ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

 「顔を下げる筋肉のこわばり①」で大腿四頭筋の内側広筋について説明しました。(こちらを参照)
 今回は同じ大腿四頭筋の中の大腿直筋とその連動筋である腹直筋について説明させていただきます。
 大腿直筋は太股前面の表層にあって大腿四頭筋の中で一番触りやすい筋肉です。大腿四頭は四つの頭(起始)を持ち、それが膝関節のところで一つにまとまり、膝小僧(膝蓋骨)を越えてスネの骨(脛骨)に付着(停止)している筋肉ですが、他の3つの筋肉(内側広筋、外側広筋、中間広筋)が太股の骨から始まるのに対して、大腿直筋は骨盤から始まっているのが特徴の一つです。その構造から膝関節を伸ばす働きをするだけでなく、膝を骨盤の方へ引き寄せる、つまり腿上げをする働きもします。
 そして、膝から下の部分では長母趾屈筋という、歩行時に足の親指(母趾)の先端を曲げて踏ん張り、地面を蹴る動作を行う筋肉に連動します。また、腹部・胸部では、多くの人が「これが腹筋だ!」と思っている腹直筋に連動し、大胸筋に連動します。

腹筋と下肢筋肉の連動2

 立った時に、ふくらはぎの裏側に突っ張り感や重みを感じたり、長く歩くとふくらはぎの裏や外側がつらくなってしまう人は“かかと重心”の傾向にありますが、特徴の一つとして“足の指先が曲がっている”ことがあります。この原因の一つは立った時に重心がかかとに掛かってしまうため、そのままでは後に倒れそうになってしまいますので、「指先を曲げてこらえる」反応が無意識に行われることです。ですから足趾(足指)の先端を曲げる筋肉が常に作動しているような状態になりますので、それらの筋肉がこわばった状態になります。そして、足趾の先端を曲げる筋肉はふくらはぎの裏側にあります(長母指屈筋と長趾屈筋)ので、ふくらはぎの裏側が辛くなります。
 かかと重心ではなく、足底に均等に重心が掛かっている人は立ったときに体重の負荷が指先の方に抜けていくような状態(重みの負担を逃がしている)になりますので、足趾はまっすぐな状態になります。このような人は指先を曲げた状態で立ち続けることはできません。

長母指屈筋・長趾屈筋・後脛骨筋

 さて、母趾の指先が曲がっているということは長母趾屈筋が収縮しっぱなしのこわばった状態にあるということですが、そうなりますと大腿直筋、腹直筋、大胸筋も連動してこわばります。

大直・腹直筋の「こ」による口角の下がり

 腹直筋は恥骨とその周辺(恥骨上肢)から始まり、胸郭の前面に付着していますので、腹直筋がこわばりますと胸郭が下方向に引っ張られます。以前に取り上げました”内側広筋のこわばり”は腹直筋のセンターラインに影響を及ぼして胸骨を下方に引っ張りますが、大腿直筋と連動する腹直筋の部分はその外側になりますので、胸骨よりも肋骨を下方に引っ張った状態になります。そしてその引っ張りは首前面の斜め横あたりの筋膜に及び、その流れは口角~頬~目の周辺へと繋がります。ですから右側の大腿直筋がこわばっている人のは、右胸が下がり、右の口角~右頬~右目~右眉といったところが左側に比べて下がった状態になります。そして、左目に比べて右目を開くことに引っ掛かり感や重さを感じ、“心地良くない”と感じるかもしれません。

小指球のこわばりは腹直筋のこわばりにつながる

小指球と母指球

 手を酷使している人、例えば私の仕事もそうですが、そのような人は掌の母指球や小指球が硬くこわばっています。指圧しても硬くて奥まで圧がなかなか届きませんので指圧や揉みほぐしの最初の段階では痛みを感じません。ですから自分の母指球や小指球がこわばっているとは感じません。ところが、圧し続け、揉みほぐしを続けていますと少しずつ奥に圧が届くようになり、痛みを感じ始めます。そして更に圧を加え続けていきますと、痛みが強くなり、もだえるほどになるかもしれません。これが小指球や母指球のこわばりの特徴ですが、この小指球のこわばりは尺側手根屈筋と呼ばれる小指側ラインの筋肉に連動し、その先は上腕二頭筋短頭、大胸筋のこわばりへと連動します。つまり、手を酷使している人は腹直筋~大腿直筋~長母趾屈筋のこわばりを招くという理屈になります。そしてこのような人は実際、大変多いです。
 「手のこわばりが原因で、腹筋が硬くなり、胸が下がって顔も下がってしまう」と簡単に説明することがありますが、原理は上記の通りです。

腹直筋がこわばる理由
 上記では、かかと重心などの理由で足の指先が曲がっている人(長母指屈筋のこわばっている人)や手の使いすぎで小指球が強くこわばっている人は、筋肉連動のしくみから、腹直筋もこわばり、胸郭を下げ、喉を下げ、顔を下げてしまう、という内容を説明しました。
 これ以外にも腹直筋がこわばってしまい顔が下がってしまう状況があります。

①お腹の冷え
 「冷えは筋肉の働きを悪くする」という説明たくさんしてきました。今の若い人たちはそうではないかもしれませんが、少し前の時代「ヘソ出しルック」が流行っていた頃、「将来この人達は苦しむかもしれない」と思いました。
 湯船に浸かる習慣がない外国の人たちは、少々寒くても半袖で過ごしたりして、民族性としてきっと冷えに強いのだと思います。ところが昔から温泉が好きで、湯船に浸かることが日課のようになっている私たちは、「お腹を冷やしてはいけない」のです。お腹が冷えますと、酵素の働きが低下するため内臓の働きが弱まります。そしてお腹の筋肉である腹筋も働きが弱まりますが、すると姿勢を保つことができなくなってしまいます。それでは困りますので、腹筋は自らを硬くこわばらせて対抗するようになります。その硬くこわばった部分がみぞおちの辺りになれば、胃や大腸(横行結腸)を圧迫したり呼吸運動を邪魔するようになりますので、慢性的な胃腸の不良や息苦しさを感じるようになるかもしれません。
 また単純に考えてみてください。例えば冬場、布団で寝ていたとします。明け方は気温が一番下がる時間帯ですので、からだから熱が逃げないように横を向いて背中を丸め、お腹をカバーするようになります。つまり、冷えると、無意識にお腹を冷やさないような姿勢をとるのです。そしてその姿勢は背中を丸め、腹筋を縮める姿勢ですが、この自然な行いは私たちだけでなく犬や猫など哺乳動物の本能のようなものだと思います。(反対に夏場はお腹を出して冷やそうとする)
 ですから、「冷えると腹筋は収縮してこわばる」という原理になっていると言うことができます。

②鼡径部が下がっている
 太股の付け根には鼡径部があります。場所的に骨盤の一部とも言えますし、股関節の一部とも言えるかもしれませんが、恥骨も含めて、腹筋群の出発点になっていることも重要です。また内臓との関係でも大切な役割をしています。小腸は下腹部から骨盤にかけてありますが、鼡径部は小腸が骨盤からはみ出さないように防ぐ働きをしています。さらに体幹から下肢に繋がる動脈、静脈、リンパ管は鼡径部の中を通っていますので、鼡径部の状態が悪くなりますと、血行不良やむくみの問題が起こってきます。

鼡径部は腹筋の起始部

 さて、鼡径部の下がっている人がいます。便秘、下痢、胃腸の調子が悪い、お腹が張る、お尻が落ち着かない、そんな症状を感じているようでしたら、鼡径部が下がっているかもしれません。
 お腹が冷えていなくても、鼡径部が下がっていますと腹筋は緊張状態になりますのでこわばってしまいます。ついどちらかの下腹部に手がいってしまう人は鼡径部が下がっていてお腹(内腹斜筋)が張っているのかもしれません。鼡径部を手で引っ張り上げるとなんとなく安堵感を感じるのであれば、それは間違いありません。
 鼡径部が下がった状態は、顔を引き下げてしまうだけでなく、「なんとなくしっくりこない」という骨盤周りの不安定さにつながり、お腹の不快感や違和感をもたらすことになると思います。

 鼡径部が下がってしまう理由の一つとして、外腹斜筋あるいは内腹斜筋の働きが悪くなって伸びた状態になっていることが考えられます。あるいは恥骨に付着している内転筋がこわばった状態になって恥骨を下方に引っ張り下がってしまう状況も考えられます。また、「出っ尻出っ腹」の体型で骨盤が極端に前傾している場合も考えられます。これらによって腹筋がこわばり、顔を引き下げている状況はしばしば目にします。
 しかしながら、「お腹の調子も悪い」「なんだか落ち着かない」いったことが重なった場合は、足の小趾側の縦アーチが崩れている可能性があります。
 「悪い足」の一例である扁平足は母指側のアーチが崩れた状態ですが、小指側にもアーチがあります。その他に横アーチの崩れによる開張足や甲高の問題もありますが、小趾側の縦アーチの崩れた状態はあまり問題として取り上げられませんが、鼡径部の状態、舌の状態に影響を与えているようです。
 小指側の縦アーチが崩れているということは「小趾中足骨が沈んでいる」こととほとんど同じですが、そのことによって「からだがシャンとしない」という状況を招いているようです。少し大きなテーマになりますので、改めて取り上げたいと考えています。
 扁平足の反対はハイアーチかもしれませんが、それはそれで良くありません。母趾側ハイアーチの人は小指側縦アーチが崩れている傾向があります。

 今回は「顔を引き下げる筋肉」というテーマで腹直筋及びその関連を取り上げました。実際のところ、ほとんどの人の顔は下がっています。テレビに映る芸能人の方々も顔の下がっている人がたくさんいます。「施術して顔を上げてあげたいなぁ」といつも思ってしまいます。本来は、みなさんもっと顔が上がっていて、目も赤ちゃんのようにパッチリ開くはずなのです。

 
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 少し前に呼吸のついての文章(「うつ症状‥‥呼吸の改善を」)を投稿しましたが、それを読まれて来店されたのか、遠くから若い青年が来店されました。
 現在抱えている主な症状は以下の通りです。
 ①手のひらと足裏の汗
 ②顔と背中の肌荒れ
 ③唾液が出にくい
 ④のぼせ‥‥イライラすると頭に血が上り苦しくなる
 ⑤話しにくい‥‥ボイストレーニングに通っている

 症状の発症はだいたい同じ時期で、中学性の頃ということです。
 現在の仕事では接客の業務も行っているため、手のひら汗が中でも気になるということでした。
 体型は長身で痩せています。
 過去のケガとしましては、中学性の時の左腕(橈骨)の骨折、高校時代の数々の足首周辺の捻挫などです。

 さて、手のひらと足裏に汗をかきやすいという問題は若い人にけっこう多いのですが、根本的な原因として考えられるのは体質の弱さによるエネルギー不足、あるいは体内エネルギーの廻り方が普通ではない、といったところです。
 「エネルギー不足」と言いますと、対策としては、食事やサプリメントを考えて適切な栄養を摂る、あるいは筋トレなどで体を鍛える、といったことを連想されるかもしれませんが、それは違うと私は考えています。現在の私たちに足りないもの、そして若い人や子供さんにとっては特に気をつけていただきたいことの一つに「ご飯をよく噛むこと」がありますが、哺乳動物である私たちにとっては、“そしゃく”は生命力に直結する大切な大切なことです。
 そして脊椎動物としての私たちにとって最も大切なことは“呼吸”です。生命の灯火が消えると同時に呼吸が止まりますが、呼吸の在り方は生命を維持するためだけではなく、健康を増進して快適に生きることに直結します。
 ですからエネルギー不足を改善して体質を強めるためには、よく噛んで、快適な呼吸状態を維持することが必要不可欠であると私は考えています。特定の栄養摂取や筋トレは、そしゃくをしっかり行い、快適な呼吸が実現できている上で、更にからだを強めるために行われる、という順番が大切だと思います。そしゃくと呼吸が軽視された状態でサプリ摂取や筋トレを行っても上手くいかないのではないかと思います。

 「エネルギーの廻り方が普通ではない」という表現は中途半端に聞こえるかもしれませんが、「異常という状態ではないけれど、正しいとは言えない」といったところです。大きな関節での歪みが悪化しますとこのような状態になります。たとえば、体幹と四肢をつなぐ肩関節と股関節の歪みは全身の循環に影響を与えます。それによって本来渇いているはずの手のひらから水分が出てしまったり、反対に常に潤っているはずの鼻腔や口腔が渇いてしまったりすることがあります。
 そして「精神的緊張が強くなると手のひらから汗がにじむ」ということが起こりますが、精神的な要因でエネルギーの廻り方がおかしくなることはあります。

 以上のことから、この青年を施術するに際し、まず呼吸とそしゃく筋の面から観察し始めました。

 ③唾液がでにくい、④のぼせ、といったことから連想されるのは噛みしめによるそしゃく筋のこわばりです。唾液腺の一つ、耳下腺は咬筋のところにありますので咬筋がカチカチに硬くなりますと耳下腺から唾液が出にくくなります。さらにエネルギーの廻り方がおかしい状態では、本来潤っているはずの口腔が渇いたりしますので益々唾液不足の状態になると思います。

耳下腺01

 のぼせは頭蓋骨の動きが悪いことが原因として考えられます。頭蓋骨は本来、息を吸う時に少し(横に)拡がり、息を吐くときに少し縮むように動きます。ところがそしゃく筋の一つである側頭筋が強くこわばっていたり、頭皮が硬くなっていたりしますと頭蓋骨が動かなくなります。さらに呼吸が悪い状態が重なりますと、脳内の血液の動きも悪くなりますので、頭が血で一杯の状態になってしまうと考えることができます。

 呼吸の面では、腹式呼吸の要である横隔膜がほとんど動かない状態でした。胸郭は薄く、横に広がった状態で全部の肋骨が下を向いていました。呼吸をしていても肋骨はほとんど動かない感じで「息が吸えない」といった感じでした。
 「ともかく息がたくさん吸える状態にすることから始めなければ‥‥」というのが私の直感でした。
 「横隔膜が十分に働けるようになるには、どうすれば良いのだろうか?」そんな思いを持ちながら胸郭を触っていきました。すると左側の第4と第5肋骨が胸骨から少し離れた感じになっているのがわかりまして、それを胸骨に近づけるように私の手で動かしてみました。するとその瞬間に、横隔膜が作動し始め胸郭が大きく開らきました。そして、ここが大事なところなのですが、横隔膜が作動して胸郭が自然に開くことから吸気の動作が始まるようになりました。無理に息を吸い込むのではなく、自然に息が気持ちよく入ってくる状態です。
 呼吸に関しては「肋骨のズレに根本的な原因がある」ことが分かった瞬間です。

 次に「どうして左側の肋骨が胸骨から離れた状態になっているのだろう?」という本質的な原因を探すステップになります。いろいろな症状が出始めたのは中学性の頃で、左腕を骨折したのも中学性の頃、という関連性が疑わしく思えてきました。
 「中学性の時の骨折は、具体的には左腕の何処だったのですか?」と質問をしました。すると橈骨の肘付近と手首付近の2箇所という返事でしたので、早速その辺りを探っていきますと確かに骨折した痕のような感じの弱いところが見つかりました。そしてその部分に手をあてがって補助しますと、胸骨から離れていた肋骨が少し戻って十分とは言えませんが、横隔膜が働き出し胸郭が大きく動く呼吸ができるようになりました。
 私が手を当てていたのは5~6分くらいだと思いますが、その間の呼吸が改善されましたので、顔色が良くなり、リラックスして楽な感じになりました。頭の方も“詰まり感”がなくなったようで、「楽になりました。」と仰いました。

 胸郭が下がっていたことで喉が下に引っ張られ、さらに呼吸が悪かったことで声の出も悪かったのですが、それも改善され“地声”が出て言葉がしっかりするようになりました。
 これまでにも発声や滑舌などに問題があってボイストレーニングに通われたりしている人が来店されましたが、整体的観点での問題が解消されないとなかなか成果が現れないという実態があります。

 この青年が訴えていた五つの症状は、それぞれを別に考えて、一つずつ片付けていこうとしますと迷路にはまっていくような感じになると思います。
 実際のところ今回は、呼吸のみにだけ集中して施術を行いました。「呼吸が浅い、呼吸が悪い」というのは訴えられた症状には入っていませんでしたが、私は、すべての症状は呼吸が悪いことから派生したものだろうと判断しました。そして120分のほとんどを、横隔膜がちゃんと機能するように整える時間に費やしましたが、施術が終わったときには本人が一番気にしていた手のひらの汗の問題はほとんど解消されていました。
 このブログでは、しつこいくらいに何度も何度も呼吸に関する話題を取り上げてきましたが、それは私たちの健康にとって呼吸は何よりも大切なことの一つだからです。

 私たちは常に無意識下で呼吸を行っていますので、「今の呼吸が普通の状態」と考えてしまいがちです。ですから「呼吸が良くなったとしても、それがどれくらい効果的なの?」と思っている人が多いと思います。あるいは「ヨガやストレッチやその他の運動で呼吸については訓練しているし‥‥」とか、「毎日深呼吸しているし‥‥」ということで私が話題に出している鼻呼吸、副鼻腔、横隔膜、肋間筋などといったキーワードには興味を抱かれないかもしれません。しかし、「真に快適な呼吸」を経験されますと毎日普通に行っていた自分の呼吸がとても非効率だったことが理解できると思います。

横隔膜と肝臓
 現在、遺伝性の糖尿病で悩んでいる人が定期的に来店されています。糖尿病の段階にもいろいろあるようですが、まだ合併症に苦しんだり、痩せてやつれたようになっている状態ではありません。少し太り気味で、食欲もあり、外見的にはごく普通に見える感じで、本格的な糖尿病になる何歩か手前の状態だと思います。ただ血糖値はかなり高く、尿タンパクも良い状態とは言えませんので、本人は何とか今より少しでも良い状態を保って、本格的な糖尿病にならないようにと当院を利用されています。
 糖尿病といいますと、膵臓からのインシュリン分泌不良、腎臓の働き低下などが連想されると思います。それらは足と手の反射区を利用して施術を行うことで対応するとしまして、私がこの方に対して最も気になってしまうのは呼吸の状態です。
 生きているわけですから、もちろん息はしています。ところが胸郭が殆ど動かないような呼吸で、息を吸うと下腹だけがプーッと膨らみパッと吐いてしまうような呼吸でした。腹式呼吸と言えば、一見そのような感じではありますが、リズムが本来の腹式呼吸はかけ離れていますし、胸郭が動かないのでは横隔膜を効率的に使う腹式呼吸ではありません。

肝臓の働き2

 以前にも申しましたが、胸郭の右側、つまり胃の右側には肝臓があります。肝臓があって、そのすぐ上に横隔膜があり、その上に肺があります。詳細は省きますが、肝臓は静脈系の臓器です。静脈系ということは自身の力では血液を運ぶことができないという側面があります。肝臓には小腸で吸収された影響が静脈血に混じって全部送られます。そして健康を維持するために必要なあらゆる処理が肝臓でおこなわれるわけですが、その処理された血液は心臓に戻らなければなりません。胃は自らの筋肉を収縮させて食物を次の段階(十二指腸)に送ることができますが、肝臓はそのようなことができません。吸気の時に横隔膜が収縮して肝臓を上から圧迫するわけですが、この原理も利用して血液を前に進め、心臓に戻しています。ですから、肝臓の働きが順調に行われるためには横隔膜の収縮と弛緩が必要です。つまり“ちゃんとした呼吸”がとても大切であると私は考えています。

横隔膜の圧迫による肝臓と大腸

 インシュリンはホルモンの一種ですが、ホルモンはアミノ酸の集合体です。そしてアミノ酸は肝臓でつくられます(タンパク質の分解)ので、肝臓が大切です。からだの維持に必要なあらゆる物質が肝臓で合成されます。血液に混じったあらゆる毒物を解毒するのは肝臓です。
 そういうことから、この方に対しては呼吸、呼吸、呼吸、といった感じで、理想的な呼吸ができるように施術を行っています。
 最初の来店から半年が経過していますが、呼吸の状態も「まあまあ」という感じになりました。血糖値は安定して下がっているというわけではありませんが、けっこう良い数値がつづくこともあるとのことです。尿タンパクの方も改善傾向にあるようです。そのような数値のことは私にはよくわかりませんが、立ち姿がスーッして背が高くなったように感じられ、素肌の血色も良くなって、当初の、重力に押しつぶされているような姿がすっかり変化していることが頼もしく思えています。遺伝性の症状(病気)ということで、克服するのはなかなか大変なことだとは思いますが、少しずつでも改善への道を進んでほしいと思っています。

横隔膜が働くために
 腹式呼吸の主役は横隔膜ですから、大概の人の横隔膜は働いています。しかし多くの人の腹式呼吸では、横隔膜の動きは、言わば「後付け」の感じです。これは正確な表現ではありませんが、横隔膜が積極的に働いて呼吸動作を主導している状態が理想的なのですが、そのような人はそれほど多くはありません。
 呼吸を整えるための施術を行いながら、私は実際に、横隔膜が大きく動き出すことから無理のない深い呼吸が始まる瞬間を見ていますし、よく知っています。冒頭に登場していただいた青年は、ただ肋骨を胸骨に近づけただけで「いきなり横隔膜が動き出す」という感じでした。本人の意志とはまったく関係なく、深い腹式呼吸が始まります。「この状態が理想!」と心の中で思いました。
 ですから、すべての人にこの状態になっていただきたいとの思いを込めながら施術を行っています。

 ところでカエルの呼吸を見たことはありますでしょうか? カエルは両生類、つまり水陸両用の要素を持った動物ですが、その呼吸の特徴を首のところがペコペコ膨らませることにあります。(You Tube で見てください。)
 そして私たちの横隔膜は、このカエルの呼吸で膨らむ首の筋肉が胸の下に降りてきたものだと言われています。ですから、横隔膜を動かす神経(横隔神経)は首から出ています。つまり横隔膜の働きに頚部の状態は関係があるということです。そういう意味で、老化により頚椎の状態が悪くなってしまった人や頚椎ヘルニアの疑いがある人は、もしかしたら横隔膜の働きが不十分で呼吸が悪くなっているという面があるのかもしれません。
 さらに、呼吸運動には肋骨を動かす肋間筋や大胸筋、胸郭を引き上げる首の筋肉(斜角筋、胸鎖乳突筋)と胸の筋肉(小胸筋)、息を吐くときに働く腹筋なども関わってきますので、良い呼吸を実現するためにはこれらの筋肉や関係する骨格の状態を整えることが不可欠になってきます。
 また、横隔膜が作動し始める合図となるのは、鼻骨のところに吸気を通すことなのかもしれないと思うようになってきました。鼻骨の上には前頭洞という副鼻腔があります。鼻から息を入れてスーッと前頭洞に通過させるような仕草を行いますと自ずと横隔膜が動きだし、胸郭が開いて肺に空気が入ってきます。鼻から息を入れても副鼻腔を通過させずに喉(咽頭)の方に空気を送ってしまうと胸郭の拡がり方は中途半端になってしまいます。鼻呼吸ではなく口呼吸になってしまいますと、肩で息をするような状態になり、胸は上がりますが反対に横隔膜の動きが制限された状態になってしまいます。息を吸っているのに胸が苦しくなってしまうのです。首や肩に力が入ってしまい、いつも肩こりを感じている人はそうなっていませんでしょうか?

 先ほども申しましたが、呼吸のリズムは生理活動のリズムに繋がります。ゆったりとリラックスして時を過ごしたいと願うのであれば、まず呼吸のリズムがそうなっている必要があると思います。
 だからといって、気合いを入れて「ゆったりした腹式呼吸をしよう」「ヨガで意図的に呼吸のリズムを整えよう」としてみても、その場は快適になるかもしれませんが、常にその快適な状態を保つことはなかなか難しいことです。
 ですから、特別な思いを抱いて取り組んだりするのではなく、ごく普通の状態が、快適な呼吸になるように工夫をしてみてください。そしてなかなか上手くいかないと思われるのであれば、ご来店ください。

 
足つぼ・整体 ゆめとわ
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 当店は駅前にあるのですが、玄関前の道路には小田原市水道局の大きなマンホールの蓋が設置されています。その蓋の上をしばしば車が通過していきますが、その時に「ペッコン、ペッコン」と音がします。
 毎週のように来店されている常連の方がいますが、「あの音、なぁに? 気になるわね!」と文句を言いました。毎週のように来店されているので、聞き慣れているはずなのですが、その時に限って不愉快に感じたようです。
 「耳が過敏な状態になっているんですね」と私は応えました。「???」、きっとその方はそう思ったと思います。音がうるさいわけで、自分の耳がおかしいとは想像できなかったのだと思います。

 こういう状況は誰にでもけっこうありまして、耳が過敏な状態になっているので“音に負けてしまう”という現象が起こってしまいます。それを確認するために私は次のテストを行います。
 まず肘を90°に曲げていただき、私が手首辺りを掴んで「肘を伸ばそうと力を加えますので、肘が伸びないように力を入れて肘が曲がった状態を保持してください」と行います。私はその時の反応を観察します。平然と耐え続けられるようであればOKですが、何秒もしないうちにガクガクしたり、顔や別の場所に力を入れて耐えるような仕草をしたり、あるいは力が抜けてしまって耐えることができないようになってしまったら問題有りです。
 まず、ただそのテストだけを行い、状態を確認します。そして次に、テストしながら耳元で音を鳴らします。私がいつも使うのは小さな鐘の音で、「チリーン、チリーン‥‥」という高音の音ですが、それはどんな音でもかまわないと思います。耳が音を聞いたときに、からだから力が抜けてしまうか、平然としていられるかのテストです。
 耳および聴覚系が普通の状態であれば、音があっても無くても、肘の筋力(耐える力)に大きな変化はありません。ところが聴覚系が過敏な状態になっていますと、耳に音が入ッタ瞬間に肘の力を保つことができなくなってしまいます。私は片手で鐘を鳴らしながら、他方の手だけで筋力検査を行わなければならないので肘の力が保持できるかどうかの筋力検査にしていますが、どんな筋力検査でもかまいません。Oリングテストなどに馴染みのある人は、Oリングテストで試してみてください。

 さて、冒頭に取り上げた常連の人は、左耳の検査では大丈夫でしたが、右耳の方は耳元で鐘の音をならした瞬間に肘から力がすっかり抜けてしまい、まったく耐えることができなくなってしまいました。耳がとても過敏になっていることがわかりました。

過敏になっている状態とは?
 春先になりますと多くの人が花粉症で悩まされます。それは純粋に花粉に対して「アレルギー反応を起こしてしまう」ということもありますが、鼻の粘膜が過敏になってしまい、花粉だけでなくハウスダストやその他のものにまでアレルギー反応を起こすようになってしまったり、ちょっとした気温の差や風などに反応するようになってしまったりします。元々の「花粉アレルギー」から鼻や眼が過敏になってしまった「花粉症」という状態になってしまったのだと思われます。
 
 では、「過敏になる」とはどういうことでしょう? 「素肌が過敏ですぐに肌荒れしてしまう」「目が過敏で昼間のまぶしさに耐えられない」そして今回話題の「耳が過敏で、キーーっという金属音に耐えられない」という感覚器官の過敏状態があります。

耳の構造2


 耳(聴覚器)は音を聞き分ける感覚器官ですが、その仕組みを簡単に説明してみます。
 「音」の実態は空気の振動だとされています。ですから耳は空気の振動を感じて反応する器官であるということができます。
 耳は外耳、中耳、内耳の3つの部屋に分かれていますが、耳の穴(外耳道)から入ってきた空気の振動は外耳と中耳の境にある鼓膜を振動させます。すると鼓膜の振動は中耳にあります耳小骨と呼ばれる三つの小骨の振動に変換されます。音がしない(?)のに音を伝える「骨伝導イヤホン」などがありますが、それは鼓膜を介さずに直接中耳に働きかける仕組みになっています。
 中耳の奥には内耳がありますが、そこはリンパ液で満たされた仕組みになっています。かつて海の中で生活していた私たちの遠い祖先(=魚)の面影がそこに残されています。中耳で骨の振動に変換された音は、内耳の水を振動させます。つまり最初は空気の振動だった音が最終的に液体の振動に変換される仕組みになっているわけです。そして内耳の液体振動は、そこにある細かい毛を揺らすのですが、それによって微弱な電流が発生します。その微弱な電流は電気信号として神経(蝸牛神経など)を伝わり脳の中に入っていきます。そして脳内の担当部位で処理されて私たちが「音」として認識できるようになるわけです。

音波の伝わり方


 ですから耳が過敏になる、あるいは難聴状態になるというのは、空気の振動を正確に処理して電気信号として脳に伝え、私たちが音として認識する一連の過程の何処かに不具合や不調があるという理屈になります。
 第一段階は外耳~鼓膜にかけて、第二段階は中耳、第三段階は内耳、第四段階は神経、第五段階は脳という五つの過程のどこに問題があって耳の不調や症状となっているのかを考えることが必要になります。

 さて、「過敏な状態」とはどういうことかを考えてみます。私たちは常にいろいろな外的刺激受け続けているわけですが、その刺激に対して「迅速に、正確に対応できない状態」あるいは「刺激に耐えられない状態」が過敏な状態ではないかと私は考えています。
 例えばパソコンで動画を見るとします。動画は静止画を1秒間に30枚の速度で画面に表示し続けるわけですが、スムーズに再生するためにはパソコンにそれなり処理速度が求められます。十分な処理能力を持っているパソコンであれば快適に動画を見ることができます。ところが10年前、20年前のパソコンを引っ張り出してきて同じ動画を再生しますと、途中で動画が止まってしまったり、あるいはまったく再生できなかったりすることが起こります。それは動画という情報量の大きなデータを正確に処理できる能力をパソコンが持っていないからです。
 通常、私たちはある範囲内(周波数や音量)の音波は正確かつ迅速に処理することができる聴覚器官を持っています。ところが適正範囲を超えるような音波、たとえば大音量の音楽などの刺激には耐えられなくなってその場から離れたくなったりします。そうでなければ上記の五段階プロセスの何処かが傷んでしまうと本能として感じるからだと思います。
 あるいは適正範囲であったとしても自分の体調が悪かったりしますと、処理能力が落ちてしまいますので、音波を正確かつ迅速に処理することができなくなってしまいます。
 「会話の声が頭の中でガンガン響いて頭痛がする」「いつも心地良く聞いている鳥の囀りが気に障る」「自分の声が響いてしまう」‥‥‥これらの不調は音波の処理に関して自分の能力に問題があると考えるのが理にかなっています。「音が気になるから窓を閉めて、音が入らないようにする」「なるべく会話しないようにする」といった方向での対処は、それこそ対処療法であり、解決には至らない方向です。

 ですから「過敏な状態」とは、あるいは「過敏な状態になる」とは下記の二通りではないかと思います。
  1. 自分の処理能力に問題は無いが、刺激が強すぎて正確に処理しきれないため暴走状態になってしまう。
  2. 刺激の強さや量は通常であれば十分にこなせる守備範囲内なのに、自分の処理能力に問題があって正確に処理し蹴れない状態。

 上記2.の場合、問題を解決するためには低下してしまった自分の処理能力を本来の状態に戻すことが必要です。
 冒頭に登場していただいた方は、後頭部右側の後頭下筋群と呼ばれる筋肉が大変強くこわばっていました。その他に右手の親指や人差し指が少し捻れていて強くこわばっていました。これらによって右耳周辺~首筋にかけて強い「張り」がありました。左右の耳の位置を比べますと、右耳は左耳に比べて後方やや下方向にずれた状態でした。
 結論的としては、右手のこわばりや後頭部筋肉のこわばりによって右耳が後下方に引っ張られていたため、外耳道が歪んだ状態になっていて、さらに首筋の筋肉の張りもあって中耳につながる耳管も少し歪んでいたのではないかと思います。耳管は耳の中と外気との気圧を調整する働きをしますが、耳管閉塞症、耳管開放症と呼ばれる症状もありますように、聴覚にかなり影響力を持っています。
 外耳道の歪みは鼓膜の働きに影響を与え、耳管の歪みは中耳の働きに影響を与えますので、それらによって右耳の音波処理能力が低下してしまい、耳が音に対して過敏な状態になってしまっていたと考えられます。
 
 ですから私は右手の手指を整え、後頭下筋群のこわばりを改善して、頭蓋骨の歪みを修整することで右耳の位置を整え、首筋の張りがなくなるように施術を行いました。
 20分くらいの施術時間だったと思いますが、施術後、再び耳元で鐘を鳴らして肘の力がどうなるかのテストを行いました。するとまったく問題の無い状態になりました。そして、玄関外のマンホールの蓋が鳴ってしまう「ペッコン」という音も「さほど気にならない」と仰るようになりました。

 耳も目も鼻の穴も二つありますので、片方が他方を補う仕組みもあって、これら感覚器官の不調は自覚しづらいことではあります。しかしほとんどの人が、二つあるうちの一方を好んで使っている傾向があります。右眼ばかりを使って文字を見ていたり、右の鼻の穴は空気が通るけど左側の穴はほとんど呼吸で使っていなかったり、耳も聞きやすい方で聞いていたりします。両方の耳で受話器を使っている人は少ないと思います。
 不調は自覚しづらいかもしれませんが、実際には存在しているかもしれません。二つあるうちの一つを塞ぐなどして‥‥右の鼻の穴を塞いで鼻の通りを確認したり、眼も片方ずつ見え方を確認したりして不具合や不調の有る無しを確認してみてください。
 見たもの(=見え方)によって心は動かされますし、嗅いだ臭いや聞いた音によって、触れた感触によって感情は動きますので、感覚器官の状態は心を豊かに健やかに保つためにとても重要です。

 もし、「いつもストレスや圧迫感を感じる」とか「すぐにむかついてしまう」「短気をおこしてしまう」「心が塞いでしまう」など内的、心的問題を感じているなら、ご自分の感覚器官をチェックしてみることも必要なことだと思います。「(自分の)外の問題が降りかかっている」と感じていたものが、実は「自分の感覚器官に問題があった」となるかもしれません。それであれば、自分のやり方次第で問題は解決するわけですから、気持ちも楽になるのではないかと思います。


 今回登場していただいたの方は五つあるプロセスの最初の二つ、外耳と中耳の問題を修正しただけですみました。そしてこのような状況の人は「普通に居る」と私は思っています。
 外耳と中耳の問題であれば耳鼻科の医師が担当ですし、素人的な考えでは「それで事足りる」と思ってしまいます。ところが「外耳のズレ」とか「耳管の歪み」「首筋の張り」といった項目は耳鼻科の扱いにはないのかもしれません。
 ご自分の耳の働きに不具合があると認識された方は、一度は耳鼻科に行かれたほうがいいかもしれませんが、解決は期待できないかもしれません。その場合は、筋肉や骨格のことに詳しい治療院や整体院を探して訪れてみてはいかがでしょうか。普通にマッサージや揉みほぐしをしているチェーン店の整体院などでは話も通じないかもしれません。

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 太股やふくらはぎなどの静脈が膨れあがってミミズが這っているように見えてしまったり、足首周辺の静脈までも膨れて紫色になってしまうのが下肢静脈瘤が進んだときの特徴です。着圧の靴下やサポーターが症状の進行を防ぐために「効果的かもしれない」ということで、病院などでも使用を薦められているようです。ところが進行してしまった下肢静脈瘤に対しては効果は期待できないのが実態かもしれません。
 下肢静脈瘤は、症状が悪化しますと手術を薦められ、あるいは見栄えを良くするための手段として手術を選択する人もいます。ところが「なぜ下肢静脈瘤になってしまったのか?」という根本的な原因が解決されなければ再び症状が発症してしまう可能性は残されたままになってしまいます。

 「手術を行った後は、予防措置として着圧靴下などでふくらはぎや足首などを圧迫しておけば症状の再発は防ぐことができる」という考え方もできるかもしれませんが、この方法では圧迫し続けることによる弊害という別の問題が生じます。

 ところで、「どうして下肢静脈瘤になる人と、ならない人がいるのか?」
 この極めて素朴な疑問に医学はどう答えるのでしょうか? 医学は原因を追及して下肢静脈瘤になる人が少なくなるように知らしめる必要があると私は思うのですが、どの病院のホームページを見ても、手術や処置のことばかりで、私たちが知りたい「肝心なこと」に対する対応は見受けられないようです。

 現在、下肢静脈瘤の症状をもった人が数人来店されています。中でも印象的な人が3人いらっしゃいます。高齢者でかなり症状が進んでいますがその他のこともあって手術が受けられない人、すでに手術を受けて表向きは静脈瘤が改善されているように見える人、妊娠してから静脈瘤と脱腸と下肢の痛みを発症した妊婦さんです。 

下肢静脈瘤と皮下筋膜の関係

骨と筋肉と筋膜と皮膚の構造イメージ

 筋肉など軟部組織と骨格の構造を簡単に申しますと、一番表層に皮膚があり、その下層に筋膜(皮下筋膜)があって、その下層に浅層筋や深層筋に分類される筋肉があります。そして、一番奥に骨膜にくるまれた骨があります。
 下肢静脈瘤で問題になる静脈は大伏在静脈や小伏在静脈など皮膚と皮下筋膜との間を走行している表層の静脈です。静脈というのは血管ですから、下肢静脈瘤は直接的には血管自体の問題です。しかし、その血管が皮膚と皮下筋膜の間に存在しているということは、静脈と皮下筋膜とには深い関係が存在すると、整体的にはそう考えます。

下肢静脈瘤に関係する主な静脈

 骨格と筋肉と皮下筋膜の関係を簡単に説明することは難しいのですが、一つの在り方として、皮下筋膜は筋肉の働きを支えるサポーター的な役割をしています。
 例えば足首を捻ってしまい軽い捻挫状態になったとします。この状態では足首を安定させる靱帯が伸びてしまったために足首がグラグラして不安定になります。すると足首周辺の筋肉が上手く機能しなくなりますので、普通に歩くことが困難になってしまったり、痛みを感じるようになってしまったりします。こんな時にはテーピングをしたり、サポーターをして足首の不安定な状態を補助することがありますが、それによって足の筋肉が働ける状態になって歩くことができるようになります。つまりこの時使用するサポーターなどは筋肉の働きを手助けする役割をしているわけです。
 皮下筋膜はこのサポーターのような働きもしています。皮下筋膜がしっかりしていることで、内部の筋肉と骨はその位置を正しく保持することができますし、筋肉は持てる力を発揮することができて動作をスムーズに行うことができるようになります。
筋膜がゆるんで筋肉が緊張

 太股の筋肉は骨盤から大腿骨に繋がっています。そして骨盤と大腿骨と筋肉全体を覆うように皮下筋膜がサポーター的な働きをしていますが、この皮下筋膜がゆるゆるな状態になってしまいますと筋肉の働きをサポートすることができなくなります。すると筋肉は通常よりも収縮力を強めて骨格を支えなければならなくなります。それは太股筋肉の慢性的な緊張状態を招き、慢性的に痛みを伴う状態を招きます。立っているだけで太股が辛くなったりします。
 ふくらはぎの皮下筋膜がゆるんだ状態では、椅子に座っているだけでふくらはぎが辛くなります。重力から解放される寝た状態が、唯一辛さを感じない状態になるかもしれません。

 下肢静脈瘤の人に対する対処法として着圧の靴下やサポーターを履く方法がありますが、その効果の一つは、ゆるんで働きの悪くなってしまった皮下筋膜に替わって筋肉と骨格を支える役割だと思います。“着圧”は血行を悪くするという意味で“就寝時は止めたほうがいい”と私はアドバイスしていますが、皮下筋膜の働きを補うという意味で昼間の活動時間帯は履いた方が良いと私も思います。

 もし、素足でいるよりも靴下やストッキングやスパッツを履いている方が“落ち着く”という感じになるのであれば、それは皮膚や皮下筋膜がゆるんでいて働きが悪いのかもしれません。今は下肢静脈瘤とは無縁だと考えているかもしれませんが、皮膚や皮下筋膜のゆるんだ状態が長引きますとやがて下肢静脈瘤になる可能性は高いと思います。
 もし、太股やふくらはぎを何かで軽く締め付けた状態の方が解放されている状態よりも“安心する”と感じるのであればそれは悪い兆候だと考えられます。対処することをおすすめします。
 (但し、冷え対策のために温めるものを履いている方が心地良い、というのは別です)

皮下筋膜の調整
 整体の一つの手法として「筋膜リリース」があります。これは筋膜を直接操作してからだを整えるという整体法のようです。私は今回「筋膜」について取り上げていますが、それは筋膜リリース法とは全く関係がありません。「筋膜」という耳慣れない専門用語が同じということで混同される人が多くいますが、内容は全く異なります。

 さて、筋膜には骨や筋線維や筋肉などを包む膜(骨膜、被包筋膜)と内臓を包む膜(胸膜、腹膜)と皮膚の下層にあって全身をシート状に包む膜(皮下筋膜)があります。下肢静脈瘤に関係するのは主に皮下筋膜になりますが、何故なら皮膚と皮下筋膜の間に下肢静脈瘤で問題になる静脈があるからです。(大伏在静脈・小伏在静脈など)
 ふくらはぎや足は心臓から遠く離れていることから、静脈の還りが悪くなりやすく停滞しやすいという見解があります。それも理由の一つかもしれませんが、静脈自体「自身の力では血液を流すことができない」という理由の方が影響力が強いと私は考えています。静脈の血管は、自ら収縮する力は非常に弱いので、血液を流すためには周囲の筋肉の働きを利用しなければなりません。それは“乳搾り(=ミルキングアクション)”のような原理です。下肢の静脈には血液の逆流を阻止するための弁があります。例えば歩くことによって足首が動き、ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩を繰り返しますが、すると静脈は圧迫されたり、解放されたりする状態になります。それはミルキングアクションの仕組みであり、それによって中の血液が前に前にと進むことになります。

ミルキングアクション

 ですから事務仕事などで一日何時間も座り続けているようですと、あるいはずっと立ちっぱなしの仕事ですと、このミルキングアクションがおろそかになりますので、次第にふくらはぎや足周辺に静脈血やリンパが溜まってしまい、夕方にはむくみのひどい状態になってしまったりします。
 さて、下肢静脈瘤の原因として「静脈弁が壊れてしまって血液の逆流が起こり血管が膨れあがる」という見解があるようですが、私は素直に同意できません。
 「果たして静脈弁が壊れるだろうか?」 「壊れる」のではなく「機能が低下している」ということなのではないかと私は思います。「機能が低下している」と考えるのであれば、「機能を向上させる」という考え方につながります。
 そして私は皮下筋膜の働きや状態が悪いことによって皮膚も含めて静脈の血管がゆるんでしまい、静脈弁が上手く機能できない状態になってしまうのではないかと考えています。
 筋膜は骨格や筋肉の位置を本来の状態に保持し、腹膜は内臓の位置を本来の状態に保持するために働いている申し上げましたが、同様に皮下筋膜は静脈の位置と在り方を本来の状態に保持する働きもしていると考えています。

 ここで、実際にどういう考え方と方法で皮下筋膜を整え静脈瘤に対応しているかについて説明します。

 まず50歳くらいの女性で少し前に静脈瘤の手術を受けた人です。この女性は子供の頃に右膝を脱臼した経験を持っています。膝から下が真横に曲がってしまうほどのひどい脱臼だったようです。小児喘息だった経験もあって常に呼吸状態が悪く、加えて右眼が光に弱く「涙目」で悩まされている状態です。下肢静脈瘤の症状も右脚の方が強かったとのことで、当然、右下肢の皮下筋膜はゆるんだ状態です。呼吸の悪い人に多いのですが、舌が下がっていて舌先は下の歯についている状態です。
 これらの症状や状態をもたらせている大元の原因は右膝脱臼により膝関節が少しずれていることです。ふくらはぎが太股の骨に対して外側やや後方にずれていて、さらに足首に向かってふくらはぎが内側に捻れています。この原因は子供の頃に経験した脱臼によるものですが、右膝内側の筋肉や靱帯が伸びてしまっているためにこのような状態になってしまったと私は考えています。そしてその損傷によるダメージがかなり強く、なかなか良い状態に回復してくれません。
 この女性は大腿部の皮下筋膜もふくらはぎの皮下筋膜もゆるんだ状態ですが、膝関節の状態を良い感じに戻しますと、つまり、ふくらはぎの骨を内側やや前方に移動して足首近くを外側に少し捻りますと、皮下筋膜の状態はすっかり改善しますし、舌も上がって呼吸と喋りが良くなり、涙目も改善します。ですから、なんとか膝関節が良い状態になるように、ダメージの残っているところを施術し続けるようにしています。最初に来店されてからそろそろ1年になりますが、今は静脈瘤の兆候は全くありません。来店当初は着圧靴下なども使用していましたが、今は使用しなくても大丈夫の状態です。

 次に30歳代で妊娠中の女性です。妊娠6ヶ月で来店されましたが、当初の目的は「脱腸をどうにかしたい」というものでした。左の鼡径部の辺りが脱腸状態でしたが、左ふくらはぎの内側と左足首の内側はかなり激しい静脈瘤を発症しています。その他には噛みしめる癖と手を握ってしまう癖が強く、毎朝起きると強い頭痛に悩まされるという症状を持っていました。妊娠中でお腹も大きくなっていますので、揉みほぐすなどの手技はできませんから、調整だけで何とかしなければなりません。
 脱腸状態(本当に脱腸だったかどうかは知りません)の主な原因は左側大内転筋がゆるんでいたことでした。大内転筋はお尻のすぐ下にある太股内側の筋肉ですが、この筋肉の働きが悪いことにで左鼡径部が下がってしまい、大きくなったお腹が鼡径部から少しはみ出るような状態になっていました。ですから立ち上がるとお腹の一部が左鼡径部のところではみ出てしまい、不快さと痛みを感じていたのだと思います。しかしながら大内転筋のゆるんだ状態は下肢内側筋膜(皮下筋膜)のゆるんだ状態に繋がりますので、ふくらはぎ内側と足首内側の静脈瘤の原因の一つにもなります。

 ところで、妊娠は下肢静脈瘤を発症するきっかけになりやすいとのことですが、ベースには“皮下筋膜のゆるみ”があると思います。妊娠によって、それまで自分のためだけにあった血液は胎児を育てるためにも供給されなければならないので、当然全身の血液循環は変わります。もし妊娠が下肢静脈瘤の発症原因であるとするならば、左右両側に下肢静脈瘤の兆候が現れると思いますが、この女性は左下肢だけですので、妊娠が原因であるとは私は考えにくいところです。元々左下肢の血液循環に問題があって、それが妊娠によって静脈瘤という形で表に現れたと考えるのであれば、やはり改善すべきは“妊娠による影響”よりも“元々の血液循環”の方だと思います。
 さて、この方は現在妊娠中で休んでいますが、弓道をやっています。そこで弓道の練習におけるいろいろを尋ねてみました。すると左手が上手く使えないこと、左腕を挙げるのが辛いことなどの訴えがありました。その他には子供の頃(2歳の時)、前歯の左側を強打したことがあることなども聞きました。そこで、左肩から左手にかけて観察していきますと左肘に問題があることがわかりました。さらに左肘の問題で左手が上手く使えない状態なのに弓を操作しなければならないので、左手を不自然に使っていたこともわかりました。そしてこれらの問題は左膝の不安定さにつながり、問題の左大内転筋および左下肢内側筋膜のゆるみの原因となっていました。
 さらに2歳の時の前歯を強打したことによる影響もずっと残っていて、それが噛みしめてしまう原因の一つになっていて頭痛をもたらし、その他にも影響をもたらしていることがわかりました。
 これまで8回ほど来店していただきましたが、脱腸、噛みしめ、頭痛の問題はすっかり解消し、ふくらはぎの静脈瘤も良くなり、今は足首内側の静脈瘤が残っているだけの状態になっています。それも見た目には静脈瘤が残っているものの、痛みもだるさもほとんど感じない状態になったとのことです。
 妊娠するかどうかは別にして、女性は男性より(妊娠に備えるためか)複雑な構造と仕組みになっていると思います。ですから人生のいろいろで、影響を受けることも男性より多いと思います。ですからくれぐれも「からだを大切にして欲しいなぁ」と思います。余計なことですが、安易に美容整形の手術や、抜歯を伴う歯列矯正や、小顔矯正などに惹かれていって欲しくないと私は個人的に思います。

 3人目の両下肢が静脈瘤状態の後期高齢者の女性は、その他にいろいろな症状を持っています。今、最も悩んでいる症状は坐骨神経痛になりやすく、脚が棒のようになってしまい満足に歩くことができないことです。さらに立ち上がるとふらついてしまい、さらに歩きづらくなってしまうことも悩みです。
 ですから下肢静脈瘤については時々話題にのぼる程度ですが、両ふくらはぎとも血管がかなり浮き出ていますので、気になっていて「手術しなければいけないのかしら」と仰います。
 例えば腕と手について、子供や若い人たちと、高齢者の、見た目の違いを観察しますと、若い人たちの血管(静脈)はほとんど浮いていませんので、素肌が白ければブルーの血管が透けて見える感じです。夏など陽に焼けますと血管がすっかり隠れてしまうと思います。ところが高齢者では、手の甲の血管は太くて浮き上がり、腕の血管も太くなっていて浮き上がっている人が多くいます。
 この違いは、私は好きな言葉ではありませんが、「加齢によるもの」「老化現象」と言わざるを得ないのかもしれません。子供達や若い人たちの筋肉や筋膜は、それ自体がやはり若々しく締まっていますので、静脈の状態も同様であると考えることできます。ですから血管は“浮かない”のでしょう。一方、加齢に伴って筋肉も筋膜もゆるみやすくなりますが、血管も同様で、血管を形成している筋層がゆるんでしまうために弾力性が乏しくなり太くなってしまうと考えられます。さらに周囲の皮下筋膜や皮膚もゆるんでしまうので、「太くなった血管が浮いてしまう」という現象となり、「やけに血管が目立つ=老化」という事態になってしまいます。
 ふくらはぎも同様だと考えることができます。もし、ふくらはぎの血管が紫色であるならば、それは対処しなければならないと思いますが、そうでないのであれば、血管が太く浮き上がっている状態だったとしても、あまり気にされない方が良いのではないかと思います。血管がゆるんで太くなったことから静脈弁が機能できない場所がいくつかでき、そこの色が濃いブルーや多少紫色になるかもしれませんが、それは頻繁に擦ったりすることで血を流すなどして対処することができます。その程度が良いのではないかと思います。
 この女性の場合、ふくらはぎ全体の血管が太く浮き上がっていますので、手術しようにも「どの血管を焼いたり抜いたりすればいいのだろうか?」という問題と、からだに手術という負担を掛けてまで対処すべきことなのか、という疑問が浮かび上がってきます。私は手術による2次的影響のことを考えてしまいます。
 それよりも、今は坐骨神経痛を解消することを優先して、たくさん歩けるようになること、歩くことによってふくらはぎや足首の筋肉をたくさん使えば、ミルキングアクションによって静脈の流れも良くなり、皮下筋膜もしっかりするので静脈瘤のこともさほど気にならなくなるのではないかと思っています。

 下肢静脈瘤は外見的な憂鬱さをもたらすかもしれませんが、症状が進みますとだるさや痛みを感じることもあるようです。皮下筋膜がゆるむことで骨格を支える力が弱まりますので、筋肉はそれを補うために常に収縮した状態になります。つまり慢性的なこわばり状態、慢性的な緊張状態です。すると何かに触れただけで強い痛みを感じたり、立っていたり、座っていたりするだけで辛くなるので、ついつい横になってしまい、家庭内で「なまけもの」のような目で見られると、憂鬱になってしまう人もいます。
 また、お医者さんの指導に真面目に従って、寝るときも含めて常に着圧をつけていることで血行が悪くなっている人もいました。呼吸は肺だけで行っているのではありません。ふくらはぎや足先の細胞も呼吸を行っています。それが常に圧迫を受けているのであれば満足な呼吸ができない状態になっています。すると自律神経の働きにも影響が現れて眠りが浅くなったり、便通が悪くなったりするかもしれません。せめて夜、活動していないときだけでも着圧は外していただきたいと、そう思います。それが理にかなっていることだと思います。


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 先日、朝、目が覚めますと、左頬から左顎にかけて腫れと痛みを感じ、左下の歯列が前に出ていて、思わず舌を噛んでしまう状況になっていました。その他に、鼻が下がり、おでこも下がっていました。
 私自身としまして「この状態は久々だなぁ」と思いました。暑さで寝苦しく「寝方が悪かったのかなぁ?」、それとも「体調不良になったのかなぁ?」などと半分まどろみ状態の中で考えていました。

 似たような症状を訴えるお客さんはしばしば来店されますが、下の歯列が前に出てしまい、上歯と下歯が当たってしまう状況はやはり不快です。
 「どうしようかなぁ」などと思いながらもベッドの上で自分のからだをあちらこちら触りながら、起床(6時頃)するまでの間(30分間くらい)にからだを整えようと試みました。

 まず、舌を噛みやすい状態を「いつもより舌が下がってしまっている」と感じました。私の舌の定位置(ホームポジション)は通常、舌先が上の歯と歯茎の境辺りにあって、さらに舌の上面前方が口蓋(口の中の天井)を軽く上に押し上げているような感じにあります。ところが、舌の位置が全体に下がってしまったので、舌先が上の歯と下の歯の間くらいになってしまい、歯の間に挟まりやすい状況になっていました。
 そして同時に、左顎の状態がおかしくなっていて、左顎が前方に捻れ出ている感じになっていました。「この状態で、さらに噛みしめていたので左頬から顎に掛けて腫れぼったくなってしまったのかな」と分析しました。

「舌が下がって(沈んで)、顎が捻れて、噛みしめていた。」

「どれが大元の犯人だろうか?」

 そんなことを思いながら、胸を触り、お腹を触り、股関節をさわり‥‥後頭部や額を触っていくうちに、「どうも胸が怪しい」‥‥という結論になりました。
 肋間筋(内肋間筋)がこわばってしまい、胸が閉じて、更に下がっていました。
 「どうして肋間筋がこわばっているのだろう?」と思いながら、前日の仕事内容を思い返してみました。
 「そういえば、(筋肉の)硬い人がいて、揉みほぐすのにずいぶん力を使ったな‥‥」
 「きっと手が原因だ。親指と人差し指を使いすぎてバランスが悪くなってしまったのかもしれない」と思いました。
 それで左手の「合谷(ごうこく)」というツボ周辺を指圧しますと、コリコリに硬くなっていました。
 その後、しばらくの間(5分くらい)合谷やその周辺を指圧し続けました。すると沈んでいた舌が少しずつ上に持ち上がってきます。前に突出していた左の歯列も後退していきます。噛み合わせが改善されていきました。
 そして、右手も同じところを指圧し続けてみましたが、するとすっかり舌も顎も良い状態に戻り、胸の状態も良くなって、下がっていた鼻や額も良い状態になりました。
 あれやこれやと20分以上かかったと思いますが、いつも通りの状態で起床することができました。

気になる舌の位置
 顎の開け方と顔の下がりの関係、舌のポジションとしゃべり方や首肩のコリとの関係などについて、過去に投稿させていただきましたが、その後も「舌の状態は気になる」という思いを持ち続けながら施術を行っています。
 そして一つの方向性として「舌の下がった状態は改善が必要で、舌が上がるようにからだを整える必要がある。」という結論的なものを感じています。

舌の位置2

 以前にも記しましたが、顔が下がるのを防ぐために舌が口蓋(口の中の天井)を軽く押し上げる働きをします。そのためには舌の定位置が上がった状態でなければなりません。舌が下がった状態では、ほぼ間違いなく鼻や額が下がった状態になってしまいますので、顔が重力に負けた状態になりやすいと言えます。
 女性にとっては気になることですが、加齢とともに筋・筋膜の働きが弱くなりますので、重力に負けた状態になり、頬が垂れ、目尻も口角も下がり、からだの肉にしまりがなくなってしまう‥‥という自然現象があります。自然の流れなので「仕方がない」ことではあるかもしれません。ところが、例外的な人がいるのも事実です。加齢による変化が少ない人です。
 エステなどに頻繁に通って素肌の手入れをしたり、あるいはジムなどでトレーニングをして筋肉を鍛え、柔軟性を維持して引き締まった状態を維持する努力をしている人もいます。ところが、そんなこととは全く無縁な生活を送っているのに重力に負けない状態を保っている人がいます。その理由はどこにあるのでしょう、気になるところです。

上昇する力
 ところで、鳥は地球の重力に逆らって空に昇っていきます。最初は羽を羽ばたかせて上昇するかもしれませんが、上昇気流に乗ってしまえば省エネでもどんどん上昇していきます。
 “上昇気流”は自然現象ですから、自然の中に重力に逆らう力と原理が存在していることがわかります。
 そしてもう一つ、“毛細管現象”という重力に逆らう自然現象があります。「細い管の中の液体は上昇していく」というのが毛細管現象の意味です。
 植物は地中に根を張って養分や水分を吸収しているわけですが、ポンプで吸い上げるような動力を使っているわけではありません。根という細い管の中に水分が入りますと、それは毛細管現象の原理によって根の中を上昇していきます。そしてその水分は地上を越えてどんどん上昇していき、高いところにある葉に届きます。葉は地中から届いた水分と空気中の炭酸ガス(二酸化炭素)と太陽の光を利用して光合成を行い、自らを養う栄養と大気中に放出する酸素を生み出します。
 私たちのからだの中にも「細い管」である毛細血管が隅々まで隈無く存在しています。ですから毛細管現象が体内で起こっています。
 頭の天辺まで毛細血管は張り巡らされていますので、血液は確実に天辺まで登っていきますが、それは心臓のポンプ力(=血圧)によるものではありません。それは毛細管現象の原理によって届いています。ですから、私たちのからだの中にも重力に逆らって“上昇する力”が内在していることがわかります。

 また、自然界にはまったく重力を無視して、上昇しかしない物質があります。それは“火”です。ロウソクの炎は下に向かうことも、横に向かうこともありません。無風状態であれば、ただただ真上にだけ向かいます。
 ここからはイメージ的な話になりますが‥‥もし私たちのからだの細胞の一つ一つの中に火の原理がたくさんあれば、私たちの細胞は重力に負けることなく存在することができるという理屈になります。
 火は燃やすことによって生じますが、私たちのすべての細胞の中にはミトコンドリアがいて、酸素を使って燃焼の仕事を行っています。ミトコンドリアは私たちが呼吸によって取り入れた酸素を燃やして(酸化反応)有機物(糖質や脂質)から細胞の活動に必要なエネルギー物質をつくり出しています。ですから、常に酸素を必要としている私たちの細胞は、常に燃焼し続けていることになり、常に火の原理を生み出していると考えることもできます。
 大人になって、高齢になりますと食が細くなりますが、それは、もうそれほどエネルギーを必要としないという意味でもあります。育ち盛りの子供達や若い人たちは食べてもすぐにお腹が空き、いくらでも食べられそうな感じですが、それは新陳代謝を活発にして成長しなければならないため、多くのエネルギーを必要としているからです。ミトコンドリアが多くのエネルギー物質を生み出すために酸素と水とたくさんの有機物を必要としているからです。
 ですから、子供達は大人や高齢者に比べて体内に火の原理を、つまり上昇する力をたくさん持っていることになります。それが頬や皮膚や筋肉が重力に負けない理由であり、ピチピチと締まった細胞を維持している理由であると考えることもできるのではないでしょうか。

舌の位置と上昇する力の関係
 さて、「顔が下がらないようにするためには、舌の位置が下がらないようにする必要がある」という考え方をしますと、「それでは、舌の位置を良い状態に保つためにはどうすればよいのか?」という疑問がやってきます。

 まず、からだの歪みが原因で舌の位置が下がってしまうという現象があります。
 例えばお腹が冷えますと、腹筋がこわばってしまい、収縮したまま伸びない状態になってしまうことがあります。そうなりますと、胸を骨盤の方に引っ張り、喉を引き下げ、同時に舌も引き下げてしまいます。そして、鼻も、額も引き下げられて頭痛がしたりします。この場合の解決策は、腹筋を本来の状態に戻すことです。お腹を温めることは有効ですし、ストレッチして腹筋を伸ばすことも少しは効果があります。腹筋の状態が戻れば胸の位置も、喉の位置も、舌も、みな本来の状態に戻りますので問題は解決します。そして、このような状態、つまりからだの歪みにより顔が下がるなどのトラブルはよくあることです。
 次に、からだの歪みが原因ではなく、その他の要因で舌が下がってしまうことでは、東洋医学の経絡(けいらく)やツボといった“気の流れ”系のことでも考えられます。このたび私が手のツボである“合谷”やその周辺を指圧したことによって舌の位置が戻ったのは、この部類に入るかもしれません。
 その他には、心理的な問題といった精神的要因で舌の位置がおかしくなってしまうことも考えられます。舌は“喋り”に深く関係する器官ですから、「内向的で喋りが苦手」「会話がストレス」といったことは舌の状態に影響を与えます。無呼吸症候群やイビキがストレスの問題だと感じているのであれば、それもまた精神的な問題が舌の状態に影響していることになります。

 これまで私が舌の問題に対して施術してきた経験で申し上げれば、問題の大多数はからだの歪み、つまり筋・骨格系の問題が原因です。ところが、時々その他の問題が原因になっていたり、からだの歪みを修整しても問題がスッキリ解決しないこともあります。「なかなか舌の位置が戻らない」と感じながら手間取ることもありました。
 そんな時は、いろいろと考えを巡らすのですが、その中で浮かび上がってきた一つの思考が「上昇する力が不足しているのかもしれない」というものです。

 子供時代の体温は大人の今より高いものでした。それを単純に考えますと、大人よりも子供の方が「火の要素が強い」という見方ができます。
 食欲が旺盛で、たくさん食べて消化の火をたくさん燃やしていた若かった頃は、頬や口角が下がることも、ほうれい線が気になることもありませんでした。しかし、いつの頃からか「顔の感じが変わりはじめ、目元がスッキリしなくなり、ほうれい線が気になるようになった」という人も多いかもしれません。

 からだに内在する“上昇する力”が、顔やお腹や背中の肉が下がることを防いでいる、という考え方はほとんどないかもしれません。そして、そのバロメーターとなるのが舌の状態であると私は考えていますが、現在のところ、まだそれが「確定的である」と言える段階ではありません。
 しかし、例えば椅子に座った状態で骨盤を後方に寝かせるようにして背中を丸めますと、舌先は下の歯のところに落ちてしまい鼻も顔も下がりますが、骨盤を立たせて(仙骨の前傾)背筋が自然に伸びるようにしますと、舌の位置が上がって本来の場所に戻り、鼻と額(顔)も上がるという現象が起こります。
 私事ですが、骨盤を立たせた状態を継続しながらパソコン操作をするのは疲れますので、しばしば骨盤を寝かせて背中を丸めたくなります。しかし、しばらく背中を丸めた状態でいますと息苦しくなってしまいますので、ちょくちょく骨盤を立たせて舌が上がった状態になりたくなります。すると一気に空気が入ってきて呼吸が楽になり、気が休まります。
(但し、からだが歪んでいる人は、このような反応にならないかもしれません)

 このような現象をどう捉えたらよいでしょうか?

 私は、骨盤を立たせて座る姿勢によって“上昇する力”が発動するのかもしれないと考えています。つまり、言い換えますと、毛細血管における毛細管現象が活発化し、細胞内でのミトコンドリアの活動が活発化するようになるではないかと、そのように考えています。

“オトガイが梅干し”の人は舌が下がっている
 整体の仕事において呼吸を整えることは非常に重要なことです。呼吸が楽にならなければ、肩こりや腰痛が解消したところで、芯からリラックスすることはできないからです。ですから、施術中は常にお客さんの呼吸を観察し続けています。
 そして、呼吸が楽になった状態の目安として「オトガイ(顎先)から力が抜けているかどうか」を観察します。顔(下顎)の下がっている人は口を閉じるときにオトガイ周辺の筋肉を収縮させるようになります(オトガイが梅干しのようになる)。つまり、口や顎周辺に力を入れないと口が閉じられない状態です。
 ところが、舌の位置が上にある人は、力を使わずとも自然と口を閉じることができます。舌先あたりが口蓋を軽く押し上げているような状態になっていますと、その動きに乗じて自然と口が閉じる感じです。ですから、このような状態にある人のオトガイには梅干しはできません。
 舌が下がっていますと息苦しさを感じます。舌が上がりますと呼吸がリラックスします。ですから舌を上げて顔を上げ、呼吸を楽にするために、お客さんのオトガイを観察しながら、梅干しがなくなるように施術を行っているというのが現状です。
 ついついポカ~ンと口を開いてしまう人は、おそらく舌が下がっているのだと思います。その状態がみっともないと感じるので、無意識に力を使って口を結ぶような感じになっていると思います。

 実際のところ、下がっている舌が上がるように調整することは可能です。それほど難しいことではありません。ところが、日常生活を送り続ける中で、その良い状態を維持することは「難しいようだ」と私は感じています。
 生活習慣の中に舌を下げてしまう要素がある、あるいは体質的な要因で舌が下がってしまう、という弱点を克服するために生活の在り方を“矯正する”という方法もあると思います。
 そのように指導するトレーナーや医師やあるいは整体師がいると思います。ところが私は、そういうやり方はどうも合点がいきません。
 舌の上がった良い状態を維持できないのは、力が足りない、つまり内在する上昇する力のが不足していることが根本的な問題だと考えてしまいます。その力が充実している状態であれば、少々からだが歪んでいたり、過去の古傷がマイナスの影響力を持っていたとしても、それらの影響を悠々とはねのけて快適な状態を維持できるようになると考えています。

 “上昇する力”については、私の認識はまだまだ不確定な段階ですし、「○○すれば確実に上昇する力が増強する」というものを掴みきっているわけではありません。
 今はまだ途中の段階ですが、また進捗状況を報告させていただきたいと考えています。

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