現在50歳くらいの女性ですが、介護の仕事に従事しています。
仕事柄、慢性的な腰痛はありますが、「それよりも何よりも、頭から肩甲骨の下辺りまで痛くて! 痛くて!」ということで来店されました。
お腹側は胸郭の上半分くらいから、背中側は肩甲骨の下辺のあたりまで筋肉がガチガチの状態です。
一般的な施術の段取りで、首肩の揉みほぐしから施術を始めましたが、首も肩も頭部も筋肉が硬すぎて揉みほぐしでは歯も立たないと感じました。
症状や状態から察するに、慢性的な強い噛みしめが原因であると思いました。すると「子供の頃から歯ぎしりがひどくて、一緒にねている母親に『うるさくて眠れない』とよく言われた。」とおっしゃいました。
「いつくらいから痛みを感じていたのですか?」「中学生の頃はどうでした?」と尋ねますと「その頃からは慢性的に痛みを感じていた」とのことでした。
もう、九分九厘噛みしめによるものだと感じましたので、揉みほぐしはそこで止めて、噛みしめの原因探しと改善への施術へと変更しました。
過去の怪我について尋ねると、「数年前に右足の小指の先を骨折した。さらにその数年前に右足の2趾と3趾にヒビが入った」とのことでした。
しかし問題は、子供の頃から歯ぎしりをしていた、つまり、子供の頃のケガか何かの影響で噛みしめ癖になったわけですから、もっと昔の原因にたどり着かなければなりません。
一応、骨折した箇所のケアと、尾骨の打撲も2度ほどあったとのことですから、そのケアも行いました。
すると、ガチガチだったそしゃく筋はちょっと緩みまして、口をそこそこに開けられるようにはなりました。しかし、まだ噛みしめ状態は解消されていません。
このときの状態は、背中の肩甲骨周辺や首筋のガチガチはだいぶ緩和されていましたが、小胸筋がまだ強くこわばっていて胸の上部(第5肋骨付近まで)の大胸筋も強くこわばったままでした。
「お腹になにか問題があるのかな?」と感じましたので、「たとえば子供の頃、鉄棒にお股をぶつけたとか、恥骨周辺の打撲などはありませんでしたか? 思い出せませんか?」と尋ねました。
いつものことですが、すっかり忘れていたことも施術を進めているうちにポイントのところに近づきますと、記憶が蘇ってくることがあります。
「そういえば、記憶ははっきりしていないけど、うんと小さい頃、おもちゃの自動車の乗ろうとしてお股をぶつけて痛かったような‥‥」と思い出してくれました。
そこで、恥骨や鼡径部にポイント絞り施術を進めますと、次第に噛みしめ状態が緩んでいきました。
「私はそこを触ることはできないので、自分の手でお股(恥骨結合)に手を当ててみてください。」とやってもらいました。
この状況で、そしゃく筋を確認しますと、噛みしめ状態はほとんど解消されていました。「口を開けてみてください」とやってもらいますと、本人もびっくりするくらい口が大きく開きました。
そして、そしゃく筋と連動する首の筋肉(斜角筋や胸鎖乳突筋)もゆるみ、首肩から力も抜けて楽な状態になりました。
これまで何十年に渡って噛みしめていたために蓄積されていたコメカミ(側頭筋)の硬いコリは残っていますが、それはほぐすことで解消できます。
コメカミの強いこわばりは片頭痛を招きますし、しばしば片頭痛が酷くて吐いてしまうこともあったということです。
お股へのセルフケアをやり続けていただければ、噛みしめることもなくなりますので、コメカミのコリも次第に和らいでいくことでしょう。
ということに関連して、恥骨結合の大切さを少しお話させていただきます。
これは医学的にはおそらく証明されていないでしょうし、これからも証明されないことかもしれません。私の日々の施術経験で言いますと、つまり「私の真実」として発言しますと、恥骨結合が不安定な人は呼吸や内臓の働きが悪くなります。そして噛みしめ癖、口呼吸などの症状を呈するようになる可能性もあります。
ご自分で左右の恥骨をガバっと掴むように触ったときに痛みを感じる人、つまり鼠径靭帯がこわばっている人なのですが、そのような状態の人は恥骨結合が離れた状態になっています。
痛みの耐えながら、恥骨結合をしっかりくっつけるように操作しますと、急に横隔膜が動き出して呼吸が楽になったり、下がっていた胃や舌が上がってきたり、お腹が動き出すなどの変化が起きるかもしれません。
恥骨結合で恥骨を引き離そうとする力が掛かる状況には幾つかのパターンがあります。この女性の場合は、恥骨結合の打撲による損傷でしたが、恥骨に関係する筋肉の変調が原因になっていたり、恥骨結合は骨盤ですから、骨盤の何かの問題でそうなる場合もあります。そしてそんな中で、本当に多く見受けられるのが、鼡径靱帯がこわばって縮んでいるために恥骨結合を外側に引っ張っている状況です。
それは下肢や股関節の問題に絡みますが、鼡径部にも問題があることですから、下半身の血流やむくみの原因にもなります。



上記の女性は、頭痛が激しすぎるのでこれまでに何度もMRIでの診断も受けたそうです。そして、そのたびに医師の仰ることは一緒で「脳には異常はありません」でした、とのことです。
今回の話題は、実はかなりマニアックな内容です。
お読みいただいて有り難うございました。