ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

 このブログでも、ゆめとわのホームページでも、筋肉・筋膜の“ゆるみ”とか“こわばり”という言葉が再々出てきます。これらは筋肉や筋膜の変調(正常ではない状態)についての言葉なのですが、なかなかわかりづらいと思いますので少し説明させていただきます。
 筋肉は意志や神経からの信号によって伸びたり縮んだりして働いています。
 ところで、自分の力量を見せようとして腕を自分の方に曲げながら二の腕(上腕)に“力こぶ”をつくる男性の姿を想像してください。この時、上腕にある上腕二頭筋が収縮して太く硬くなります。筋肉の発達している人はモッコリとした硬い筋肉の山ができます。これは筋肉が収縮した状態です。
 一方、上腕の裏側には上腕三頭筋という筋肉があります。この筋肉は同じ動作の時、収縮するのではなく伸びる方向に働きます。上腕二頭筋と上腕三頭筋は反対の働きをするので拮抗関係にある筋肉=拮抗筋と呼ばれますが、仮に上腕三頭筋が上手く伸びなかったとしたら、いくら筋力があったとしても腕を曲げることができなくなってしまいます。
 また、曲げた状態から腕を伸ばすときには上記とは逆に、上腕二頭筋が伸びて上腕三頭筋が収縮することになります。このように拮抗関係にある筋肉の働きが正常であれば、腕を曲げたり伸ばしたりする動作は非常に軽々とスムーズに行うことができます。

上腕二頭筋と上腕三頭筋

 ところが何らかの理由で筋肉の一部に損傷した部分ができたとします。ケガや打撲などによって上腕二頭筋の一部分が収縮できない状態なると、途中までは曲げられるけど最後まで腕を曲げることができなくなります。あるいは拮抗筋である上腕三頭筋の一部分に塊のようなものができて、その部分が伸びなくなったとしてもやはり腕を最後まで曲げることはできなくなってしまいます。上腕二頭筋には腕を最後まで曲げる能力はあるのに、拮抗筋である上腕三頭筋にうまく伸びてくれない部分があるので腕を最後まで曲げることができなくなってしまうのです。

 上記では“ケガや打撲”、“塊”という言葉で表現しましたが、このようなものが筋肉にできてしまっている状態を筋肉が変調していると言っています。
 変調には二つのタイプがあります。
 ひとつは私が“ゆるみ”という言葉で表現しているもので、筋肉がうまく収縮できなくなっている状態です。“腑抜け”とか”中抜け”にも近いもので、触ると力感が感じられずヘニョヘニョしています。“伸びきったゴム”、あるいは“戻らなくなってしまったバネ”といった感じです。
 一つの筋肉全体がこのような状態になることは普通はありませんが、筋肉の中にこの働きが悪い部分ができてしまうと、筋肉全体のパフォーマンスが低下します。「筋力アップのトレーニングはしているんだけど、力が入らない」みたいな状態になってしまいます。

 変調のもう一つは”こわばり”です。これは筋肉の一部分が収縮したままの状態で、力をゆるめてもその部分だけ収縮が解除できないものです。あるいは一つの筋肉全体がこわばった状態になることもあります。
 “肩が張っている”、“背中が張っている”などと感じるのは、筋肉がこわばった状態にあるからです。そして、こわばりのある部分は押したり伸ばしたり、あるいは軽く触れたりするだけでも痛みを感じるのが特徴です。“足がつって痛む”という“こむら返り”は、強いこわばりが次から次へと生まれてしまうからです。

筋肉に変調ができてしまう理由
 筋肉は骨と骨を結び付けていますので、骨格が歪むと“こわばったり”“ゆるんだり”して変調をおこします。そのことについては別途取り上げますので、今回は骨格の歪みによるものは除外して説明させていただきます
 筋肉にゆるみができて働きが悪くなってしまうのは、打撲やケガなどの損傷によるもの、使いすぎて疲弊してしまったもの、反対にあまり使わないために機能が低下してしまったもの、などが考えられます。
 打撲やケガによるものはイメージしやすいと思います。肉離れなどの損傷もこれに入りますが、その部分に力が入らなくなるため、動かすことが辛くなります。それでも無理して動かそうとしますと他の筋肉に負担が掛かるため痛みを感じるようになります。ギックリ腰もこの類です。骨盤や背骨近くの筋肉や筋膜にキズがついてしまい力が発揮できなくなるため、ひどい場合には身体をまったく動かすことができなくなってしまいます。
 使いすぎて疲弊してしまった場合というのは、パンツのゴムを連想していただければよいかと思います。何度も何度も履いたり脱いだりを繰り返していますと、やがてゴムが伸びてしまいダラーッとなってしまいますが、それに似ています。疲労が蓄積したせいで筋細胞の働きが悪くなってしまったと考えられます。
 あまり使わないので機能が低下してしまうというのは、“筋力低下”の部類に入ります。これがとても顕著に現れるのは噛む筋肉です。食物をほとんど噛むことなくすぐに飲み込んでしまうような人や片方ばかりで噛んでいる人は、(噛まない方の)噛む筋肉がすぐにゆるんでしまいます。私たちの身体は食物を噛むことによって全身の筋肉が機能するようにできています。ですから、なるべく多く噛んでそしゃく筋を鍛えて欲しいのです。

 一方、筋肉にこわばりができてしまうのは、連続して使い続けたり、強い力を込めて筋肉を働かせたことによる場合が多いです。
 こわばりが顕著に現れる部位としては顎周辺、手、足などです。噛みしめる癖や歯ぎしりの癖を持っていると必ず顎周辺の噛む筋肉はこわばります。片方ばかりで噛んでしまう片噛み癖の人は噛んでいる方の筋肉がこわばります。
 手作業が多い人は使っている筋肉がこわばります。パソコンでキーボードをたくさん叩いている人、スマホで文字入力をたくさん行っている人、ゲームでたくさん指を使っている人、これらの人も手指の筋肉がこわばります。
 歩き方が悪い人、外反母趾の人、これらの人の多くは小指側に重心がありますが、それでも地面を親指で蹴ろうとするため、足の親指の筋肉はこわばります。
 重たい物をたくさん持ったり、あるいは自分の能力以上に重い物を無理して持ったりすると、筋肉は自分をこわばらせた状態にして頑張るようになります。それによってこわばりが残ってしまいます。

 以上が直接的に筋肉を変調させる理由ですが、“ゆるみができたので、筋肉をこわばらせて頑張っている”というのもあります。そしてこれが一番多いかもしれません。
 例えば、(五十肩によく見られるケースですが)肩関節を支えるために働く筋肉が三つあったとして、そのうち一つがゆるんでしまい働かなくなったとします。するとそれまで三つの筋肉で行っていた仕事を二つの筋肉でしなければならなくなります。そうなると二つの筋肉は自分の通常の能力を超えて頑張らなければいけないため、より収縮するようになります。この理由でこわばりができてしまいます。すると肩は重苦しくなり、動きも悪くなります。
 この状態は外から触ると筋肉が張って硬くなっていますから、ついつい揉みほぐしたくなります。しかし自らを硬くしてなんとか肩の状態を保っているのに、それをほぐしてしまうと筋肉は頑張れなくなってしまい、肩関節が本当におかしくなってしまいます。そしてこれが五十肩を長引かせる最も多い理由であると考えられます。この場合の正しい対処方法は、ゆるんでしまった筋肉の状態を回復させることです。そうすることで再び三つの筋肉でバランス良く肩を支えることができるようになりますので、自ずとこわばっていた二つの筋肉はゆるんで変調が解消されます。

変調の修正‥‥ゆるみ=虚、こわばり=実
 東洋医学の診断に“虚・実”というのがあります。“虚”は虚弱体質という言葉でイメージできると思いますが、不足、弱い、働きが悪い、という感じでしょうか。“実”というのはイメージがつかみづらいですが、虚の反対の意味で用いられます。と言っても、強い、働きが良い、という意味ではありません。東洋医学的に言えば「邪気が充実している」となりまして、余計なものがたくさん詰まっているという感じです。“何かが滞っていてエネルギーの流れが悪い”ので、こちらも本来の働きができないという意味です。
 “ゆるみ(虚)”とはその部分の細胞の働きが悪いことと同じですから、細胞に働きかけるように施術を行います。そのためには、そっとその部分に手を当てることが一番だと思います。私はそうしています。先日「こんな軽い力で大丈夫なのですか?」とお客さんに言われましたが、それで十分なのです。寝ている赤ちゃんの頭を優しく撫でているような気持ちです。そっと、粘り強く、手を触れているとやがて細胞が活動を再開し、ゆるんで中抜けしていたところにだんだんとハリが戻ってきます。そして筋肉全体ががしっかりしてきます。
 “こわばり(実)”は余計なものが詰まっていて細胞が身動きできない状態ですから、その余計なものを排除しなければなりません。そうしないと血液も含め身体のエネルギーが流れないのです。 これに対する施術は痛みをともないます。“ゆるみ”に対する施術とはまったく違います。強い肩こりを揉みほぐすのに似ていますが、やがて“こわばり”がゆるんできますと痛気持ちよくなり、施術の後は解放感が感じられます。そして筋肉全体の働きも良くなります。

 以上が変調に対する直接的な施術方法ですが、実際の臨床では、上述したとおり“ゆるみ”ができたために別の場所に“こわばりが”できてしまった場合や反対に”こわばってしまった”ために別のところが“ゆるんでしまった”などの場合がほとんどですので、それらの関係性をしっかり見極め、施術方法を間違えないようにしないといけません。ゆるんでいる筋肉があって、別の筋肉がこわばって頑張っているのに、そのこわばりを取ってしまうと症状がさらに悪化してしまうからです。ですからこわばりを取る、つまり硬くなっているところをほぐす時は特に注意が必要です。

 もう何年も前に、あるいは10年以上も前に車で追突されてムチウチになった損傷が治りきらないで残っている場合がけっこうあります。
 ムチウチの後、整形外科などで電気治療や牽引などの治療を受け続けても首や背中がなかなかすっきりしないのに、保険の関係で半年くらいで通院が打ち切られる場合も多いと聞きます。
 ムチウチの損傷は、自分が身構えていない状態なのに、つまり筋肉が衝撃のための準備をしていないときに“ガックン”と首を強く大きく振られてしまうときにできます。病院の治療によって首の痛みや頭痛などはやがて解消しますが、「どうも、首筋から肩甲骨にかけて違和感やハリが残る」「首が前に出てしまい猫背になってしまった」「背筋を伸ばそうとすると、背中に力をいれなければならなくてしんどい」といった症状が残るようです。
 さて、たとえそれが10年以上前のものであっても、強めのムチウチを経験した人の筋肉や筋膜には損傷が残っている場合が多いです。後頭部のちょうど髪の毛の生え際のところに筋・筋膜のゆるみが残っています。ここは背面のさまざまな筋肉が後頭部に付着している、ちょうどその部分にあたります。強い衝撃によって、筋・筋膜が“伸びきったゴムが元に戻りきらない”ような状態になってしまった感じに近いです。

ムチウチによる僧帽筋・肩甲挙筋

 後頭部のこの部分から肩甲骨に掛けて僧帽筋という大きな筋肉があります。肩こりの時に皆さんが自分でよくつまんでいる筋肉です。後頭部のゆるみはこの筋肉の働きを悪くしますので肩甲骨が本来の状態よりも下がってしまいます。すると肩甲骨から首(頚椎の上部)にかけてつながっている肩甲挙筋がこわばります。さらに背骨と肩甲骨をつないでいる菱形筋もこわばります。ですから、首から肩にかけていつも重みやハリを感じたり、肩甲骨の内側に辛さを感じたりするようになります。
 さらにこの部分は、脊柱起立筋と呼ばれる背中を支え背筋を伸ばすための筋肉群の付着部でもあります。僧帽筋同様にこれらの筋肉の働きも弱まるため、背筋を伸ばし、首を真っ直ぐに支えることが楽にできなくなり、首が前に出て猫背になったしまう可能性が高くなります。

ムチウチによるゆるみの残る場所

 実際のところ、この部分にできてしまった筋・筋膜のゆるんだ状態は何年経っても残ったままになったいる場合がほとんどです。その確認の仕方は、髪の生え際から後頭部の突起(外後頭隆起)のところを親指を除く四本の指で軽く押しあてると姿勢を真っ直ぐにすることが楽にできるようになったり、歩く動作が楽になったりしますので、試してみてください。
 そして、この部分のゆるみを解消するためには施術が必要です。牽引や電気治療などでは無理だと思います。施術は一度ですむ場合もありますし、2~3回必要な場合もあります。何度も通えない人にはやり方をお教えしますので、ご自分でやっていただいても回復は可能です。
 「どうやってやるのか?」という問い合わせのメールをいただいたりしますが、“こんな感じでやってください”を言葉で表現することはできませんので、来店していただいて実際に体験していただくしかないと思います。
 ムチウチの後から「どうもスッキリしないし体調にも変化がある」あるいは他に症状が出てしまったという場合は、ここがキーポイントである可能性が高いと思われます。

 ちなみに僧帽筋がゆるみますと後頭骨が上がります。すると顔は下がります。また仙骨も下がりますので、お尻も下がります。
 ムチウチの後から瞼を開けるのに重さを感じたり、顔にたるみができたり、鼻が下がったように感じたりするなら、この問題を解決することをお勧めします。

 これからやってくる寒い季節、“冷え”に苦労する人も多くなると思います。手足の冷えはとても辛い思いをもたらすかもしれませんが、極端な場合を除いて、自律神経が正常に働いている証でもあります。
 身体にとってお腹の冷えは大敵です。お腹、つまり内臓が冷えると酵素の働きが鈍るため消化・吸収・栄養・排泄といった生理機能が快適にできなくなる可能性があります。ですから、身体は自律神経の働きによって手や足の表面にある毛細血管に血液を送る量を制限するようになります。血液の温度を下げないためです。それによってお腹を冷えから守ろうとするのです。
 運動や作業をしているときは温まるが、それらを止めると間もなく手足が冷たくなる、というのが寒い季節では理想的な状態かもしれません。反対に冬でも手足がポカポカしているような人は、体温を外に無駄に出しているということですから、お腹の冷えを警戒する必要があります。

小腸区への刺激

 さて、胃腸の働きが悪い人で、お腹が冷えていることが原因の一つであると見受けられる人が時々来ます。こういう人は足裏を触ると、土踏まずの深い部分がゴリゴリしてとても硬くなっています。表面を触っただけではわかりません。手の親指などでグッと押し込むと、板のように硬くなっているものが奥に感じらます。そのような人はお腹が冷えている可能性が高いです。
 この部分は足つぼ(足の反射区)では“小腸区”にあたります。小腸はその日に食べたものを夜寝ている間に吸収して栄養にする働きを行っているところです。つまり、寝ている間は小腸に血液が集まるのです。ちなみに東洋医学(中医学)では心臓と小腸は表裏の関係にあると考えられています。昼間は心臓が血液循環の中心であり、夜中は小腸が中心であるという見方が遙か昔からなされていたということです。

 私は胃腸の働きが悪くて足裏の深い部分が硬くなっている人には、本人の了解を得て、この小腸区をグイグイ刺激してほぐします。時間としては片方1分くらいでしょうか。押し始めの15秒くらいはそれほど痛がりませんが、それから非常に痛がるようになります。それでも力を弱めることなくほぐすように刺激し続けます。するとやがて痛みが弱くなり施術を終えます。
 両足の施術を終えると、お腹の深い部分にあったこわばりもゆるみ、呼吸も良くなります。その場ですぐにお腹の温度が上がるわけではないと思いますが、お腹の働きが良くなったように本人も感じてくれます。

 そして「痛いけど、自分でも毎日やってください。」と申し上げますが、次回来店されたときに確認すると、「ちょっとやったけど‥‥」とほとんどの人が継続してやってくれません。
 お腹の冷えはあらゆる内臓の病気につながると思います。私からすると、ストレッチとかヨガとか体操とか、そういうことも日常のケアとして大切かもしれないけれど、それにほんのちょっと足裏への刺激も加えて欲しいと、そう願っています。

 ”朝起きた時が一番調子悪い”というのは、“寝ているときの血液循環が悪い”とほとんど同じ意味です。
 そういう人は試しに、この足裏奥への刺激を何日か続けてみてください。きっと寝起きの状態が変わってくると思います。  

ひとつながりの身体

 私の整体院の名前は「ゆめとわ」ですが、看板には「ひとつながりの身体」というキャッチフレーズが大きく書かれています。これは私の整体の先生がよく口にしていた言葉です。私たちの身体は60兆個もの細胞の集合体だと言われていますが、出発点はたった1個の受精卵であり、それがたくさんに分化して頭や胴体(体幹)や手や足、心臓や肺や胃や腸といった内臓になったものであり、ですからすべてはつながっているという意味を言葉にしたものです。
 勉強し始めの頃は、頭では“すべてはつながっている”と理解しようとしても、いざ体を触る段になると反射的にどうしても部分部分に目が行ってしまいます。例えば腰痛に対処するための実習を始めると、どうしても腰や殿部を中心に硬いところを揉みほぐしたり、骨盤がずれていれば、やはり骨盤や背骨(腰椎)あたりばかりに気がとられてしまいます。ところがそれではほとんどの場合、改善に結びついていきません。
 「この人が腰痛になった、あるいは骨盤がずれてしまった理由は何だろう?」ということを頭に置きつつ、体全体を一つ一つチェックしていくと、肩甲骨がずれていたり、その先の肘がしっかりしていなかったり、そして手首の感じがなんとなく変に感じられたりして、「ああ、手に問題があって骨盤がずれ腰痛になっているのかもしれない」という思考回路が形成されていきます。
 実践でこんなことをたくさん繰り返していますと、いつの間にか、身体全体をとらえながら骨盤という部分を考えられるようになってきました。それでまさしく、“身体はひとつながりである”という大前提が自分の中にしっかり根を下ろすことができるようになったのです。

 整体業にとって解剖学は必須のものですが、どの解剖学の本をみても“ひとつながりの身体”という視点で書かれているものはありません。一つ一つの骨や筋肉や神経については非常に詳細に分析されていますが、手と足と胴体と頭はどういうふうに影響し合っているのか、あるいは右手を握ると左手の筋肉はどのようになるのか、そういった分析を載せた本は見当たりません。しかし、体を整える現場ではそういった情報の方が部分部分の詳細情報よりも役に立ちます。
 「ないなら、自分でつくるしかないか」と思いつつ、今少しずつ準備を進めているところですが、私は学者ではないので解剖の基礎を知りません。どうしても学問的裏打ちとしての道標が必要です。それで出会ったのが三木成夫(故人)先生の本です。すでにこの世を去っておられますので、お会いしてお話しを聞くことはできません。ですから出版されている本の内容に、施術の現場で感じたこと、知ったことを重ね合わせながら確認するしかありません。

 三木先生は植物がいかにして動物に進化していったか、また、海の中で暮らしていた動物(魚)が陸に上がった時、どのような変化が生命に起きたか、そしてその変化は私たち人間の体の中にどのように刻まれているのか、とてもかいつまんで言えばそういう研究をされておられました。そして私たちの体を植物性器官(内臓のこと。食べて消化して排泄する、子孫を残す)と動物性器官(エサを求めて移動する)に分けて考察をすすめていき、「顔は腸が表に出たものである。」という重要なことを私に教えてくれました。
 また、呼吸運動は単にガス交換の働きだけではなく、横隔膜を動かすことによって胃や肝臓や腸が刺激され内臓の働きが良くなることに関係していると教えてくれました。他にもたくさんを教えてくれています。
 これらはより実践的な知識です。顔は腸が表に出たものだから、昔の医者は”顔色をよく観察し、内臓の状態を把握していたのか”と納得できます。
 ”胃腸の働きや便通を整えるためには正しい腹式呼吸が必要だ”という考察によって、内臓の調子を整える、つまり自律神経の働きを整えるための入口は“呼吸である”という考えに至りました。そして、それらを実際に施術で実践しています。

 今日、「胃がムカムカする」というお客さんが来ました。背中の筋肉はガチガチで胃はまったく動いていないような状態でした。一応、背中の筋肉を揉みほぐしましたが、「決めては呼吸だな」と独り言をつぶやきながら、より肋骨が自由に動けるように整えました。すると途端に腹式呼吸ができるようになり、バリバリだった背中もゆるみ、ポコッと張り出していた胃の部分もゆるみました。「あぁ、楽になった!」と本人の弁でした。

 三木先生は「ひとつながりの身体」という視点で解剖学を学術的に研究しておられた方だと私は思っております。この先も少しずつ三木先生の世界と整体の実際を取り上げていきたいと思っています。

         

 腕が上がらない、後に回らない、重たいなど、四十肩、五十肩と呼ばれる肩関節痛の問い合わせが多いので私の考え方と施術について説明させていただきます。
 肩関節痛の初期の段階は、肩から腕にかけて違和感を感じる、筋肉に張りを感じる、肩先を触ると痛みを感じる、何となくしっくりしない、腕が重たく感じるというものです。手を使いすぎたり、普段あまり歩かないのに歩きすぎたり、体に捻れが生じたりすることが原因でこのような症状になることがあります。
 この段階では、無理をせず疲労がとれて体が元の状態に戻ればやがて症状は解消されていくものと考えられます。ところが肩がしっくりしないので肩や腕を回したり、ストレッチをしたり、あるいは違和感を感じつつも使い続けているとある時、洗濯物を干すのに腕が上がらなくなったり、ドライヤーをかけることが辛くなったりします。肩がジンジンしたりして腕を大きく上げることができなくなってしまうかもしれません。こうなると本格的な四十肩・五十肩の段階になったと考えられます。
 ひと月くらいしても症状が改善されないと整形外科を訪れ、そこでリハビリ運動を教えられます。痛みを感じながらもリハビリ運動を続けているのに期待を裏切ってますます症状が悪化してしまうという経過をたどっている人は意外に多いのかもしれません。そして「五十肩は治るのに1年とか1年半とかかかる」というのが定説になってしまったのかもしれません。
 私のところに肩関節痛のためにやってこられる方々は、だいたい3ヶ月以上症状が改善されない人が多いのですが、中には5年くらいという人もいてビックリすることがあります。

 さて、肩関節痛は基本的に鎖骨と肩甲骨と肋骨の関係と、これらの骨に関係する筋肉の変調が直接的な原因で起こります。ですから症状を解消するためには、おかしくなっているこれらの要素を整えることが必要です。単に腕が上がらないとか、何かの動作で肩や腕が痛む、肩先が痛むなどの段階であれば一回施術するだけでほとんど改善してしまうでしょう。ところが、腕が重たくてジッとしているだけでも痛む、腕をちょっと動かすだけでも痛い、フライパンが持てないなどの段階は、2~4回くらいの施術が必要になると思われます。何故なら、ある筋肉が損傷あるいは疲弊した状態になっていて力を発揮することができない状態になっているため、それを修復しなければならないからです。疲弊して働きの悪くなった筋肉を元の状態に戻すのは何回かの施術と時間が必要です。
 さらに状態が悪化している場合、あるいは一年以上症状が続いている場合は、もう少し施術回数と時間がかかると思います。

 長年にわたって症状が治まらない、あるいは「一時に比べればだいぶ良くなったけど、ある動作をすることができない」というような場合は、状態をこじらせてしまっていることが考えられます。
 例えばAという筋肉の働きが悪く肩関節痛になったとします。整形外科がすすめるリハビリ運動を無理をしながら継続していますと、A筋肉の状態は悪くなるばかりですが、体が本来持っている対応力によってAに隣接するBやCの筋肉がAの働きを代替するようになります。するとBとCの筋肉は本来の働き以上に頑張ることになります。それによってB、Cの筋肉はコチコチこわばってしまいます。これらの筋肉は自らを硬くして肩関節を保つようにしようとするのです。この理由で、一時に比べれば腕も上がるようになったし、力も入るようになったけど、ドアノブを回したり、腕を内側に捻ると痛む。あるいは腕が後に回らなくなってしまったなど、何かの動作ができなくなってしまいます。これが、こじれた状態の一例です。
 こうなりますとAの筋肉を修復しながら、BとCの筋肉のこわばりも解消していかなければなりません。体にも変な癖がついている可能性が高いので、それも調整しなければならなくなります。施術経験から言いますと、長年にわたってこわばり続けていたBとCの筋肉はそう簡単には本来の状態に戻りません。無理して戻そうとすると筋肉を傷める結果を招く恐れもでてきます。
 ですから、早く良くしてあげたいと思いますが、実際のところ6~10回程度の施術を要する場合が多いです。

 整形外科で勧めるリハビリ運動の詳細は知りませんが、お客さんからの話を聞くと、1㎏くらいの重りをぶらさげて一日200回くらい腕を回すように指導されているとのことです。そうしなければ肩関節が固まってしまうという理由だそうですが、私は逆だと思います。痛いのを無理してそのような運動をしていると、上記のB・Cのように筋肉がこわばってしまうため、それこそ肩関節が固まってしまうのではないかと思うのです。

肩甲下筋と前鋸筋がポイント
 さて、肩関節痛にも原因やきっかけや経過は様々ありますが、多くを見てきた経験で言いますと、最後の決め手になるのは“肩甲下筋の疲弊”と“前鋸筋(ぜんきょきん)のこわばり”を改善することです。その他にも鎖骨や肋骨が捻れているとか、肩甲骨の位置が悪いだとかありますが、それらを整えたとしても肩甲下筋と前鋸筋を整えないと症状は改善しないと考えています。

肩甲下筋と前鋸筋

 肩甲下筋は肩関節において腕(上腕骨)を肩(肩甲骨)にくっつけておく筋肉(回旋腱板)の一つですが、ボールを投げたりする動作で働きます。野球の投手が肩を壊すといった場合、この筋肉が損傷していることが多いです。例えばベッドに仰向けで横になり、腕を真横にベッドの縁を越えるように開いてみます。180°を超えて開くということです。この時、ダラ~っと腕や肩の力を抜くことができるのであれば大丈夫ですが、肩や腕に力が入ってしまったり、この動作ができないようであれば肩甲下筋に問題があるということになります。
 
肩甲下筋のテスト

 前鋸筋は肩甲下筋と同じく肩甲骨の内側(肋骨側)にある筋肉ですが、肩甲骨を前方と外側に出す働きをします。パソコン作業の多い今日、多くの人が猫背で肩が前に出ていますが、それは前鋸筋のこわばりによるものです。
 どうも肩甲下筋の働きが悪くなると前鋸筋がこわばるという関係にあるようです。前鋸筋には肩甲骨が体幹(肋骨)から浮かないようにする働きもありますので、こわばることによって肩が体から離れないようにしているのかもしれません。
 前鋸筋がこわばり肩甲骨が外や前に動きますと鎖骨の位置はおかしくなるし肋骨も捻れます。それによって肩関節の動きに影響がでます。

 以上のように肩甲下筋と前鋸筋の状態を改善することが肩関節痛を改善するためには欠かすことのできない要素です。それを抜きにしていろいろなことをしたとしても、それは不完全な解決策でしかないと私は思います。
 

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