来られる方々の場合は、歯列矯正、インプラントなどによる影響が多いです。また、噛みしめや食いしばりによって歯茎に負担が掛かりすぎて弱くなっていることもあります。
 歯茎は上顎骨と上歯、下顎骨と下歯をつないでいて歯の健康やそしゃくの安定に深く関わっています。ですから歯茎の健康が損なわれますと、歯やそしゃくに関わる組織=舌、そしゃく筋、口の中の壁(口蓋や咽頭、頬)などに影響が及ぶと考えることができます。
 「首肩から力が抜けない」という項目で取り上げましたが、舌は神秘的で大きな影響力を持っています。首肩から力が抜けない人の多くは舌が硬くこわばっている傾向があります。顎を引く動作で舌は収縮しますが、舌がこわばっている人はいつも顎を引いている状態と同じであると考えてもよいと思います(程度はそれぞれ違いますが)。このような人は何かあると瞬時に顔に緊張が生まれ、呼吸が止まって息苦しくなり、首や肩に力が入ってしまいます。24時間、365日、ずっとこのような状態で生き続けることはそれだけで「大変」なことだと感じてしまいます。
 そして歯茎の状態が悪い時は、舌がこわばってしまいます。歯列矯正をした人、インプラントを行っている人、歯槽膿漏の人、あるいは歯茎がゆるんでいるかもしれないと思っている人は、両手の指先を使って歯茎に届くように押しあててみてください。歯茎に指先が当たっている時は舌がゆるみ、手を離すと舌がこわばる(舌先が少し引っ込む)のであれば、歯茎の影響が舌に及んでいるという証です。
 舌はこわばると下顎を引き寄せると同時に下げる働きをします。つまり舌がこわばっている人は顎が下がっているということです。そしてそれが顔全体を下げてしまうことは上記で説明したとおりです。

 先日「三白眼(黒目が小さく白目の面積が大きい)」を改善したいという要望がありました。「そこまで整体で可能かどうか?」と一瞬考えましたが、要望にはなんとか応えたいという思いもありまして過去のことをいろいろ尋ねました。「幼児の頃は三白眼ではなく、中学性になった頃から黒目が小さくなったように思う。」ということでしたので、子供の頃の癖について尋ねました。すると「顎を引いてにらむように見る癖があった。」ということでした。顎を引く動作は舌を収縮させる動作です。そして、にらむことは虹彩(黒目)を緊張させる動作です。ですからこの方は子供の頃、舌をこわばらせ、さらに黒目をこわばらせていたということになります。このことが影響しているかもしれないと思い、舌のこわばりをゆるめるように施術をしていきますと少しずつですが黒目が大きくなっていきました。“舌は神秘的”と前に少し記しましたが、舌が全身に及ぼす影響力はかなりのものだと思います。

打撲や損傷の影響
 転んで顔を打撲したことがある、頭を強打した経験がある、顔を殴られたことがあるなどで顔面や頭部の骨や筋肉や皮膚・筋膜が損傷し、それが治りきっていないことが原因で顔が下がっていることもあります。また手術を行った経験のある人は縫合の部分が弱くなっていますが、その影響で顔が下がっていることもあります。医師は手術が成功し、縫合部分がしっかりつながっていれば、それで治療が終了、「問題なし」と判断するのだと思いますが、整体的な観点では問題が残ったままになります。
 縫合部分は“すっかり元の状態に戻った”ということとは違います。からだには電気が流れていて、その流れの有様によって筋肉や筋膜や皮膚の働き具合は変わります。縫合によって皮膚も筋膜もしっかりくっつきますが電気の流れは縫合部で途絶えてしまうように感じます。ですから多くの場合、縫合部周辺の筋肉・筋膜・皮膚の働きは弱くなっています。それによって骨格は歪みますが、それだけでなく感覚器官の働きが悪くなったり、体調が“今ひとつパッとしない”という状態になってしまうことはよくあることです。そして、そういう人はたくさんいます。

加齢や衰えによる影響
 加齢によって筋肉の力や働きが衰えていくのは自然の流れであり、自然界に存在するかぎり避けることのできない現象です。しかしながら同じ40代、50代、60代であっても、個人差があり顔の下がり方に違いが生じているのも現実です。
 加齢による影響だけついて言えば、骨と骨をつないでいる関節線維の力が弱まり骨格全体がゆるんでしまうこと、代謝力が弱まってむくみが生じるため組織全体が重くなり、また筋力が弱まるため重力に負けてしまうことなどが考えられます。
 ですから、関節線維をケアすること、むくみが生じないようにケアすること、適切なフェイシャルマッサージを行って表情筋や皮膚の力を補うことなどが対策となります。そして加齢(老化)現象が速く進むか、ゆっくりになるかは、摂取するもの、特に薬やサプリメントの影響力は大きいと思います。科学的な見解では、同じ類の薬でも化学的作用の仕方に違いがあるとのことですが、結局のところ、鎮痛剤は神経の働きを鈍らせるものであり、筋肉弛緩剤は筋肉の働きを弱めるものであると私は思っています。
 痛い時には鎮痛剤は大いに役立つと思います。しかし“1日3回、毎食後に”と記され、常に鎮痛剤の効果が消えないように飲み続けるのはいかがなものかと思います。「痛みからは解放されるかもしれないけど、老化はどんどん進む」と私は思ってしまいます。

 老化は骨細胞、筋細胞、神経細胞、血液細胞などの力や働きが衰えることであると考えることができます。つまり細胞レベルで力や働きが衰えることですが、ということはホルモンと深く関わっていることだと考えることができます。なぜならホルモンは細胞に働き方を指示する命令書のようなものだからです。思考はホルモンの分泌に影響を与えます。生活習慣や食物はホルモンに影響を与えます。湿疹で苦しんでいる時、ステロイドホルモンを投与すると速やかに湿疹が改善したりしますが、この一例だけを見てもホルモンの細胞に及ぼす影響力の強さを知ることができます。高齢になっても若々しく見える人は、おそらく思考も若々しいのだと思います。若くても思考が高齢化してしまえば、年齢以上に老化して見えるかもしれません。

 冒頭に申しましたとおり、今回は顔の骨格について記しました。顔の“たるみ”や”むくみ”については直接的に触れませんでしたが、骨格が下がることはそれらの根本原因になると考えることができます。
 ”たるみ”は皮膚や筋膜や筋肉のハリが失われゆるんでしまうことですし、“むくみ”は静脈やリンパの流れが滞ってしまうことでもたらされます。骨格は筋肉の働きや静脈・リンパの流れの基盤です。一所懸命皮膚や筋肉をマッサージしてハリを回復させたり、リンパの流れに刺激を与えてむくみを改善したとしても、骨格が歪んだ状態であれば、その効果は長続きしないと思います。
 また、時々、本来の顔以上に「エラを細くしたい」「小顔にしたい」という要望をお持ちの方から問い合わせがありますが、生来の骨格を乱すような施術は一切行いません。必ず将来的に不調を招く原因になると考えるからです。顔が上がってハリが戻り、むくみが改善すれば顔はイキイキとして魅力的になると思います。小顔矯正などの施術を受け体調不良に苦しんでいる人を見る度に「それは邪道!」という思いが強くなります。くれぐれも気をつけていただきたいと思います。

 私は数年前、顔面神経麻痺を経験したことがあります。顔全体の筋肉が思うように動かせなくなり、顔の右側はほとんど動かせなくなりました。それは突然発症し、あれよあれよという間に進行しました。朝、洗面の時に「なんだか歯磨きがしづらい」と思っていたら、口をすすぐ時唇が閉じにくいことを感じました。そして、その日は電話での応対やお客さんとの会話で口が動かしづらかったのですが、晩には食事ができないほどになってしまいました。唇の右側、右の頬が動かせなくなってしまったのです。そして、その時「確実に顔面神経麻痺だ!」と思いました。
 翌日に一応耳鼻科を受診し、ステロイドを処方して服用し始めました。あとは自分なりに治してみようと、顔の解剖図を詳細に見たり、顔面神経に関する情報を集めてセルフケアし始めました。それから一週間ぐらいで会話や食事は普通にできるようになり、二週間くらい経過した頃には不自由さを感じなくなりました。ステロイド剤はそれで止めたと記憶していますが、医師の診断で“治癒した”と判断されるまでに一月ぐらいは掛かったでしょうか。

 自分自身がこのような経験をしたものですから、顔面神経麻痺の状態や対処法についてはある程度理解できているつもりです。
 おそらく私の顔右側は一時的にかなり状態の悪い顔面神経麻痺になったのだと思います。素速く対応しましたので、ほぼ一月で回復しましたが、対応が遅くなれば状態はこじれ、慢性化してしまったかもしれません。そして、そのような人が先日来店されました。本人は顔左側の眼瞼と口角が下がってしまっただけだと考えていたようで、顔の整体で改善する可能性があるかもしれないと考えたようです。その方の症状は5年ほど前からだったようです。顔を触った時に私は直感的に顔面神経麻痺の可能性があると思いました。筋肉の動き、皮膚や筋膜の感触、それらを観察してそう思いました。そしてそのことを本人に話し、「5年も経ってしまったので改善までに時間がかかるかもしれない」と伝えました。その後、その方はまだ来店されていませんが、病院に行かれたのかもしれません。

 現在、顔面神経と三叉神経と頚神経に問題がある人が毎日のように来店されています。まだ20代の若い方です。今から7年半ほど前に英語の発音練習を半日ほど一生懸命していたら突然顔の筋肉が使えなくなってしまったということです。それからたくさんの病院を訪れ、いろんな検査を行い治療にあたっていたようですが、症状が改善することなかったようです。それで鍼灸治療へ進み4年ほど経過したようです。鍼灸治療で少し症状が良くなったようですが、最近、私のこのブログを読んで「どんなものか?」と来店されました。
 現在最初の来店から3週間ほど経過していますが、少しずつ状態は良くなっています。この方の場合、単なる顔面神経麻痺だけでなく、そしゃく筋がほとんど動かせませんし、横隔膜もほとんど動きませんでした。ですから極端に言えば、しゃべったり食事をしたりするのは口先だけで行い、呼吸は喉の筋肉だけで行っていたという状態でした。顎先と喉の筋肉を使って口を開き、舌の力を使って口を閉じるという状態です。顔の表情をつくるのは顔面神経の働きですので、ほとんど無表情で口先を動かすことしかできないですし、鼻と喉を動かして浅い呼吸をたくさんしているような、そんな状態でした。今はまだまだ不完全ではありますが、横隔膜を使って腹式呼吸ができるようになりましたし、そしゃく筋も弱いながら使うことができるようになりました。そして顔面神経の働きも回復しつつありますので表情筋を動かせる部分も少しずつ拡がり、ほとんど無表情に近かった顔が自然さを取り戻しつつあります。
 顔の様々な表情をつくるのは顔面神経の働きです。そしゃく筋を動かして食べものを食べたり会話をしたりするのは三叉神経の働きです。そして横隔膜を動かして腹式呼吸を行うのは頚神経の働きです。その他に眼球を動かすのも不十分ですが、これらを総合して考えますと頚椎の問題もあって脳神経の伝達が悪いことも重なっていると判断することができます。私にとって、このような方は初めての経験ですが、おそらく本来の状態に戻るだろうと思っています。この方の症例については参考になる人もいると思いますので別途取り上げたいと考えています。

顔面神経01

 顔面神経は表情筋の働き関係する神経です。ですから顔面神経の働きが悪くなりますと唇が動かせなくなったり、目が最後まで閉じなかったり、瞼が下がってしまったり、頬の筋肉が動かせなくなったり、笑いや怒りなどの感情をあらわす表情をつくることができなくなったり、しづらくなったりします。反対に顔面神経に刺激が入り続けているような時は筋肉が常に収縮してしまうため、顔全体や額にこわばりや圧迫感を感じシワや凹凸ができてしまったりします。

顔面神経麻痺

 医学的にどのような基準で顔面神経麻痺と診断されるのかは知りませんが、本人にまったく自覚がなくても顔面神経の働きが悪い状態の人をよく見かけます。「昔に比べてすっかり頬がこけ、顔面の皮膚や肉が衰えてしまったように感じる‥‥」というのは加齢による変化も考えられますが、顔面神経の働きが悪くなっていることが関係しているかもしれません。表情をつくりにくくなったと感じる‥‥笑おうとすると何故か口角の周りがこわばったり、目の周りがこわばったり、口角を引き上げようとしても上がらない、これらは表情筋の笑筋や口角挙筋の働きが悪いことが要因の一つとして考えられますが、筋肉がゆるんでしまっているか顔面神経の働きが悪くなっていると考えることができます。眠りにつこうと目を閉じると眼瞼がピクピクしたり痙攣したりしてしまうのは、眼輪筋がゆるんでいるか顔面神経の働きが悪いか、他の筋肉の影響で引っ張られ瞼が閉じにくい状態であることなどが考えられます。瞼が閉じにくいからといって瞼を強く閉じる訓練を繰り返していますと、ある日突然、瞼が痙攣しだしてしまうということもありますが、筋肉の問題なのか顔面神経の問題なのか、両方を確認してみる必要があるように思います。
 概して顔面神経の働きに問題がある場合は“無表情”が何処かに潜んでいるように感じられます。
 眼瞼の動きに問題があったとして、頬がどこか無表情であったり口元も締まりが悪かったりするならば、顔面神経の問題を疑ってみる必要があります。過去に眼輪筋のトレーニングをしすぎて目元にシワがたくさんできてしまい、目を閉じると瞼が痙攣してしまう人がいらっしゃいました。その時、私は顔面神経のことはすっかり頭になく、骨格や筋肉や筋膜のことばかり施術していましたが、なかなか思うように回復しませんでした。今に思えば、年齢の割にシワのほとんどない頬、それはもしからしたら無表情の現れだったのかもしれません。
 顔面神経麻痺の症例として目にするのは大方、口角や瞼や頬が下がってしまい口元がおかしくなったような写真ですが、能面のように表情が変化しない状態も顔面神経麻痺の症状です。

顔面神経は耳下腺の中を通っている
 顔面神経は脳神経の一つです。神経についての詳細は私自身理解できているわけではありませんが、脳神経は脳の下部、脊髄との間にある脳幹に神経核(出発点)があって目、鼻、口、耳、頭部の知覚といった顔面にある感覚器官の働きと運動に主に関与しています。

顔面神経02

 脳幹から出発した顔面神経は頭蓋骨の内部を通って耳の穴のすぐ下から表に出てきます。そして顎関節のすぐ下にある耳下腺の中を通過した後、枝分かれをして顔面全体に拡がり表情筋の働きを支配しています。ですから“耳の穴”と“耳下腺”は顔面神経の働きに影響があると考えられます。ヘルペスの症状が耳の穴まで侵入し、顔面神経麻痺(ベル麻痺)になってしまったという話はよく聞きます。
 先日、数年前にヘルペスが左側の耳に侵入し、それ以来顔面神経麻痺の症状が現れてしまった方が来店されました。左目をすっかり閉じることができませんでした。私は頭蓋骨を整え耳の穴の状態が良くなるようにした後、硬くなっていた耳下腺をゆっくりと緩めていきました。するとそれだけで左目が最後まで閉じられるようになり、ギュッと強く閉じることも可能になりました。
 耳下腺は咬筋の顎関節直下部分を覆うように存在していますが、この部分が硬くなっている人がたくさんいます。つまり顔面神経が圧迫を受けている人がたくさんいるということです。そういう人は自覚として気づいていないかもしれませんが、顔面神経の状態が万全ではないということになります。表情をつくるのに疲労してしまったり、口笛が上手く吹けなかったり、目をしっかり閉じようとするとどこか別の場所が緊張したり、頬の動きが悪くもたつくように感じたりすることがあるならば、それは顔面神経の働きが鈍くなっているからかもしれません。
 ご自分の耳穴(あるいは顎関節)のすぐ下、下顎骨の上部を触ってみたとき「張っているなぁ」と感じるようであれば、それは耳下腺が硬くなっているということです。私自身のことで申し上げれば、普通に目を閉じた状態で、この硬くなっている顎関節のすぐ下(耳下腺)を強めの力でグイッと押して弛めるようにしますと、自然とそれまでよりも目がしっかり閉じた状態になります。眼輪筋の働きが良くなったということです。ですから施術において顔面神経麻痺や顔面神経の働きが疑われる場合は、まず耳下腺をゆるめることから始めるようにしています。

顔の変化と顔面神経
 女性の方々がとても気にされていることに“顔のたるみ”があります。残念なことに私たちは自然界に生きていますので、時の流れに逆らうことはできません。ある年代を超えると皮膚や筋肉がたるみ始めるのは避けることができません。しかしながら素肌をなるべくたるまないように保持することは可能です。
 顔にたるみをつくる原因としては、むくみ、筋肉・筋膜・皮膚の働きの低下、または“こわばり”や”ゆるみ"といった変調、そして顔面神経の働き低下が考えられます。
 顔面神経の働きが低下しますと表情が冴えなくなるのと同時に筋肉が痩せ細り突然老化したような肌質になってしまいます。まだ30歳や40歳になったばかりなのに「突然老けてしまった」と感じるようであれば顔面神経の働きも視野に入れて対策を考える必要があるかもしれません。「かつては表情が豊かで自然と笑みがこぼれていた自分が、笑顔をつくるだけでも顔が疲れてしまう」というのであれば、是非顔面神経の働きをチェックしてみてください。自分の想いとは違っていつも仏頂面に見られているようであれば、頬をもっと豊かにしたいと思うのであれば、顔面神経の働きを確認してみる必要があると思います。
 顔面神経の確認については耳鼻科の担当分野だと思いますが、明らかな顔面神経麻痺の症状が現れない限りは、病院では「問題なし」とされてしまうかもしれません。どの症状についてもそれが問題ですが、診断基準に満たないと病名が付かず「気のせい」みたいなことを言われてしまい、その後どう対処すればよいかわからなくなってしまいます。
 また顔面神経の問題は働きが低下していたり、麻痺していることだけではありません。反対に常に顔面神経に刺激が入り続けていて、表情筋や皮膚がこわばり続けているという症状にも関係します。額に力を入れているわけでもないのに額に不自然なシワや凹凸が現れていたり、頬や口の周りが「シワシワ、ジュワジュワ」しているように感じたり、皮膚がボコボコ硬くなっているようになっているのであれば、それは恒常的に顔面神経に刺激が入り続けていて筋肉が作動し放しの状態なのかもしれません。こういう人は常に額や顔面が圧迫を受けているように感じていることと思います。「もっと顔が解放されたい」と感じているかもしれません。

顔面神経の基礎と対策
 顔面神経は脳神経の一つで、核(始まり)は脳幹にあります。ですから顔面神経麻痺になった時には耳鼻科の医師は脳のMRI検査などを行うことを勧めます。
 脳から出発した後は耳に関係する器官の側を通り、耳穴(外耳孔)のすぐ下から体表に現れます。ヘルペスが耳穴まで侵入しますとベル麻痺と呼ばれる顔面神経麻痺になってしまうことがあるのはこのためです。
 体表に現れ耳下腺の中を通過した後、幾つかに枝分かれして顔全体に拡がり顔の表面を覆う表情筋の働きを支配しします。(皮膚感覚は三叉神経)ですから額や頬や口元、顎周辺といった部分部分で働き方が異なることもあります。
 また末梢神経全般に言えることですが、神経について考える時は管とその中を行き交うニューロン(神経細胞)の二つを思い描かなければならず、神経の伝達とは電気信号の伝達であると考える必要があります。更に神経管には神経を養うための血管がまとわりついています。
 ですから神経の働きに問題があるという場合は、神経管自体かそれを養うための血流のどちらかに問題があり、電気信号が乱れていたり、あるいは届かないため、目的の筋肉や皮膚が正常に機能しなくなっていると考える必要があるのだと思います。

 神経の働き(=電気信号の伝達)に問題あり
  ①神経管の損傷や圧迫など
  ②神経を養う血流(動脈)不足

 少し話しはそれますが、例えば坐骨神経痛は殿部の筋肉が強くこわばっているために神経管が圧迫を受けておこす症状です。圧迫により常に神経管に刺激が入っているため神経管内部に電気信号が発生し続けているのかもしれません。ですから坐骨神経に支配されている筋肉は収縮し続けてしまい、こわばって硬く太くなってしまいます。これが痛みやシビレの原因であると考えられます。筋肉がこわばり続けるとどんどん硬く太くなって血管を圧迫するようになってしまいます。その状態が慢性化しますと、やがて神経を養う血流量が減ってしまうため神経の働きも悪くなってしまいます。そうなりますと筋肉への伝達が悪くなりますので、筋肉が思うように動かせなくなってしまいますし、筋肉自体も痩せ細って質が悪くなってしまいます。顔面神経の作用の仕方も同様であると考えることができます。
 ケガや病気によって神経管自体が損傷を受けている場合は外科的処置が必要になってくるかもしれません。あるいはウイルスや雑菌類を無害化するために薬物を使用することも考えられます(ステロイド剤がよく処方されます)。
 神経管が圧迫を受けているのであれば、それを取り除くために骨格を整えたり筋肉や耳下腺のこわばりを取り除く手段が必要になりますが、整体は有効だと思います。
 血流量をアップするための手段として病院では薬剤が処方されたりしますが、それより整体的な手段の方が効果的であると私自身の体験からもそう思います。

 なお、顔面神経は顔の表情筋を働かせるための運動性神経です。顔面が痛くなったり
、皮膚感覚(知覚)がおかしくなるのは神経で言えば三叉神経の異常です。もちろん神経とは関係なくシビレや痛みを感じたり、知覚がおかしくなったりすることはあります。単に筋肉や筋膜や皮膚がこわばったり、張ったりしているだけでも痛み感じることはあります。単に血流が悪くなっているだけでも皮膚感覚がおかしく感じたりします。そして、こういったケースの方が三叉神経の異常よりずっと多いと思います。
 以前に顔面が強く痛むので大学病院で診察してもらったら三叉神経痛と診断され、治療のためには手術も含め大がかりなことになってしまうと告げられた人が来店されました。しかし実際には食いしばりの癖が強かっただけでした。側頭筋が強烈に硬くなっていて、その痛みが周囲にも放散していただけでした。丁寧に側頭筋のこわばりを取っていくと、それだけで問題はすっかり解決してしまいました。どうしてこれを三叉神経痛と診断するのか私にはさっぱりわかりませんでした。

 顔面神経については私もまだまだ手探り状態です。筋肉が正常に働くためには、骨格、血流(動脈と静脈)、神経、温度、電気、拮抗筋などの状態が“概ね良い”という必要条件があります。その他にも「気」と呼ばれたりするエネルギーも確実に筋肉の働きに影響を与えます。
 ですから顔面の筋肉や皮膚が正常に働かなかったり質が悪いと感じた場合は、これらの条件の一つ一つを確かめながら解決策を見いだすようにしていますが、顔面神経については、もっと比重をあげて対応していかなければならないと改めて自分に言い聞かせているところです。
 顔には感覚器官が集中していますし感覚も鋭敏です。ですから僅かな異常でも違和感や不快感を感じやすく、スッキリしないと感じてしまいます。また自分の顔は毎日鏡で見ていますので、少しの変化でも気づきますし、気になります。
 美容面から毎日一生懸命スキンケアを行っている人も多いと思いますが、その効果がなかなか上がらないと感じている人は“顔面神経の働き”という観点も含めてフェイシャルマッサージのやり方を見直してみるのも一つの方法だと思います。

硬い耳下腺を緩める
 もう一度顔面神経の図を見て下さい。
顔面神経02
 顔面神経は耳の穴のすぐ下のところから体表に現れてすぐに耳下腺の中に入ります。耳下腺の深部には咬筋がありますが、この部分が硬くなっている人がたくさんいます。口の中には幾つかの唾液を分泌する“腺”がありますが、耳下腺が硬くなっている人は、この部分からの唾液があまり分泌されていません。舌の底(舌下腺)や顎先(顎下腺)からは唾液が出ているのに耳のところからは出ていない状態ならば、耳下腺がこわばっていることが考えられます。
 両眼を閉じた状態で両方の耳下腺に手指を押し当て、耳下腺が柔らかくなるようにじっくりと持続的に指圧していきます。耳下腺のこわばりがゆるんできますとそこから唾液が分泌されるのを感じると共に、瞼がそれまでよりもしっかり閉じているように感じられると思います。耳下腺はけっこう大きなものですから、図を参考に顔面神経の通り道をイメージしながら指圧の場所を少しずつ変えてみて下さい。とても単純な方法ですが、多くの場合、これで顔面神経の働きは良くなると思います。

 私たちは疲労しますと筋力が弱くなりますが、そんな時でも力を振り絞らなければ状況では奥歯を噛みしめたり食いしばって、つまりそしゃく筋を収縮させて力を増強しようとします。ペットボトルの蓋を開ける時、重たい物を持つ時、噛みしめている人は多くいます。
 ところが、これとは反対に噛みしめると力が弱くなってしまう人がいます。そんな方から質問を受けまして、このことは多くの人の参考になるかと思いブログに書くことにしました。

その方は抜歯による歯列矯正を行いました。更に「矯正の時間を短くするために歯茎にクギを刺した」ということです。私はその意味を正確に把握することはできませんが、おそらく固定されたクギを利用して歯を半ば強制的に動かしたということかもしれません。この方の現在の状況は以下の通りです(原文のまま)。

「歯茎を見ると痩せて下がり薄くなっています。
特に奥歯の物を噛んだり噛み締める歯の歯茎を触るとブヨブヨした感触です。
噛む力が普通より大分弱い事に最近気付きました。
あと重い物を持ち上げたりするとき歯と歯が付いていない、噛み締めていません。
瓶の蓋やペットボトルを開けられないことがあるので力が入らないとは感じています。
食べたり、咀嚼筋に力が入っている状態が続くと側頭筋がすぐ凝ってしまい揉むと痛いです。」

 歯茎が弱いことがわかりますが、歯列矯正に限らず歯槽膿漏などで歯茎が弱くなっている人にも共通している状況かもしれません。
 歯茎に限らず筋肉や筋膜や組織は、弱くなって働きが悪い時に負荷が掛かると耐えられなくなりからだの力が弱くなったり他のところにしわ寄せがいって不調を招きます。
 寝苦しかったり、朝起きた時に首肩や背中が張ってしまうのは「枕が合わない」からだと思っている人はたくさんいて、幾つも枕を買い換えている人がいます。ところがその原因は枕が合わないことではなく、首や後頭部の、枕に接する筋膜がゆるんでいることだと思います。ゆるんで働きが悪くなっているところに自分の頭の重さという負荷が掛かりますと、そこが耐えられないために寝苦しく感じたり、首肩、背中にしわ寄せが及び凝ったり張ったりしてしまうのだと思います。ですからこれを解決するためには枕を換えることではなく、自分の筋膜を整えることが必要です。簡単に言ってしまえば、「元気な人はどんな枕で大丈夫」ということになります。
 さて、この方の場合、歯茎が荷重に耐えられない状態ですから、歯茎に負担が掛かるとからだから力が抜けてしまいます。これが重い物を持ち上げる時に歯を合わせない理由だと考えることができます。そして食事をして歯茎に負荷が掛かったり、そしゃく筋を収縮させて(=噛んだ状況を続けて)いるとからだの別の場所=側頭筋(側頭部)がこわばってしまい頭痛を招く仕組みであると考えることができます。

 ここで、この方にとって大きな矛盾が生じます。この方は歯茎以外にも問題を抱えており、からだに力が入らない状態ですので、(全身筋肉の司令塔としての)そしゃく筋の力を借りなければならない状態です。常にそしゃく筋は緊張状態(収縮状態)ですし、寝ている間も噛みしめていることがわかっています。起きている間は歯と歯を合わせないように注意し続けることはできるかもしれませんが、寝ている間は不可能です。ですから少なくとも寝ている間と食事の時は歯茎に負荷が掛かってしまうことになります。歯茎を治癒するためには負担を掛けないようにする必要があるのに、負担を掛けざるを得ない状況という矛盾に直面してしまいます。

 また、この方は表情筋のこわばりという問題も抱えていますが、それも歯茎の弱さと関係があることは確かです。今週末に来店され施術を行いますが、①歯茎を如何に回復させるか、②そしゃく筋の緊張状態を如何に改善するか、というのがこの問題に対するアプローチになりますが、上記の矛盾を超えて忍耐強く取り組まなければならないことだと思います。

 膝の悪い人は、良くなるまでは膝をあまり使って欲しくないのですが、仕事上そういうわけにはいかない。腱鞘炎の人は手を使って欲しくないのですが、赤ちゃんを育てている間はそういうわけにはいかない。このような矛盾の状況はいろいろありますが、忍耐強く取り組んでいればやがて解決の光が差してくると思います。
 私のこれまでの経験ではそうでした。困り果てた状況では、一進一退の状態から抜け出すことがなかなかできないように感じてしまうかもしれませんが、ちょっとの進歩でも、その進歩の方に目を向けて、疑いの心を遠ざけていけば、そう遠くない将来に一気に改善に向かうと思います。精神論のような話になってしまいましたが、これが現実であり真実だと思います。
 この方に関して言えば、まず歯茎を強くすることに集中することだと思います。そのためには硬いものを噛むことは今は避けることです。そして意識を込めてじっくり噛み、一噛みごとに歯茎の筋肉を鍛えるつもりで使って欲しいと思います。筋肉は使わなければ強くなりませんので、言うなれば「痛まない程度に負荷を掛けて鍛えて欲しい」とアドバイスします。

 現在、顎(そしゃく筋)、喉、首、肩など上半身の上部に力が入ってしまい下腹部や下半身があまり機能していない方が二人定期的に来店されています。お二人に共通している点は以下の通りです。
①子供の頃からずっとこの状態が続いているので、それが普通なのかと思っていた。
②呼吸状態が悪い。
③ムチウチの経験がある。
④歯列矯正をした。
⑤骨盤や股関節に問題を抱えている。

 お二人とも腰に力が入らないため、座った時に骨盤にからだをあずけることができません。ですから普通の人がやっているような背もたれにからだを委ねるような座り方は苦手です。背中をピンと張って座らざるを得ないので、一見姿勢が良い人のように見えますが、実は上半身、特に胸から上の部分に力を入れないと座る姿勢を保つことができないのです。腰を使って背筋を伸ばしているのではなく、首や肩の力を使って背中を張っているため、すぐに疲労してしまい長く座ると腰が痛くなってしまいます。
 「からだの中心は骨盤であり、会陰である」と過去のブログに書きましたが、骨盤を中心に、下腹部・腰部の力を使って姿勢を保ち、動作を行っていればからだを壊すようなことはそうありません。しかしこの方々のように、動作の中心が首肩周辺になってしまいますといろいろと問題が起きてきます。そして共に子供の頃からずとその状態で生きてきましたので、そのこと(首肩中心)が不自然なことだとは思っていませんでした。“常に息苦しい”、“すぐに息が上がってしまう”、“腰が弱い”というような点が他者との違いとして感じてはいるものの、それが“からだがおかしい”こととは結びつかなかったようです。
 (私の目から見て)お二人の性格に共通している点があります。それは不安に襲われやすい、心配性である、恐れている、といったことです。お二人とも神経質ではありませんが、これらの不安、心配、恐れといった感情は胸の圧迫感や頭の圧迫感と関係しているのではないかと思います。
  また、お二人とも呼吸の仕方が良くないのですが、仰向けで寝た状態で「息を吸うことは考えずに(自然にできるので)単に吐き出してください」とやってもらいますと、最初の1~2回はできるのですが、その後それを続けることができなくなります。息をたくさん胸に入れないと吐き出すことができませんし、その吐き出し方も胸中心でかろうじて腹部が少し動いているのが観察できる程度です。
 このテストは呼吸の中心を胸から下腹部の方に移動できるかどうかを確認するものですが、単にゆっくり吐き出すことをするためには腹筋をじっくり使わなければなりませんし、横隔膜がスムーズにゆるんでいかなければなりません。
 腹筋と横隔膜の状態が悪いと、息をゆっくり吐き出しながらリラックスすることができません。普通の人は首や肩や頭に力が入ってしまったり、息を止めたために肺の中に空気が溜まった状態になったりしますと、“溜め息”のようなことをして息を吐き出し、その状態を無意識的に解除するのですが、このような人達の“溜め息”は形だけで終わってしまい目的を達成することはできません。

 ここで筋肉と骨格の関係から首肩に力が入ってしまうことと呼吸の関係を説明してみます。
肩甲骨を引き上げる筋

 首の筋肉で気になるのを専門用語であげれば、僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋、斜角筋、胸鎖乳突筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋などです。僧帽筋と肩甲挙筋は肩甲骨と鎖骨を引き上げますので首の長さの見え方に関係します。実際は首が長さが変わったわけではないのですが、これらの筋肉が緊張状態になりますと首が短かくなったように見えます。時々、中年の太ったおじさんはワイシャツの襟に隠れて首がないように見えたりしますが、それは僧帽筋、肩甲挙筋の張りによるものかもしれません。(トレーニングなどでこれらの筋肉がすごく発達した人も同様に見えますが)

頚部前面の筋

 斜角筋、胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋などの緊張(収縮)は胸郭を引き上げます。胸郭が上がった状態というのは息を吸った状態ですから、これらの筋肉がいつもこわばっている人は「常に息を吸った状態」であり、過呼吸になりやすい傾向にあります。息苦しい人、息が荒い人、頭に圧迫感を感じている人などは、これらの筋肉を整えて胸郭を下げることで状態が改善することがあります。
 そして肩甲骨や鎖骨、胸郭を引き上げるこれらの筋肉はそしゃく筋と関係しますので、噛みしめる癖があったり、そしゃく筋が収縮してしまう状態にありますと、これらの筋肉も収縮状態になるため首肩が張り、胸が上がった状態になってしまいます。腹式呼吸はできなくなり胸でハアハア呼吸する状態になりますし、力の中心(重心)が首肩の方に上がってしまうことになります。その他、“目の疲労”などによって首肩に力が入ってしまうこともありますが、多く見受けられるのはそしゃく筋の状態に関連してもたらされているものです。ですから“そしゃく筋のこわばり”(頬の内側にある噛む筋肉の緊張状態)を如何に解除するかが、首肩から力を抜くための有力な方法になります。
 ただ、ほとんどの人は自分のそしゃく筋がこわばっていることに気がつきません。いつも意識してそしゃく筋を観察している人は「今、噛みしめてきた」「こわばりがゆるんできた」ということに気づきますが、“奥歯が合っていなければ噛みしめた状態ではない”と思っている人がほとんどですので、「首肩から力を抜くためには、まずそしゃく筋をダラーッと脱力してください。」とアドバイスしてもすんなり納得できないようです。

 一生懸命になって首肩から力を抜こうとしてみても、それは一時的なものになってしまいます。その時は力が抜けます。しかし次の瞬間、何かが起こったり、感情が変化したりしますと、また首肩に力が入った状態になってしまいます。なぜならそしゃく筋が収縮したままの状態であるからです。

 骨盤や腰部・下腹部に力が入らない状態であれば、からだを支える中心は首肩の方に移ってしまいます。ギックリ腰の経験のある人はおわかりになると思いますが、椅子から立ち上がる時に腰や下半身の力を使えないので腕の力を使って立ち上がるようになります。単に座るだけでも腰に体重をゆだねることができませんので、肩甲骨周辺や首肩に力をいれ続けて姿勢を維持しなければならなくなります。それは非常に疲れる状態ですのですぐに寝転びたくなってしまうかもしれません。極端な例ではありますが、これに近いような状態が内在しているのが首肩から力が抜けない人の傾向かもしれません。腰部を強打した、尻もちをついた、ぎくり腰を何度か繰り返した、このような人は腰部の働きが悪くなっているため、それを補うように首肩周辺に力を入れている可能性があります。
 ムチウチは後頭部の首のつけ根辺りを損傷することが多いのですが、頭痛や首の痛みが改善されるとそれでムチウチは「治った」と判断しているかもしれません。病院の判断もそのような感じかもしれません。しかし、後頭部や首の損傷で、筋肉や筋膜の状態が悪いまま何十年も経っている人が多くいます。「なんとなく腰周りがスッキリせず、ついつい前屈み気味になってしまう」あるいは「無理して腰を反った状態にしないと座り続けたり歩いたりすることができない」というような方は、ムチウチの損傷がすっかり改善したわけではないと思われます。「ムチウチを経験してから首肩に力が入ってしまい息苦しさを感じるようになったのかもしれない」と、思い当たる節があるのであれば、今一度後頭部から後頚部にかけて治療する必要があるのかもしれません。
 ムチウチは後頭部から首後側の筋肉の働きを弱めてしまいますが、それは当然腰部の筋肉にも影響を及ぼします。腰を支えて動かす力が弱くなりますので、腰痛持ちの人と同じように首肩背中の上部に力を入れて姿勢を保つようになってしまいます。ですから自ずと重心は上部になってしまいます。

 私は“歯”については専門家ではありませんので確かなことは言えません。しかし現実に、歯科矯正の影響でからだの働きが悪くなっている人を見てきました。“歯”そのものよりも“歯茎”が弱々しくなっていて、その影響でそしゃく筋がこわばったり、舌や喉が硬くなって常に首肩に力が入った状態になっていたりします。
 歯茎は上顎骨の一部です。顔面を強打して歯茎が弱くなったために顔が歪んだり、感覚器官がなんとなく不調に感じたりすることはよくあることです。抜歯を伴う歯列矯正は、“上顎骨の健康度”という観点で考えると、やはりマイナス要因です。私たちには生まれながらに決められている歯の本数とそれぞれの役割があるわけですから、そのことの大切さを慎重に考えて歯列矯正の方法を選んでいただきたいと願っています。
 からだの不調がなかなか改善しない方々からの問い合わせの中で、「歯を削られてから‥‥」「歯列矯正をしてから‥‥」という言葉も多く聞きます。上歯と下歯は上顎骨と下顎骨であり、その関係はからだにおける陰(腹側)と陽(背側)の接点ですので、噛み合わせも含めて上歯と下歯のバランスが崩れますと、からだ全体のバランスが崩れる可能性があります。
 定期的に来店されている方で、歯を削られすぎてから体調がガタガタになってしまった人がいます。歯科の先生は歯の削りすぎによる噛み合わせ不良と体調不良との因果関係を認めないようで、理解ある歯科医院を求めて苦労しています。私のところに来て、顔やからだの歪みを修整しますと、その場では状態が安定します。しかし日が経つにつれ、徐々に元の悪い状態に戻ってしまいます。私もいろいろ考えて対応していますが、物理的に歯の高さが足りない状態は整体ではどうにもできませんので、良い歯科医の先生に巡り会うことを願っています。
 “歯”にまつわるいろいろな状況を目の当たりにしていますと、安易な考えで歯列矯正を選んで欲しくはないと思ってしまいます。

重心のホームポジション
「舌のホームポジション」については以前に取り上げましたが、からだの重心にもホームポジションがあります。ホームポジションという意味は、必ずそこになければならないということではなく、動作とともに重心は前後・左右・上下といろいろ動きますが、動作が一段落したときには、重心がその位置に戻るということです。重心のホームポジションが首肩周辺にあるのか、下腹部・腰部辺りにあるのかでは、動作の起点が何処にあるのかという意味で大きな差となります。
 なお、自分のホームポジションが何処にあるのかを知る一番簡単な方法は、“痛みをこらえるとき何処に力を入れているか”でわかります。ご自分の腕などを強めにつねったとき、どこに力を入れて痛みに耐えていますでしょうか。顔を歪めたり首に力が入ってしまう人は、首肩周辺にホームポジションがある人だと思います。下っ腹に力が入って痛みに対抗する人は下腹部にホームポジションがある人です。
 そして重要な点は、首肩タイプの人は息を吸った状態で動作を停止しやすい傾向があり、からだが無防備でスキだらけの状態になりやすいということです。「ビックリすると途端にからだにきてしまう」といった感じでしょうか。
 ホームポジションが下腹部タイプの人は、例えば人混みで前方から来る人とすれ違いながら歩くことも苦と思わず、たとえからだが少々ぶつかったとしても動じることはありません。そんな感じだと思います。武道をやっている人は、如何に相手にスキを見せないかというのが大切なことですが、そのためには吸気を悟られないようにする必要があります。何故なら息を吸う動作の時、私たちは無防備になってしまうからです。

 “からだを動かすこと”は“重心を動かすこと”に等しいとも言えます。
 私たちは無意識に重心を動かしています。椅子から立ち上がろうとすれば、まず頭部や首を前に出して重心を前に動かしてから上体を屈めて立ち上がり、椅子から離れます。しかし、よく観察しますと一番先に動くのは舌先です。舌先が微妙に動くのあわせて頭や首が前に動きます。もし舌が強くこわばっていて前に出すことができない状態であれば重心移動がスムーズにできないため、椅子から立ち上がる動作でさえ余計な負担をからだに強いることになります。試しに、舌を奥に引っ込めたままの状態で椅子から立ち上がろうとしてみてください。動作がスムーズにいかないばかりか、足腰にすごく負担がかかってしまいます。このことから解りますように、重心を動かさずにからだを動かすとすぐにからだは故障してしまうかもしれません。

重心の移動

 からだの動作に合わせて重心は大小様々に動きます。たとえば座った状態から横になろうとすれば、下腹部のところにあった重心はからだの傾斜に合わせて喉元まで動きます。しかし動作が一段落して体勢が落ち着くと重心は再び下腹部のところに戻ります。これがからだの自然な動きです。自分は首肩に重心があるからといって、それを下腹部にもってこないといけないと思い込み、常に下腹部ばかりを意識して重心をそこから動かさないようにして動作をしますと、それは自然の動きに反していますので、やはりからだを壊す原因になってしまいます。からだの動きに合わせて重心は行ったり来たりします。そして戻る場所がホームポジションであり、そこが首肩周辺ではなく下腹部であることが望ましいということです。
 筋肉は使うことによって鍛えられます。ホームポジションが下腹部・腰部にある人は、特に何をするわけでなくても下腹部・腰部の筋肉をたくさん使っていることになりますので、下腹部・腰部の筋肉が強くなります。首肩周辺がホームポジションの人は首や肩の筋肉をたくさん使ってしまうことになりますので、首肩のこり、喉や舌のこわばり、顔のこわばりなどを招く反面、下腹部・腰部はおろそかになりますので、腹式呼吸が苦手で腰痛に悩まされる可能性が高くなります。
 ですから慢性腰痛に悩んでいる人、呼吸が浅くて息苦しい人、首肩のこりやハリに苦しんでいる人、さらに胃腸の調子がおかしい人などは、重心のホームポジションを首肩周辺から下腹部にもってくる訓練をしていただきたいと思います。

 腰が重症の方から「文字を書く時、重心をどうすればよいか?」という質問を受けました。文字を書くのもからだの動作ですから、重心は動かなければなりません。小さな文字を書くのでは解りづらいと思いましたので、大きな文字や大きな「○」を書くことで本人に確認しもらいながら試してみました。
 椅子に座った状態では坐骨が座面に着いています。何もしなければ左右の坐骨にほぼ均等に体重が乗っているはずです。
 大きめの「○」を左側から書き始めるには右手に持ったペンを最初にからだの左方向に持っていきます。そして紙にペン先を置き「○」を書き始めるのですが、この時左の坐骨に体重を乗せるようにしていただきました。つまり重心を左側に移動させたということです。そして「○」の上部の膨らみを書き始める時には重心を左側から中央に戻しながら下腹部を少し前に出すようにし、「○」の右側を書く時には重心を右の坐骨に乗せるようにしていただき、「○」の手前側の膨らみを書く時には重心を坐骨の後側に移すようにしていただきました。文章で説明するのは難しいのですが、要するに、手の動きに合わせて坐骨で文字を書くように重心移動をしていただきました。そして「あ・い・う・え・お」と紙に書く時も同じような感じで重心を動かしながらゆっくりと書いていただきました。
 この微妙な重心移動は普通の人にとっては、何を考えることもなくごく自然にできる動作です。しかし、腰が重症の人にとっては“自然な重心移動”が難しいのです。そしてこういう練習を通して、私が日頃からアドバイスしてきた“重心移動”の意味が実感として理解していただけたようです。
 重心移動は動作のリズムでもあり、リズム感のある動作は重心移動が伴っています。食器を洗うにしても、掃除機をかけるにしても、何をするにも微妙に重心移動をさせながら動作を行っていればからだは楽です。そして腰部は自然と鍛えられますので、腰痛も楽になると思います。
 ところが横着をして、寝転んだまま手だけを伸ばしてテレビのリモコンを取ろうとした瞬間や、思いも掛けぬ出来事にビクッとして息が上がった瞬間に、ピリッと腰や背中を損傷してしまうことがあります。重心移動の伴わない動作はとても危険です。

 重心のホームポジションが首肩周辺にある人は首肩から力が抜けにくい人ですが、そのような人に「肩から力を抜いて下さい」と言ってみたところで、なかなか上手くできません。ですから私は「力を抜く」ことではなく「力を移動させる」ようにアドバイスすることもあります。
 「では最初に首肩に力を入れて首肩を硬直させて下さい。 次にその力を胸に移動して下さい。 では力を下腹部に移動して下さい。 膝に移動して下さい。 最後は足首に移動して下さい。」と、こんな感じです。普通の人は首肩からいきなり腰や足首に重心を移動させることが容易にできるかもしれません。しかし“首肩中心”が根強い人には難しいこのなので、首肩 → 胸 → 下腹部(腰部)→ 膝 → 足首と重心を一つずつ実感しながら移動させて、からだの感覚として覚えていただきたいと思います。足首までしっかり重心を移動させることができますと、首肩からすっかり力が抜けていることが実感できると思います。
 根のしっかり張った植物は背を高くすることができますが、私たちも同様です。足元がしっかりして力強い状態であれば重力に負けることなく地面を踏みしめることができます。すると背筋がスッと伸び、軽やかで背が高くなったように感じます。そして不思議なことに重心がある足首や足は硬くなってしまうのではなく、反対に動きが良くなります。意識と重心とが合致して一体になると、そういう現象が起きます。
 「足首まで重心が降りたら歩き始めて下さい」
 これは私が首肩に力を入れながら歩いている人にアドバイスしていることですが、これだけで本当に歩き方がゴロッと変わってしまいます。ただし首肩中心の人は、重心を移動させることも、そう簡単なことではありません。本人は「足首に移動できた」と思いたいのかもしれませんが、私が見たところ移動できていないことが多々あります。

重心の移動_首から下腹部へ

 これまでたくさんの人を施術してきましたが、“癖”を改善することは互いに根気を必要とする作業です。その癖がからだに大きな影響を及ぼすものでなければ、それは一つの個性として深く考える必要はないとも思います。ところが今回取り上げましたような、首肩に力が入り続けてしまうような癖は必ずからだの不調につながります。体力のあるうちは影響が表に現れないかもしれません。ところが加齢やいろいろなことで体力が弱った状況になりますと、一気に「あっちも、こっちも、何処もそこも、おかしくなった」という事態になってしまうかもしれません。
 重心の位置を改善するという施術は、顔の歪みを修整する、首肩の張りを軽減する、腰痛や膝痛を解消する、頭痛を解消するといった、結果がわかりやすい施術とは趣が異なります。つまり急を要するものとは違いますので、ある程度良くなり、抱えていた症状が気にならなくなる程度になるとほとんどの人が来店されなくなります。呼吸が浅くて少し息苦しくても、その状態に馴れてしまうと「こんなものかも」と思ってしまうのかもしれません。
 もっと楽なからだになって人生を楽しみたいのなら、頭をスッキリとして脳の働きを良くしたいと思うのなら、首肩に力を入れてしまう癖を解消することに取り組んで、成功していただきたいと思います。

 あるところから寄稿の依頼を受けました。
 これからの季節、女性にとって気になるダイエットと日焼けトラブルについて、日常生活でできるケアについて書いて欲しいとのことでした。以下がその原稿ですが、参考になればと思いブログに投稿します。

 ダイエットや日焼けによるトラブルを考える時、“新陳代謝”と“細胞の修復”というキーワードが登場します。新陳代謝は古い細胞が新しい細胞に入れ替わる変わることですが、それによって若々しいからだを保つことができます。単に体重を落とすとか、痩せるということではなく、健康的なダイエットを目指すなら活発な新陳代謝を維持することが必要になります。細胞が古いままでは脂肪を燃焼させる力も弱いですから体脂肪を落とすことが難しくなります。
 また紫外線は皮膚のメラニンを黒色に変化させますが、それは表皮で起こります。表皮は28日周期で入れ替わります(ターンオーバー)ので、理屈の上では日焼けしたとしても28日後には元の皮膚に戻るということになります。しかし実際は表皮のターンオーバーができない部分が皮膚に残るため“日焼け後のシミ”が所々にできてしまい、女性を悩ますことになります。
 紫外線はメラニンを黒色に変化させるだけでなく、細胞そのものを傷つけます。表皮やその下の真皮細胞が傷つきますと、その部分のターンオーバー機能は失われてしまいます。ですから傷ついた細胞を修復されなければなりません。そして、新陳代謝と細胞の修復を順調に機能させるためには、肝臓、核酸、タンパク質、血液循環というキーワードが現れます。
 新陳代謝は古い細胞が新しい細胞に入れ替わることですが、それは細胞分裂という方法によって行われます。細胞は自身の寿命が訪れますと自分と全く同じ情報を持った細胞、つまり自分自身のコピー(分身)を作ります。一時的に自分自身が二つになるわけですが、その後自分自身は死んで新しい細胞をその場に残します。これを生涯繰り返しているわけですが、この時に必要な物質が核酸でありタンパク質です。

 ところで、私たちが食べる食べ物は消化器官を通過したながら分解されて、小腸で吸収されて血液の中に栄養物質として入ります。その後その栄養豊かな血液は肝臓にそのまま送られ、肝臓でからだの細胞が必要とする様々な物質に合成されます。肝臓はからだの中の「化学工場」に喩えられますが、そこでは分解、合成、解毒など、様々な処理が行われています。新陳代謝に必要な核酸やタンパク質は肝臓で合成されますし、細胞の修復に必要なタンパク質も肝臓で作られます。またアルコールや有害物を解毒して血液を無害の状態に保つのもの肝臓の働きです。ですから健康で若々しいからだを維持するためには、肝臓を万全の状態に保つ必要があるということになります。
 たとえばアルコールを飲み過ぎて、肝臓が解毒作業ばかりに力を取られるようになりますと、新陳代謝や細胞の修復に必要な物質を合成する能力が低下してしまうと考えられますので、皮膚は荒れたままになったり、ダイエット食品をたくさん摂ったところで何の効果も現れないという結果を招いてしまいます。新陳代謝も鈍くなりますので若々しさが失われ老化が進んでしまいます。
 そして肝臓の働きを弱める要素はアルコールだけではありません。毎日飲み続けている合成薬や摂り続けているサプリメントが肝臓の働きを弱めているかもしれません。また、東洋医学では肝臓と目は関連性が深いと考えられていますが、眼精疲労は肝臓の疲労に直結しているかもしれません。さらにある種の感情(怒り)は肝臓の働きを弱めてしまうと考えられています。
五行色体表

 スマホ、パソコン、テレビなど、私たちが毎日多くの時間接しているものは目に疲労をもたらすものばかりです。同じ場所をずっと見続けることは目を動かす筋肉や焦点を調整する筋肉を硬直させます。ですから、画面に集中しすぎないように、しょっちゅう目を左右上下に動かしたり、遠くを見たりして目に関係する筋肉が偏らないようにしていただきたいと思います。さらに一日の終わりには、コメカミを強めの力で持続的に指圧したり、目のすぐ下、でっぱっている頬骨の下際の硬くなった筋肉を指圧してゆるめていただきたいと思います。また目を動かす筋肉をストレッチする意味で非常にゆっくりと大きく、瞳で八の字を描くような“目の運動”をしてケアしていただきたいと思います。筋肉が硬くなっていますとストレッチ運動を始めた最初のうちは少し痛みを感じるかもしれませんが、時間とともに筋肉がゆるみだし心地よさがやってくると思います。そこまでやってください。
 
目のストレッチ

 新陳代謝と細胞の修復のために肝臓でつくられたタンパク質やアミノ酸など、即戦力としての物質は心臓に戻り、酸素を含んだ血液(動脈血)となって全身を巡り目的の細胞に届けられるわけですが、血液循環が悪いとからだの隅々まで到達することができなくなってしまいます。動脈血は心臓(ポンプ力)と血管の働き(搏動)で全身を巡るわけですが、末端の毛細血管まではその力は及びません。
 実際に細胞が血液から必要な物質を受け取るのは毛細血管からになるわけですが、ここでの循環で重要になってくるのは静脈の流れです。新陳代謝を終えて死んだ細胞や二酸化炭素や老廃物は静脈やリンパの流れによってその場から去って行くのですが、静脈もリンパも自身の力で流れることはできません。周りの筋肉の働きによってゆっくりと流れていきます。ですから筋肉の働きが悪いと流れが停滞してしまいます。これがデスクワークや立ち仕事の多い人が夕方になると膝下のむくみが悪化する主な原因です。時々歩くなどして足やふくらはぎの筋肉を動かすことが静脈とリンパの流れにとって重要な理由です。
 細胞レベルでの循環は“動脈血が入り静脈血が出て行く”ことに他なりませんが、静脈血がそこから去って行かなければ動脈血が入っていく余地ができません。有酸素運動やいろいろな体操をして筋肉を鍛え、心肺機能を高めて動脈の働きが良くなるようにしてみたところで静脈が停滞してしまっていては努力が無駄になってしまいます。ですから全身の血液循環を考えるときには多くの場合、静脈とリンパの流れを改善することを優先させて対処する方が効率的です。私は血液循環を整えようとするときには、まず静脈の流れを整える作業からはじめます。その上で不十分であれば、心臓の働きを考えながら胸郭を整えたりして、動脈系の循環に対応するようにしていますが、多くの場合、静脈系を整えるだけで事足りてしまいます。

 静脈とリンパの流れを良くするために整えるポイントはいくつかありますが、普通の人が日常の生活で行うセルフケアとしてやっていただきたいのは、足と手の指の間をマッサージしてゆるめることです。手も足も表に出ている指は骨格としての指の一部ですが、マッサージしていただきたい筋肉は手の中や足の中にあります。パソコンでキーボードをたくさん使っている人は、手のこの筋肉(骨間筋)がとても硬くなっています。一日中立っているような人や歩き方の悪い人は足の骨間筋が非常に硬くなっています。
 手のひらを上に向けて手を大きくストレッチするように広げていますと手の骨間筋が引き伸ばされ、やがてジワーッとしだし気持ちよい開放感が感じられるようになります。30秒くらい続けていますと足の指がムズムズしだし、からだの血液が回り出すのが感じられるようになると思います。
 
足の骨間筋ストレッチ

 足の中にある足の指を一つずつ掴んで広げていますと足がジワーッとしてきませんでしょうか。特に足の親指と人差し指(2趾)の間と小指と薬指(4趾)の間を念入りにやっていただきたいと思います。
 このようなことでからだの血液循環は良くなります。それは検査の数値とかではなく、体感として感じられると思います。

 冒頭に申し上げましたとおり、活発な新陳代謝と細胞の修復のためには肝臓の働きと血液循環と食物としてはタンパク質と核酸が必要です。サプリメントを利用すると考えるなら、是非核酸を摂っていただきたいと思います。また大豆をはじめ良質なタンパク質を摂取することが良いと思いますし、白子など高核酸食を積極的に摂取するのも良いと思います。そして肝臓の健康を維持する意味で、アルコールや薬を飲み過ぎないようにすること、目の疲れを蓄積しないこと、ストレスを溜め込んで感情の起伏が大きくならないようにすることなどに注意していただきたいと思います。さらに全身の血液循環を順調に行うためにセルフケアとして手と足へのマッサージや指圧をおすすめします。

以下は、以前に中国の伝統中医学の先生に教えていただいたことです。「寒性・熱性」という言葉が出てきますが、それは体質をあらわしています。

【目は肝臓の窓】
 中国の諺に「目から心を洞察する」があります。
 黄帝内経にも「五臓六腑の精気はすべて目に注がれ、目の精となる」という言葉があります。漢方においては、これらの考え方からもわかる通り、目の観察はとても重要であります。
 まず目の結膜部。我々は暑い部屋の中に長くいると目が赤くなります。なぜならば身体が外からの熱によって「受熱」した状態になったからです。逆に云うならば、目の結膜部が赤いということは熱の体質であるということになります。
 また、直接熱を受ける「受熱」ばかりでなく、例えば夜勤・疲労・情緒の波動などによって目が赤くなることがあります。これらも熱の体質と考えなければなりません。
 以上の反対、結膜部が清く澄み切っている状態は寒の体質と考えられます。臨床においては熱性の目より寒性を判断することは難しく、かなりの経験を要します。
 以上のようなことから、熱性の場合は「目赤(モクセキ)」、寒性の場合は「目白(モクハク)」と云いますが、ここでいう目とは、目の全体ではなく結膜部のことです。
 例えば「目赤」の場合、熱性の生薬や食物を即時に止めなければなりません。また、仕事の疲労や徹夜のために目が赤くなったのならば注意を要します。それは内臓から訴えられた赤信号とも考えられるからです。もしもそれを無視して続けているならば、身体に何かが起こる危険性は十分にあることでしょう。
 飲酒についても当然考えなければなりません。酒は大熱という性質です。つまり、飲酒には身体を温めたり熱くしたりする効能があります。しかし、飲酒によって目が赤くなるということに関しては、それほど恐れることではありませんが、通常の場合、翌日ないしは2・3日で赤みが取れなければなりません。もしその赤みが消えないならば飲酒を中止してください。なぜならば体内にその熱が蓄積されているからです。そうしなければ目の問題だけではなく、肝臓が侵されることになります。
 「目は肝臓の窓」です。「目赤」という信号は無視してはなりません。

 また、「目の色」以外、目の分泌物も寒熱を探知する情報のひとつです。例えば、朝起きた時きに目が乾燥していて開けようと思ってもなかなか開けられなく、ネバネバした粘液ができた経験は多くの人がもっているでしょう。これは熱の症候です。この場合は寒性である緑茶やウーロン茶を飲んだりして、その熱を抑えなければなりません。漢方療法で行われることに、緑茶や菊花茶の汁で目を洗うことがあります。
 これらの反対に、何のきっかけもなくして涙を流すならば、それは寒性として考えることになります。

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