パソコン業務を行っている人は、猫背になりやすい傾向があります。
猫背にもいくつかのタイプがありますが、肩関節で上腕骨が前に突出しているようなタイプでは、大胸筋の胸骨部がこわばっている可能性も考えられます。大胸筋胸骨部がこわばると胸の中央にある胸骨に上腕を引きつける状態になりますので、いわゆる胸が広々としていなくて狭くなり、息苦しい感じになります。息を吸っても胸が広がらないので空気が十分に入って来ないのです。
さて、話は少し変わりますが、物を掴むときに中指、薬指、小指の指先に力が入らず上手く握れないので、手のひらの筋肉を使って掴んでしまう人がいます。
これを専門用語を使って言いますと、深指屈筋の働きが悪いので小指対立筋や短小指屈筋を使って掴んでいる、となります。
深指屈筋が使えない状況はいくつか考えられますが、スマホ操作やスマホゲーム、携帯ゲームなどで親指を回転させたりしている人の場合、親指を後ろ(手の甲側)に引き上げる筋肉(短母指伸筋)がこわばっていますが、そのような人はこの傾向にあります。
手のひらの手首付近の膨らみは親指側と小指側の2つがありますが、親指側を母指球、小指側を小指球と言います。
小指球は小指対立筋、短小指屈筋、小指外転筋のはじまり(起始)が集まったっものですが、上記のような傾向の人は小指球の深部がとても硬くなっているはずです。ぐっと力を入れて指圧するとかなり痛みを感じるか、あるいは硬すぎて最初のうちはなんの痛みも感じないかもしれません。
小指対立筋は胸の大胸筋の胸骨部と連動関係にあります。短小指屈筋は大胸筋の鎖骨部と連動関係にあります。
大雑把に申しますと、大胸筋胸骨部がこわばると肩関節で上腕を前に突出させながらさらに胸の中央方向に引きつけます。大胸筋鎖骨部がこわばりますと、鎖骨を引き下げながら外側(腕の方)に歪めます。
ですから、小指球の硬くなっている人、つまり小指を中心に中指、薬指、小指の指先を使って物を掴んだり握ったりすることのできない人は、胸が狭くなって鎖骨が外下方にずれ、肩も前に出た状態になっていると考えられます。そして、胸が広がらないので呼吸も浅くなっていると考えられます。
また、その他にも鎖骨が本来の位置にありませんので、それによる弊害も生じています。首の動きが悪かったり、噛みしめや歯ぎしりの癖を持っているかもしれません。
深指屈筋の働きが良くなるようにすることで、これらの問題は改善しますが、具体的な対策は個別に見ないと的確に云々できません。
しかしながら、今回はスマホ操作、スマホや携帯ゲームで親指をたくさん使うという前提で話題にしていますので、そのような人の場合は、短母指伸筋を指圧などでストレッチすることがよろしいかと思います。
短母指伸筋はちょっと入り組んだところにありますので、的確に捉えることはできないかもしれませんが、前腕の甲側、手首から4?5センチメートル肘の方に上がったところの人差し指の延長線上、骨(橈骨)の際の深部に指先を入れるように指圧します。最初は周りの筋肉も硬いのでなかなか指圧の指が奥まで入らす短母指伸筋に届きませんが、しばらく指圧を続けているうち筋肉に届くようになると思います。そして、届くと、とても強い痛みを感じると思いますが、そのまま持続指圧を続けていますと硬さがゆるみ、心地よい痛みに変わると思います。ぜひ、底までやってみてください。
すると、物を掴むとき、これまでとは違って指先に力が入り「握る」ということの意味が理解できると思います。