ゆめとわのblog

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 ここからかなり遠くにお住まいのOさんが来店されました。2年ぶりくらいの来店です。以前は膝の不具合でしたが、今回は坐骨神経痛で、かなり症状が悪化した状態でした。当院までは新幹線を使って4時間近くかかるところにお住まいですので、症状がではじめた当初はお住まいの近くの接骨院や治療院に通われていたとのことです。ところが次第に症状が悪化していき、坐骨神経痛の痛みもかなりきつくなったということで来店されました。

 坐骨神経痛につきましては前回の投稿でも取り上げましたが、症状が軽いうちは「時々シビレを感じることがある」「皮膚を触ると何か表面に膜が一枚あるような感じの感覚異常を感じる」というものです。しかし症状が進みますと、シビレを感じる頻度も多くなり、更に症状が悪化しますとシビレが痛みに変わって、歩くことや座ることができなくなるほど辛くなります。

 Oさんの症状は「やや重症」ぐらいの段階でしたが、とても一度の施術で解決できる状態ではありませんでした。
 いろいろ経緯をうかがいますと、接骨院や治療院では電気を掛けたり、揉みほぐすことが主体の治療を行っていたようです。
 「坐骨神経痛なので、背中から殿部、そして太ももにかけてたくさん揉んでもらったけど良くならなくて‥‥」と仰っていましたが、今回も対処の間違いで症状が悪化してしまった事例でした。

 揉みほぐしたり電気を掛けたりすることで筋肉や筋膜はゆるみますが、それも程度が大切です。筋肉や筋膜が耐えられる範囲を超えてゆるめる施術ばかりを行いますと、やがてそれらは損傷状態になって本来の機能ができない状態になってしまいます。
 筋肉であれば収縮できない筋線維ができてしまい、筋膜であればブヨブヨと腑抜けの状態になり正常な機能が果たせない部分ができてしまいます。

 Oさんの場合、背中(腰部)~殿部を超えて太ももの裏側までの筋膜全般と、殿筋や腰部の筋線維に「ゆるみ過ぎの損傷状態」ができていました。
 この坐骨神経痛を改善するためには、これらの損傷状態を回復させる必要があります。
 おそらく最初は「単純な坐骨神経痛」だったと思います、ところが間違った対応を続けたことによって腰部から大腿部にかけての広い範囲で筋膜が機能低下状態になり、収縮することのできなくなってしまった筋線維ができてしまたのだと思います。この状態では骨盤や下半身を安定して保つことができませんので、からだは別の筋肉を強制的に収縮させて骨格を保つように働きます。そしてその収縮を強いられて硬くなった筋肉によって坐骨神経がさらに圧迫を受け、坐骨神経痛の症状が悪化してしまったのだと思われます。
 ですから、解決のための段取りは損傷状態にある筋線維や筋膜を本来の状態に戻し、坐骨神経を圧迫している筋肉の過緊張状態が自ずと解消されるように促すことになります。
 この時に、坐骨神経を圧迫している筋肉をゆるめようとして、直接筋肉を伸ばしたりほぐしたりするような対処を行いますと、さらに状況は悪化していくということになってしまうことでしょう。

損傷状態を回復するために

 ところで、損傷状態になっている筋肉や筋膜を回復させることは、硬くなっている筋肉をほぐすよりも何倍も労力と時間が要ります。
 私はしばしば「伸びきってしまったゴム」を例えに説明させていただいていますが、ゴムが疲労したり、負荷が掛かりすぎて伸びきった状態になりますと収縮力を失います。筋線維で言えば、収縮ができない状況です。そうなってしまいますとゴムの収縮力を回復させることは不可能になりますが、私たちの筋線維には再生力がありますので、許容範囲内の損傷であれば元の状態に戻すことができます。ただし、それは簡単にはいきません。

 このような場合、わたしは文字通り「手当て」の施術を行います。筋線維や筋膜に手指を当てていき、先ずは損傷部位を確認していきます。損傷部位は簡単に表現しますと「ヘニョッ」としています。いわゆる「ハリがない」状態ですが、エネルギーが足りない状態、力が乏しい状態と表現することもできます。
 その部位に丁寧に心を込めて手指を当て続けていますと、そのうちに血液が流れてくるのが感じられるようになり、そしてモコモコと反応し始め、やがてハリが戻ってきます。そうなるまで根気強く静かな施術を続けます。

 この手当ての施術は次のようなイメージです。
 たくさんの楽器で構成されているオーケストラの中で、楽器のいくつかが故障してしまい正確な音が出せない状態だったとします。(=筋線維のいくつかが収縮できない状態)
 この状態では音楽になりませんので、楽器を直す職人が一人やってきて、故障してしまった楽器の一つを調整しはじめます。やがてその楽器はチューニングされ正確な音を発することができるようになります。すると職人は次の故障した楽器を調整していきます。すると二つの楽器が直り、互いに音を発しては呼応し合うことができるようになります。しかしそれだけでは、まわりの楽器たちはまだやる気がでませんので、ただ見ているだけです。
 やがて職人が3つ、4つ、5つと楽器を直していきますと、それらは呼応し合い、きれいな和音を奏で始めるようになります。するとそれまではただ見ているだけだった楽器たちの中に自ずと共鳴して反応するものが現れはじめます。そして、その輪が次第に拡がりはじめます。音の共鳴がさらなる共鳴へと拡がり、やがてすべての楽器が音を奏でるようになります。するといつの間にか、一つの意志をもった音の躍動的なうねりを生じるようになります。全体がその流れの中で一体化します。オーケストラが本来のエネルギーを取り戻した状態です。

 このオーケストラの中の楽器の一つ一つが私たちの筋細胞です。損傷によって働けなくなった細胞を手当てすることで細胞の機能が戻ってきますが、そのような施術を幾つもの細胞に行います。すると、ある瞬間を境に休憩中だった周辺の細胞群がやる気を取り戻し、そしてヘニョッとしていた部分が様相を変えて活力を取り戻すようになります。時にそれはとても躍動的な動きとして私の手に感じられることがあります。
 皆さんから見ると何気なしに手を当てているだけに映るかもしれませんが、私はこのような想いを込めて手当ての施術を行っています。

 さて、Oさんに話しを戻しますが、Oさんの損傷部位はとても広い範囲でした。ですから手当ての施術にとても時間を要しました。
 結論を申しますと、120分の時間をとりましたが一回の施術では不十分な状態に終わってしまいました。しかしOさんは手応えを感じたようで、再び来店されたいと仰いました。翌日は仕事があるので一端で自宅に戻らなければならなけど、改めて予約する仰いました。そして、当日の夜に予約が入りまして、翌々日に再び来店されることになりました。施術時間は180分の希望でした。
 手当ての施術は静的なものですが、私自身は集中力をずっと継続しますのでかなり消耗します。「はたして180分も持つだろうか?」とも思いましたが、遠くから来てくださるOさんのことを思えば「頑張るしかない」と思い、体調を整えることを心がけました。

 翌々日に来店されましたが、やることは唯一つ「手当て」のみです。Oさんもずっと寝続けなければなりませんので、それなりに大変でしたが頑張って耐えてくれました。そして結局150分間の施術になりましたが、私はずっと神経を集中して、ひたすら細胞を触り続けていました。
 状態はかなり良くなったと思います。
 その数日後、Oさんから「軽いシビレ感は残っているものの、耐えがたい痛みは消えた」と
メールがありました。
 Oさんの坐骨神経痛はけっこう重症状態でしたから、2度の施術だけで「すべて解決」とはいきませんでしたが、「まあまあ合格」と自分自身評価しました。
 あれから3週間程度経っていますが何の連絡もありませんので、苦痛なく暮らされているのだろうと思います。

ゆるめるのは簡単

 私の属する業界は、傾向として、こわばってしまった筋肉、硬くなってしまった筋肉や筋膜をゆるめることを得意にしています。指圧、揉みほぐし、マッサージ、鍼、電気治療(低周波)、ストレッチ、体操など、手法もいろいろとあります。ですから専門家の多くは、ゆるめることを得手にしていると言えます。
 しかしながら反対にゆるんだ状態、疲弊した状態、損傷した状態を元の活力ある状態に戻すことはあまり得意ではないようです。

 ところが、痛みや不具合や不調の根本的な原因が、筋肉や筋膜や靱帯の損傷による場合もあります。ギックリ腰、寝違え、肉離れ、捻挫、骨折などはその類ですが、これらに対して「硬いところをゆるめる」ような対処法を用いることは間違いです。「損傷部位を回復させる」ための手法を用いなければなりません。

 疲労や疲弊部位の回復、損傷部位の回復するための方法は下記ぐらいしかなく、それほど多くはありません。そしてこれらは自然治癒力(自己治癒力)活躍を促す方法であるとも言えます。

  • 温める‥‥血行を良くして細胞の働きを活性化する。
  • じっくりとした運動‥‥筋線維などを意識的にじっくり、ゆっくり収縮させる運動をすることで、その働きを取り戻す。
  • 体内電気の流れを整える‥‥電気治療機なども含めて、やり方次第で筋線維の働きを回復させることができる。磁気治療(エレキバン)などもこの類。
  • 手当て‥‥上記で説明済み

 これらの手法は地味であり、効果が実感できるまでに時間がかかります。そして施術する側にも忍耐が要求されます。
 私の仕事は「接客業」でもありますし、お客さんは実感できる効果を期待しますので、施術者としてはその期待に応えたいと考えます。肩こりを揉みほぐすとか、手足のむくみを軽減したり、顔の歪みを整えたりするのは、その場ですぐに変化が実感できますので、私にとっては容易い部類の作業になります。ところが、損傷してしまった部位を修復する作業は地味であり、Oさんのように損傷範囲が広い場合は多時間で効果を実感できる状態にすることは困難です。幸いにしてOさんの場合は、120分とか、180分とかという長い時間を私に与えてくれましたので、効果を実感できる状態まで回復させることができました。もし、60分間の時間しか与えられなかったとしますと、「なんだか、変化がよくわからない」という感想になっていたと思います。

 赤ちゃんや幼児が転んだり、どこかに打撲したりして痛みを感じたときに、お母さんがすかさず手を当てて「痛いの、痛いの飛んでいけ!」とするのが、「手当て」のイメージだと思いますが、それは「気を紛らわす」など心理的な効果が高いといった見解があるかもしれません。
 しかし、心理的な側面(副交感神経)だけでなく、肉体的な側面でも確かに効果があります。私は長年の経験から断言します。
 「手当て」に似たようなものとして、「手かざし」「ヒーリング」「(外)気功」などもありますが、それらと「手当て」は違う手法であり、目的が異なります。
 昔のいわゆる「お医者さん」は診断と治療の手段として普通に手指を患部に当てていたと思います。機械化が高度に進んだ現代では「手当て」というのは迷信の類に受け取られるかもしれませんが、それこそ偏見であると私は思います。

 もっとたくさんの人に、手を当てることの効用を知っていただきたいと私は思っています。お腹に手を当てれば頭痛が消えるかもしれませんし、打撲やムチウチで損傷した後頭部に手を当てるケアを続けることで歩き方が良くなったり、腰の痛みが消えたりすることが起こります。
 私はセルフケアとして、手当てが必要だと思う人には、その方法を教えています。ところが皆さん半信半疑で、ほとんどの人が三日坊主状態です。
 湿布をペタペタ貼ったり、エレキバンを幾つも貼ったりすることは毎日欠かさず行うのに、手当てのケアは行ってくれません。とても残念に思います。

 「手当て」は確かに原始的な療法です。でも、私たちが世の中に出現したときから現在まで途切れることのなく続けられている療法です。確かな療法であるからこそ、これまでも続いて来ましたし、この先も永遠に続く療法です。
 もっともっと活用していただきたいと思っています。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 今年の夏も大変暑くて、マスクのことなどもあり、外出がとても辛い状況になっています。
 今回は、最近感じたり思ったりしていることについて書いてみました。文章ばかりの内容です。
 さて、毎年のことなのですが、この時期になりますと「お腹の冷え」が根本的な原因になっている症状の人がしばしば来店されます。

 エアコンをかけっぱなしにしていることで寝冷えをしている。
 ビールなど冷たいものをガブガブ飲んでお腹を冷やしている。
 アイスクリームを食べ過ぎている。
 シャワーだけで済ませ、湯船に浸からない。

 だいたい以上がこの時期にお腹を冷やしてしまう主な原因です。
 室内での仕事とは言え、私も肉体労働者ですから、汗をかきながら仕事をしています。ですから皆さんの気持ちは良くわかります。しかし、からだのことを思いますと、お腹の冷えには十分に注意していただきたいと思っています。

突然の腰痛はビールの飲み過ぎが原因?

 前回の投稿で症例を紹介しましたSさんは坐骨神経痛持ちですが、施術後3日ほど経って電話がかかってきました。今度は腰が痛くなってベッドから起き上がることも歩くこともままならない状況になってしまったとのことでした。
 「施術を間違えたのかな?」と私は一瞬思いましたが、「そんなはずはないのに‥‥」との複雑な思いを抱きながら、とりあえず来店していただきました。
 症状を見ますと、坐骨神経痛ではなく、急性腰痛(ギックリ腰などのような)です。痛みがあるのは坐骨神経痛と同じ左腰部と殿部ですが、股関節を外に開く動作が全くできません。そして経過など話を伺ったところでは、ギックリ腰でもないようです。
 一通り施術を行っていきましたが、その過程で腹筋の左側が非常に硬くこわばっているのを発見しました。その腹筋は内腹斜筋(ないふくしゃきん)と言います。
 「腹筋が硬くて伸びないので腰痛になっているようです。原因としてはお腹の冷えが考えられますが、心当たりはありますか?」と尋ねました。
 重ねて「寝るときにエアコンは掛けっぱなしですか?」とも尋ねましたが、案の上、それは当たっていました。
 「そういえば、おとといの晩が異常に暑くて‥‥、普段より設定温度を下げてエアコンを朝まで掛けていたし‥‥、そういえばビールを1リットル、ガブガブ飲んでしまったけど‥‥」と仰いました。
 「おそらく、それが原因ですね。お腹が冷えて腹筋が硬くなってしまったので、腰や股関節が動かせなくなったしまったのだと思います。」と申し上げました。
 そして、「お腹の冷えを和らげる施術をしますけど、かなり痛いですが、我慢してください」と申し上げて、足裏の小腸反射区を指圧しました。
 お腹の冷えていない人にとっては、心地良く感じる刺激なのですが、お腹が冷えている人にとっては涙が出るほど痛みを感じます。そんな刺激を5分以上続けていましたが、すると小腸の働きが良くなるのか、お腹が温まりだします。(こちらを参照してください。)

 結局、この足裏反射区への指圧が決め手になって、硬くこわばっていた内腹斜筋とそれに関連する股関節周辺の筋肉はゆるんでリラックスした状態になりました。そして、それまで痛くてできなかった腰部を捻る運動もできるようになりました。
 まだ完全にお腹の冷えが解消された訳ではありませんので、多少の不具合は残っていましたが、自力(手を使うことなく腹筋の力だけで)でベッドから起き上がることもできるようになりましたし、歩行しても痛みを感じることはありませんでした。
 「結局、お腹の冷えが根本的な原因ですから、今日はスーパー銭湯でも行って、よくからだを温めてください。そして、エアコンを掛けたまま寝るのなら腹巻きをしてお腹を冷やさないようにしてください。」と申し上げました。
 そして、次の日にSさんから電話が入り、すっかり状態は良くなったと報告してくれました。

 私たちのからだには不思議がいっぱい詰まっています。
 お腹の冷えが取れていきますと、からだが何かを許すような感じで、その周辺がゆるみだします。腹筋もゆるみ、股関節周りの筋肉もゆるみだしますが、するとそれまでできなかった動作が行えるようになります。
 筋肉が硬くなっているからと、一生懸命揉みほぐしてみても、筋肉がその行為(施術)を要求していないときは、努力は単なる徒労に終わってしまい効果はほとんど現れません。ところが今回のように、腰痛とは直接関係ないように思える「お腹の冷え」を取り除くだけで、筋肉はすっかり様相を変えて異常な状態が解消されることがあります。そして私は職業柄、そのような場面をたくさん経験して知っています。

シャワーばかりでなく、ときどき湯船に浸かりましょう

 私は室内での仕事ですから、エアコンの中で働き続けています。若い人には解らないかもしれませんが、エアコンの風はやはり自然の風とは違います。どんなに軟らかい設定をしようとも、エアコンの冷気はからだに負荷を掛けるようです。
 ここまで酷暑になりますと熱中症の心配もありますので、母親(82歳)には、昼間はエアコンを使うように言っていますが、エアコンの冷気が好きではないようで、あまり使っていないようです。それはおそらく、高齢の女性はエアコンの冷気をかなりの負担に感じるからなのではないかと思います。

 このように、知らず知らずのうちにからだの負担となっているエアコンの冷気は、からだに溜め続けてはいけないと私は考えています。
 「冷気が蓄積している」という感覚が理解できる人がどれだけいるか知りませんが、食欲が減退したり、膝の調子がおかしくなったり、体表は暑いのにからだの芯は冷たいと感じるのであれば、それは冷気の蓄積による影響かもしれません。
 体内に蓄積された冷気は外に出されなければなりません。そして日本に住む私たちにとって、その最も簡単な方法はちゃんと湯船に浸かることです。そうしてからだの芯が温まるようにすることです。私は必ず湯船に浸かるようにしています。

 「くそ暑いのに、湯船に浸かることなどできない!」という意見をよく聞きます。その気持ちはわかります。しかし、一日の大半をエアコンの冷気の中にいて、あるいは寝るときもエアコンの冷気の中にいるようでは、冷気は間違いなくからだの中に蓄積されていくと思います。
 そしてある時、ちょっと腕を伸ばした瞬間に背中の筋肉をピリッと損傷してしまったり、ちょっとした瞬間にギックリ腰になってしまったり、あるいは朝方になる毎朝のようにとこむら返りで苦しんだりするようになってしまうかもしれません。
 また生理現象にも影響が現れ、食欲が減退したり、下痢や便秘になってしまうかもしれません。

 仕事中も、通勤の時もエアコンの風の中にいて、帰宅後も同様で‥‥、つまり終日エアコンの風の中にいる私たちは、一度からだの状態をリセットする意味でも、あるいは冷気の中で頑張り続けている細胞たちに休憩時間を与える意味でも、ゆっくりと湯船に浸かって冷気をからだから放出していただきたいと思っています。
 そして私の経験で申せば、「冷えたからだを温める」という意識よりも「体内の冷気を放出してからだをリセットし、細胞を休ませる」という意識で湯船に浸かることをおすすめします。

 この時期もそうですが、この先秋の気配が感じられる頃になって、それでも真夏と同じような習慣でエアコンをかけたまま寝てしまいますと、「寝冷え」状態になる危険性が増します。そして、その頃になりますと、寝違えやギックリ腰で来店される人が多くなりますが、それは「冷え」と密接に関係していると考えられます。
 秋が近づきますと、朝方の気温は下がります。くれぐれも注意してください。

 今もそうですが、エアコンをかけたまま寝るのであれば、特に女性は腹巻きをされるようにしていただきたいと思います。
 「女の子は、お腹を冷やしちゃいけないよ!」
 昔の「おばあちゃん」たちは若い女子に対して必ず口にしていたものです。
 マドンナが「ヘソだしルック」を流行らせてから、お腹を冷やす女子たちが増えたのかもしれないなどと思いを巡らせることがあります。そして、それにともなって若い女性にも子宮筋腫や内膜症など婦人科系の病気が増えたのかもしれないなどと思ったりしています。

酵素の働きと体温

 私たちのからだには魔法使いがたくさんいます。その魔法使いたちを科学の言葉では酵素と呼んでいます。タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)、脂肪分解酵素(リパーゼ)、糖質分解酵素(アミラーゼなど)は消化酵素として有名ですが、私たちの体内には非常にたくさんの酵素がいて、細胞内外で行われるあらゆる化学反応で活躍しています。
 タンパク質分解酵素系は私たちが摂取したタンパク質を分解してペプチドやアミノ酸に分解していくわけですが、反対にアミノ酸を合成してホルモンにしたり、タンパク質にしたりする働きをする酵素もあります。
 つまり酵素はAという物質を別のBという物質に分解したり合成したりする働きをしていますが、視方を変えますと、ある物質を使って別の物質を生み出す働きをしているということです。シンデレラの物語では、魔法使いによってカボチャが馬車に変わりましたが、酵素も体内で同じような働きをしています。
 酵素がなければ、私たちが食べる肉や魚のタンパク質は、歯で細かく砕くことはできても分解できませんので、消化・吸収・栄養といった生命現象を行うことができません。細胞の新陳代謝で細胞分裂を行うためにDNAが複製されますが、そこでも酵素が働いています。ですから、私たちの生命現象は酵素の働きに支えられていると言っても過言ではありません。
 そして、体内の酵素が順調に働くためには37℃という体温が必要です。それゆえに私たちのからだは自律神経を働かせて体内の深部温度を常に37℃に保つようにしています。外気が冷たければ、血液を外気から遠ざけるように、つまり皮膚表面への血液供給を制限して体温が下がるのを阻止しています。外気温が高ければ、汗をたくさん出して熱を放出しながら体内温度が高くならないようにしています。それは酵素の働きを護るためです。酵素さえしっかり仕事できる状態になっていれば生命現象は維持できます。
 凍死は、からだが凍って死んでしまうことではなく、体内温度が下がって酵素が働けなくなり生命現象を維持することができなくなり死んでしまうことです。
 熱中症は、体内温度が高くなりすぎて酵素の働きに支障が生じ、正常な生命現象ができなくなってしまう症状です。

 私たちは基本的に、自分のからだに対して自己責任があります。自分の健康は自分で維持増進しなければなりません。医者任せ、薬任せで、自己責任を放棄しているように見える人も少なからずいます。
 いろいろな健康情報が溢れていますし、サプリメントの情報も溢れています。情報収集は大切なことだと私も思います。しかしながら、今回話題にしている「からだを冷やさない」という大原則をないがしろにしながら、その他のことに夢中になったとしても、それは「どこかが違う」という結果に行き着くしかないのではないかと思います。

 哺乳類である私たちは、咀嚼(そしゃく)をたくさんしましょう。そしゃく筋を使うことが私たちの原動力に直接結びついています。
 そして脊椎動物でもある私たちは歩きましょう。魚が海の中を游ぐように、四足の動物が食物を求めて移動し続けるように、それによって体内の血液やリンパの循環が良い状態に保たれます。
 「よく噛むこと」「よく歩くこと」。それは面倒に感じるかもしれませんが、私たちの底力を養い健康を維持するための基本です。
 そして、トラブルを起こさないためにも、からだを冷やさないように工夫してください。

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 下半身に痛みや不快感をもたらす有名な症状に坐骨神経痛があります。
 症状が非常に軽い状態ですと、太ももやふくらはぎなどが「だるい」と感じたり、「むくんでいるのかなぁ」と感じたり、あるいは皮膚の上に膜が一枚あるような皮膚感覚で違和感や不快感を感じる状態になります。
 それよりも症状が重くなりますと、シビレを感じたらり、特定の動作や姿勢によって耐えがたい重だるさや痛みを感じるようになります。座り続けていられない、腰を伸ばして立つことができない、痛くて歩けない、などもこの中に入ります。(腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症なども坐骨神経痛を発症します)
 そして、さらに症状が悪化しますと、まったく下半身を動かすことができなくなったり、楽な姿勢が見つからないような状態になります。たまらず整形外科を受診して神経ブロック注射などの処置をしなければしのげない状態になりますが、その苦痛は大変なものです。

 さて、坐骨神経痛を発症してしまう原因はいろいろとありますが、今回は殿部の筋肉の問題が原因になっていることについて取り上げます。

梨状筋(りじょうきん)と坐骨神経痛

 その原因が腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症や神経の病変などの場合を除きますと、坐骨神経痛の症状があるときに最も注目すべきポイントは梨状筋になります。
 梨状筋はちょうどお尻の真ん中辺りの最も深いところにあります。
 仙骨と大腿骨を繋いでいる筋肉ですが、その直下を通って、人によっては梨状筋の中を貫通するようにして太い坐骨神経が骨盤の内部から表に出てきます。

 ですから、梨状筋が強くこわばって硬くなり太くなりますと坐骨神経を圧迫する状況になります。それによって坐骨神経の神経伝達に支障が生じたり、神経管が不具合を呈していろいろな神経異常症状を現すようになりますが、坐骨神経痛の多くはこのような仕組みよって発症していると思われます。

 坐骨神経は太股の後側を膝関節の手前まで真っ直ぐに下り、膝関節の手前で二手に分かれます。一方(脛骨神経)はそのままふくらはぎの裏側を下って足裏を経由して足先に進んでいきます。
 もう一方(総腓骨神経)は、ふくらはぎ前面の外側を下って足の甲に進んでいきます。

 これら神経の大元である坐骨神経は太もも裏側のハムストリングやふくらはぎや足の筋肉を支配していますので、坐骨神経にトラブルが生じますと、太ももの裏側と膝下のどこかにシビレや熱感や痛み、場合によっては運動障害が起こります。

 また、坐骨神経の症状の一つとして太ももの外側に違和感やシビレや痛みが現れることがしばしばあります。太もも外側の筋肉は坐骨神経によって支配されているわけではありませんので「そこの異常も坐骨神経の問題であり、梨状筋が絡んでいる」と言うのは理屈に合いません。しかし、ふくらはぎ前面外側や側面の筋肉が神経異常による強い張りやこわばり状態になりますと、筋肉連動の仕組みで太もも外側や側面の筋肉がこわばることが起こります。

殿部の損傷による坐骨神経痛

 坐骨神経痛の多くは梨状筋の強いこわばりによってもたらされますが、そうなる理由はいくつか考えられます。骨盤や股関節の歪み、筋連動による梨状筋の強い緊張状態(こわばり)、殿部筋肉の使いすぎ、打撲やその他の理由による殿部筋肉の損傷などが主なものになります。
 これらの中で、今回は殿部筋肉の損傷における坐骨神経痛について取り上げます。

1.打撲による大殿筋(だいでんきん)の損傷が原因

 Sさんはお椀をつくっている職人です。多くの時間を座った状態で、かなりの腕力を使って作業を行っています。ですから、手も腕もいつもカチカチに硬くなっています。隔週のペースで来店され揉みほぐしを行っていますが、私もかなりの力を使わざるを得ないので、施術の後はくたくたになってしまいます。
 そのSさんは現在、左殿部から太ももにかけて坐骨神経痛を抱えています。職人さん気質で言葉が少ないSさんはあまり語りませんが、その左殿部の筋肉が弱々しい状態なので、「尻餅をついたとか、何かありましたか?」と尋ねました。
 すると自宅で足を滑らせて尻餅をついたとのことです。そして、その時にテーブルの角に大殿筋の大腿骨との境あたりを強く打撲したとのことでした。

 大殿筋の損傷が原因で坐骨神経痛になってしまったことがわかりましたので、私がするべきことは損傷した大殿筋が修復するように促すことです。
 Sさんの具体的な症状は次の2点です。

  1. 1時間ほど立ち続けていると左下肢にシビレと痛みが現れる
  2. 仕事で、座った状態で左殿部に体重が掛かるような作業になると坐骨神経の症状が現れる。ただし、その時に大腿骨を内側に捻ると症状が軽減する。

 打撲による損傷が大きな原因であると判断しましたので、大殿筋の損傷していると感じられる部位を探しだし、そこを重点的に10分ほど手当てし、いつものようにダイオードを貼って、大殿筋の回復を促すようにしました。すると殿部の状態もしっかりして坐骨神経痛の症状は改善しました。左殿部に荷重がかかるように座っていただいてもまったく症状は感じられない状態になりました。

 Sさんの坐骨神経痛について簡単に解説しますと以下の通りです。
 梨状筋の表層には大殿筋があります。ともに骨盤(仙骨)と大腿骨をつないでいる筋肉ですから、互いにバランスを取り合って殿部の状態を安定させる働きを担っています。
 この状態をもっと簡単に表現しますと、大殿筋と梨状筋の二つの筋肉が働いて仙骨と大腿骨の関係を維持していますので、どちらかの筋肉がおかしくなりますと、他方の筋肉に必ず影響が現れます。Sさんの場合は大殿筋が働けない状態=大腿骨を支えられない状態になってしまいましたので、梨状筋により頑張っていただかなければならない状態になってしまいました。そして、この状況が梨状筋の緊張(こわばり)につながり、坐骨神経痛を発症しやすい状況になりました。

 また、大殿筋の働きは太ももを後方に伸ばす(=股関節の伸展。階段を上る、座位から立ち上がるなど、特に屈曲位から大腿を伸展させる。)ことですから、その損傷は長時間立ち続けることができない症状につながります。
 さらに座った時に左の殿部や太ももに体重が掛かりますと、大殿筋がその重みに耐えられなくなり、骨盤が歪んだり梨状筋がさらに強くこわばって坐骨神経を圧迫する状況を招いたのだと思います。
 座りながら大腿骨を内側に捻ると症状が軽減したことにつきましては、大腿骨を内旋させると、そのゆるみ過ぎ状態を少し緩和することができることが理由です。(詳細は省略)

2.鍼治療のやり過ぎによる坐骨神経痛

 Tさんは腰痛持ちです。膝も時々不具合になります。長年のお客さんですが、症状がかなり悪化しないと来店されないという特長があります。
 このたび半年ぶりくらいに電話が入りまして、坐骨神経痛がひどくて歩くことがままならないと症状を仰いました。
 来店されて経過を尋ねますと、症状が出始めたのは二月ほど前で、周囲の人達の意見を聴いて、整体院ではなく鍼灸治療院を選択したとのことです。
 二月も経過したのに歩くことがままならない状態であるというのは、症状をこじらせてしまっていると私は判断します。「すぐに来れば、症状が悪化することもなくすぐに良くなったのに」と私は内心思いましたが、それは口にしませんでした。

 坐骨神経痛の症状が出始めた頃は、歩くことは苦ではなく、仕事で座り続けていることが辛かったとのことです。その後、鍼灸院での治療を続けていると症状に変化が現れはじめ、座ることは苦でなくなくなった反面、からだを真っ直ぐにして立つことができなくなり、やがて普通に歩くことができなくなってしまったということです。
 からだを屈めたまま両手を太ももにつけて上半身を支え、手と足を一緒に出すような動き方でないと歩くことができない状況です。

 経過を聞いたので施術に移ろうとしたのですが、ベッドにうつ伏せになることも、仰向けで寝るとこともできません。坐骨神経痛を悪化させるとこのようになってしまうことがあります。
 左下肢に神経痛の症状が出ていましたので右側を下にしてベッドに横になったもらいました。しかし、この姿勢では骨盤や股関節の状態を詳細に把握することができません。ですから私は、まずうつ伏せになれる状態にすることを目指して施術を始めました。
 ところが、しばらくしますと横に寝ていることも辛くなってきたと仰いました。それでしかたなく、ベッドに座った状態で施術を継続することにしました。座っていることはまったく苦ではないとのことでしたが、この時点で普通の坐骨神経痛ではないと感じました。

 座っている状態=からだを屈めた状態は大丈夫でも、立ち上がって腰を伸ばそうとすると、その姿勢ができません。つまり股関節の伸展ができないのです。
 この状況を筋肉の働きに置きかえますと、腹筋を伸ばすことができないか、大殿筋やハムストリングを収縮することができないか、という状態が考えられます。そして大殿筋を観察しますとユルユルになっていてほとんど収縮することができない状態でした。
 「??? どうして?」と思いましたので、「鍼灸院ではお尻に鍼をたくさん刺したのですか?」と尋ねました。すると、毎回の治療でお尻に20~30本くらいは刺していたと仰いました。
 鍼の刺しすぎで、筋肉が損傷状態になってしまったことが考えられます。

 これまでの経験から、鍼の刺しすぎによる損傷は、その範囲が広い場合、筋・筋膜の働きを回復させるのは大変なことだと知っています。手間と時間がかかります。
 ギックリ腰や肉離れや寝違えのように損傷部分の範囲が小さく点に近い状況であれば、マグレインやダイオード、あるいはピップエレキバンなどを使うことでかなりの改善を期待することができます。しかし「左殿部の全部」というように範囲が広い場合は、それは叶いません。
 結局、手当てによる施術を行って、最後にキネシオテープを貼って施術を終えましたが、それでもかなりからだを伸ばすことができるようになりました。そしてまだ痛みは感じるとのことですが、歩く姿も「まぁまぁ」といった状態になりました。

 Tさんの状況を簡単に説明し直しますと以下の通りです。
 最初は普通の坐骨神経痛でした。座って体重が掛かるなど梨状筋に負荷が掛かると坐骨神経痛の症状がでる状態でした。慢性的な腰痛と膝痛持ちでしたから、それらに関連して坐骨神経痛になってしまったのかもしれません。
 坐骨神経痛に対しては、鍼灸治療を行う選択をしました。それが間違いだというわけではありませんが、通われた治療院では殿部の硬くなった筋肉に直に鍼を刺す治療を行いました。それによって坐骨神経痛の症状は軽快したのかもしれません。しかしながら、鍼の刺しすぎで殿部の筋・筋膜がゆるみきった状態になってしまい大殿筋が収縮できなくなってしまいました。
 ですから、腰(股関節)を伸ばして立つことができなくなり、さらに歩行で地面を蹴る動作もできなくなってしまいました。股関節を伸ばすことができないので、からだを屈める姿勢をとるしかありませんが、その影響で腹筋は縮んで硬くなり、ますます股関節の伸展が難しい状況になってしまいました。

 首肩の凝りに対して鍼灸治療のやり過ぎで筋肉が鍼の刺激に負けて損傷状態になった人もいました。肩の筋肉(僧帽筋)が働かなくなり、肩甲骨を保つことができなくなって、首肩の筋肉が引っ張られ、非常に苦しい状態になってしまった人もいました。
 また、鍼ではありませんが、低周波治療器の使いすぎや刺激に筋・筋膜が耐えられなくなって坐骨神経痛を患った人、膝関節をおかしくしてしまった人もいました。
 小顔整体で頭蓋骨を強引に動かされて頭蓋骨の縫合関節がゆるんでしまい、マシュマロのようにフワフワした頭蓋骨になってしまった人もいました。
 私のような業界では、肩こりなどに代表されるように、硬くなってしまった組織や筋肉をゆるめることを得意としている人達はたくさんいます。ところが、ゆるんだり損傷したりして働きの悪くなっている筋肉を本来の状態に戻すことは一般に苦手です。ですから、なんでもゆるめたがります。
 そしてお客さんの方も「揉みほぐせば良くなるかも」という観念に囚われている人がたくさんいます。しかし、揉んだりほぐしたりすることで良くなる状況もありますし、反対に症状の悪化を招く状況もあります。
 今回取り上げた事例は、揉みほぐしてはいけない症例です。

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 下がっている、あるいは下がり気味の状態にある顔面を上げる手段はいくつかありますが、第2頚椎の状態を整えることは要になる一つの方法です。
 首や肩のコリが強くて、整形外科を受診すると「ストレートネック」と診断される人がかなり多く来ますが、そのような人は、まず間違いなく顔面が下がった状態になっています。
 年齢が若ければ肌に張りがありますので、顔面の骨格が少し下がったところで、頬が下がったり、瞼が下がったりするようには見えないかもしれませんが、加齢に伴って肌の張りが弱くなりますと、顔の下がりを感じるようになってしまいます。

 話しをストレートネックに戻します。本来、頚椎は少し前弯した状態になっています。それによって頚椎を抵抗少なく前後に動かすことができますし、歩行時など地面からの衝撃を和らげて頭部を護る仕組みになっています。
 ところが、下を向いている時間が長かったり、肩凝り性だったり、首肩に力を入れる癖などによって頚椎の前弯が失われてしまうことがあります。すると首肩の凝りも強くなって「首はガチガチ、頭痛も頻繁」という状況になってしまうかもしれません。

 肩こり解消の目的で私のところに来られる人の中に「整形外科でストレートネックと言われ‥‥、だから肩こりが激しい」と仰る人も多くいますが、それは話しが反対で、首肩の凝りが強くなったのでストレートネック(状態)になってしまっていると私は考えています。なぜなら多くの場合、首肩の凝りをほぐしていきますとストレートネック状態は改善していくからです。ところが、首肩の凝りをほぐしてもストレートネック状態が改善しない人がいます。それは別の理由で頚椎が歪んでいるからなのですが、多くの場合、第2頚椎が下向きの状態になっていることが原因です。

 後頭部と首の境は少し凹んだようになっています。それを「盆の窪」と呼んだりしますが、そのすぐ下に頚椎の棘突起が出っ張っています。その棘突起が第2頚椎の棘突起なのですが、本来はそれほど目立つ存在ではありませんが、ストレートネックの人はその出っ張りが「ありあり」していると思います。あるいは「盆の窪」を感じることもなく、後頭部と首の境に硬い突起物を感じる状態になっているかもしれません。

 さて、この状態は第2頚椎が下向きになっているので、棘突起が上に回転して後方に突出した状態になっているということです。そして首後面の正中(中央)には項靱帯(こうじんたい)と呼ばれる強い結合組織が縦に走っていますが、それがすべての頚椎棘突起をつないでいますので、第3以下の頚椎棘突起も上向きの状態になってしまいます。つまり第2頚椎の棘突起が多の頚椎の棘突起を引っ張り上げているような状態です。ですから、頚椎は前弯を失ってストレートネックの状態になってしまいます。(他の理由でストレートネックになることもあります。)

 頚椎(椎体)とその棘突起の話しは馴れませんとイメージしづらく解りにくいかもしれません。
 頚椎の後方にある骨の突起は棘突起(きょくとっき)と呼びますが、それが上に引き上げられた状態では、頚椎自体(椎体)は下向きの状態になります。そして首後面に「首の骨」を在り在りと感じる状態だったり、「硬いなぁ」と感じる状態は棘突起が上を向いている、つまり頚椎が下を向いている状態です。
 頚椎が下を向いている状態では、骨連動の仕組みにより顔面の骨格も下を向くように下がってしまいます。
 ですから顔面の骨格を上げようとするときは、頚椎の下向き状態を改善することが必要になってきます。つまり首の後面を触ったときに首のつけ根(第7頚椎)以外の骨(棘突起)はあまり感じられない柔らかい状態にする必要があります。

要になる上部頚椎

 第1頚椎と第2頚椎の二つの頚椎を上部頚椎と専門的に呼びます。
 上部頚椎は頭蓋骨を首に乗せる関節(第1頚椎)であり、頭部を回旋させる軸となる骨(第2頚椎)と言う意味で、その在り方は、私たちの業界ではとても重要であると考えられています。「上部頚椎を整えると自ずと全身が整う」とうたっている専門家もいます。
 私はそこまで上部頚椎に思い入れはありませんが、その重要性は知っています。そして、上部頚椎は調整するのが難しい骨格でもあります。
 上部頚椎の中で第1頚椎はほとんど触れることができません。ですから、周囲のいろいろな状況は動きを参考にしながらその状況を推し測り対応しなければなりません。その意味でも第2頚椎の状態はとても重要です。

 さて、もし首の後面、盆の窪のすぐ下の第2頚椎棘突起が硬く突出している状態だったとします。

 それは第2頚椎が下を向いている状態ですが、その出っ張った骨(棘突起)に片手の手指を当てて、他方の手を額に軽く当ててみてください。
 次に、棘突起にに当てた手指を下方に少し動かし、棘突起を下方に押し込むように動かしてみます。すると額に当てた手に、額の骨が少し上に動くのが感じられると思います。

 つまり、第2頚椎の棘突起を下に動かす=第2頚椎を上に向けますと顔面の骨も上に上がることがわかります。これは私たちのからだに秘められた仕組みの一つです。

 ここで改めて要点を整理しますと以下のようになります。

  • 顔面の骨格は骨連動の関係で頚椎と密接に関係しています。
  • 頚椎が下を向いていますと、顔面の骨格も下を向いて下がります。
  • ストレートネックと診断されている人、盆の窪が感じられない、あるいは盆の窪の直下の骨(第2頚椎棘突起)が突出している人などは第2頚椎が下を向いているということです。
  • ですから、このような状態の人の顔面を上げるためには、第2頚椎の下向きを改善する必要があります。

下向きの第2頚椎を修正するために

 骨格の歪みを修整することについて多くの人がイメージしやすいのは、骨格を直接「ポキポキ」とか「バキバキ」とか操作して調整する方法かもしれません。カイロプラクティックは直接骨格を動かしますので、得意分野だと思われるかもしれません。
 ところが上部頚椎はたくさんの筋肉が絡んでいて、そのバランス関係で現在の状態になっています。ですから関係する幾つもの筋肉を整えませんと一時的に骨格を調整したところで、すぐに元の状態に戻ってしまいます。その意味で「筋肉の調整」がもっとも重要です。それぞれの筋肉の状態が良くなり、頚椎に関係する筋肉群のバランスが整うことで頚椎の状態が良くなれば、それはその状態を安定させることに繋がるからです。

 なぜ今回はこのようなことを申し上げているのかは、顔面も含めて頭蓋骨や頚椎はとても繊細で微妙な部位であり、施術でトラブルが起こりますと、重大な問題に繋がってしまう可能性があるからです。
 「小顔整体」を売りにしているところなどは、グイグイ頭蓋骨を押し込んだり、首の筋肉を引っ張ったり、私から見ると非常に危険な施術を行っているようです。十分に注意してください。

後頭下筋群(こうとうかきんぐん)のこわばり

 さて、第2頚椎を下向き(棘突起は上向き)にする代表的な筋肉に後頭下筋群があります。後頭下筋群は後頭部の骨(後頭骨)と第1頚椎、第2頚椎に繋がっていますので、こわばることで第2頚椎棘突起を引き上げてしまいます。ストレートネックになる原因になります。
 後頭部と首との境の筋肉がガチガチに張っているいる人、指圧すると痛みを感じる人は後頭下筋群がこわばっていてストレートネック状態になっていると思います。

中斜角筋(ちゅうしゃかくきん)のこわばり

 首の側面には頚椎と肋骨を繋いでいる斜角筋(しゃかくきん)があります。斜角筋は噛む筋肉(そしゃく筋)と密接に関係していますので、噛みしめ癖や歯ぎしりの癖がありますと顎周辺のそしゃく筋も硬くなりますが、同時に首の斜角筋も硬くなって首のしなやかさが失われ、動きも悪くなります。あるいは何かの理由で斜角筋がこわばりますと、そしゃく筋に影響して顎関節の不具合を招く可能性もあります。

 斜角筋には前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋の三つがあります。この中で中斜角筋は直接第2頚椎に関係していますが、中斜角筋がこわばりますとやはり第2頚椎を下向きの状態にしてしまいます。
 中斜角筋はそしゃく筋の中で口の中にあります内側翼突筋(ないそくよくとつきん)に連動していますので、顎を大きく開いたときに耳のところ(咬筋)ではなく、顎関節の内部が痛みを発するようなときは、中斜角筋がこわばっていると判断できます。

その他の筋肉の影響

 後頭下筋群と中斜角筋の他にも、第2頚椎を下向きにしてしまう筋肉はいくつかあります。あまり専門的になりすぎても解りづらくなりますので、それらについてはここでは省略します。
 また、第2頚椎の問題以外にも顔面の骨格を下げてしまう理由はいくつかあります。
 そしゃくが足りなければ、全身的に筋肉の働きが弱まりますので、重力に対抗する力も弱まります。
 お腹が冷えるなどの要因で、腹筋~胸~首前面の筋肉がこわばることがあります。パソコンの業務ばかりしている人は胸の筋肉がこわばりますが、それらによって喉や舌関係の筋肉がこわばって顔を下に引っ張っている状況もあります。
 猫背により背筋がゆるんだ状態になっている人がいますが、すると後頭部が上に上がり、反動として顔面が下がってしまうということも起こります。
 ですから、顔を整える私の施術においては、顔面以外のいろいろな筋肉や骨格を整えています。多くの場合で、その時間は実際に顔を触っている時間の何倍にもなります。

頚椎と腰椎の関係とセルフケア

 アスリートや筋肉を鍛える肉体的トレーニングしている人達などを除いた、私たち一般人の骨格は、側面から見ますと頚部は軽く前弯していて、反対に胸部(胸椎)は軽く後弯し、そして腰部は再び軽く前弯している状態が普通です。
 頚椎も胸椎も腰椎も(そして仙骨も)、それぞれがゆるかに弯曲していることで重力や衝撃による負荷を軽減したり、体幹の柔軟性を保つことができるようになっています。
 ところが、普段の姿勢や身体の使い方の癖などによって頚椎や腰椎の前弯が失われたり、胸椎の後弯が大きくなっていたり、あるいは胸椎の下部が前弯している人などがいます。猫背が強いと思っている人、骨盤を立てて座ることが苦手な人、骨盤が後傾してお尻が下がっていると感じている人などはこのような傾向があります。

 今回の話題は第2頚椎が下向きの人は顔面が下がるので、それを改善するためにどうするべきかという対策について考えてみます。
 私は毎日みなさんのからだを触っていますので、経験にもとづいて第2頚椎を整えたり、ストレートネックを改善するための手段を知っています。ですから、施術を行うことができます。ところが、素人であるみなさんがそれを行うことはほとんど不可能です。そして先ほども申しましたが、上部頚椎は非常に重要で微妙な部位ですので、やたらに力を加えたり動かしたりして欲しくないところです。
 そこで、腰椎と頚椎の骨連動の関連性から、腰椎が前弯状態になるようトレーニングすることで少しずつ上部頚椎の状態が改善するような方法を採用していただきたいと思っています。

 方法は、座った状態で骨盤を寝かせた状態(=腰椎が前弯していない、あるいは後弯している状態)から、ゆっくりと下腹を前上方に突き出すように骨盤を立てる運動を繰り返すことです。
 つまり、意図的に腰椎が前弯する状態を築くことなのですが、ポイントになるのは第4腰椎、第5腰椎、仙骨といったところが軟らかく動かせるようになり、そこで腰椎の前弯が形成されることです。
 腰椎がストレート状になっている人、あるいは後弯している人は、寝ている骨盤を立てる動作をしたときには、腰椎の下部が動くのではなく、腰椎と胸椎との境あたり、つまり腰部の上の方が動いて骨盤を立てる運動が行われる状態になっています。最初はそこで動いてしまうのは仕方のないことですが、何度か運動を繰り返している間に、少しずつ動く場所が下になるように意識を向けていきます。そして最終的に腰部の下の方、理想的には腰椎と仙骨の間が動いて骨盤を立てる動作ができるようになるように努めてください。
 毎日のようにこの動作を繰り返していますと、やがて普通にしていても腰椎が前弯した状態になり、それに合わせて頚椎も前弯して第2頚椎の状態も良くなると思います。そして顔面の下がりが改善されるようになると思います。
 一回のトレーニングでは、30回くらい骨盤を立てたり寝かせたりする運動を行ってください。それを一日に何度か繰り返してください。

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 今回は肘関節に関係する話題です。
 肘はぶつけやすいところですから、机やテーブルにコツン、壁にゴツン、とぶつけていながら、そのことをすっかり忘れてしまっている人も多いと思います。
 ところが、肘の打撲や捻挫、あるいは筋膜や皮膚の損傷が原因になって下半身や全身がむくんでしまっていたり、筋肉が張ってしまい、全身がいつもパツンパツンの状態になっている人もいます。

 肘周辺の損傷は、痛みがなくなりますとすっかり頭から離れてしまうくらいの目立たない出来事ですが、私たちの思いも掛けないところで不調や不具合の原因になっています。
 今回はそんな話題です。

肘の損傷と不具合

前腕の筋肉が常に張っていて硬い

 手指を操作する筋には手から指につながっている短い筋肉と、肘関節や前腕(肘と手首の間)から始まり手首を超えて手指につながっている長い筋肉があります。
 今回のテーマは肘関節ですから、前腕にある長い筋肉と肘関節との関係が主な題材です。

 ご自分の前腕を触ったときに「硬いなぁ」とか「コリコリだなぁ」「張っているなぁ」と感じる人は前腕に筋肉がこわばった状態になっているわけですが、それが手指の使い過ぎによるものであれば、手や手指をよくマッサージすることでこわばり状態は改善して前腕は軟らかくなるはずです。
 ところが、たいして手を使っていわけでもなく、重い物を持っているわけでもないのに前腕や手の筋肉が硬くなっている人がいます。あるいは、マッサージしてもほとんど効果を感じられない人がいます。
 「パソコンをちょっと使だけでも、親指のつけ根がコリコリと硬くなってしまう」というような人もこの類いだと思います。
 このような人は肘関節が歪んでいる可能性が高いのですが、その原因としてかつての肘関節の打撲や捻れがあるかもしれません。

 YさんはデスクワークでたくさんノートPCを使っています。
 PC操作では、キーボードの上に手のひらを乗せた状態でキーボードを叩くのが本来の在り方だと思います。このことはきっと誰もが「そうだ」と同意すると思いますが、問題は、肘を下ろした状態で手のひらを真っ直ぐに、どこにも力をいれることなくキーボードに置くことができるかどうかです。

 そのためには、肘関節で確実に腕の向きが変わることができなければなりません。肘関節で前腕をしっかり内側に捻ることができなくて方向変換が中途半端な状態ですと、手首でさらに手を内側に捻る動作を加えなければキーボードに手のひらを置くことができません。親指のつけ根がすんなり自然に着くような手の置き方はできません。
 たとえば腕立て伏せをするように肘をしっかりと曲げたとき、すんなり肘を曲げきることができなかったり、あるいは手のひらが前を向くのではなく内側を向いて小指側が前になるようでは、それは肘関節が好ましい状態ではないと判断することができます。

 さて、Yさんは肘関節で前腕を十分に内側に捻る(回内動作)ことができませので、キーボードに手を置くためには手首を捻らなければならない状況でした。そして、この状況は特に親指のつけ根が浮いた状態になりますので、例えば親指でスペースキーを叩くときには親指を普通の人以上に強く曲げて使わなくてはなりません。ですから、そのための筋肉(短母指外転筋)が使い過ぎの状態になりこわばってしまいます。
 「ちょっとパソコンを操作すると、親指のつけ根がすぐに張ってしまい辛くなる」としばしば訴えます。

 以前に「前腕を捻る‥‥円回内筋と回外筋」で説明しましたが、肘関節を内側に捻る動作は回内筋が主体になった行われなければなりません。諸々の理由で回内筋がしっかり働けない状況ですと手首の方形回内筋を使って前腕を内側に捻るようになりますが、本来それは不自然な状態です。そしてこの不自然な状態で親指を使うようになりますので、それは親指つけ根の酷使状態となりますので、すぐに筋肉はこわばってしまい辛くなってしまうと考えることができます。

 回内筋が上手く働けない理由はいくつか考えられますが、Yさんの場合は肘関節で上腕骨と尺骨の関係が歪んでいたことが原因でした。
 「付着している骨が不安定なので筋肉の働きが悪い」という項目に該当します。そして肘関節が不安定な理由は、かつて肘を打撲したことでした。

 肘のところには神経(尺骨神経)が通っていますので、肘をどこかにぶつけますと、小指の先にかけてジーンと強烈な痛みを感じることがありますが、ちょうど肘頭の神経の通っているあたりに損傷がありました。靱帯なのか筋膜なのか判別が難しいのですが、その損傷によって肘関節が少しグラつく状態になっているために肘関節に関係する筋肉(上腕三頭筋長頭と内側頭、上腕筋、回外筋など)が変調状態になってしまい、「前腕の筋肉がコリコリに硬くなっている」状態を招いていました。そして、その影響で回内筋がしっかり働けない状況でした。
 その損傷してゆるんでいる部分をじっくりと施術し、いつも使っている(摩法の石ような)ダイオードを貼りますと、肘廻りの変調していた筋肉は状態が良くなり、前腕の硬さは速やかに改善し、そして自然と親指のつけ根のこわばりと張りも解消されました。

 Yさんは、かつての肘の打撲により肘関節が不安定になったために前腕や上腕の筋肉がこわばって張ってしまい硬くなっていました。さらにその影響で前腕を内側にしっかり捻ることができないのにパソコンを操作しなければならない状況でしたから親指を酷使する状態となり、いつもそこに辛さを感じていたという状況でした。
 ですから肘関節の損傷部位を整えることで、この問題を改善することができました。
 そして、肘をぶつけている人はたくさんいると思いますので、そのような人は肘関節を整えてみてください。きっとからだの状態が良い方向に変わると思います。




肘の内側の損傷で全身のむくみ

 上記では肘関節の回内動作(前腕を内側に捻る)が上手くできな症例を取り上げましたが、今度は反対に肘関節で前腕を外側に捻る動作(=回外動作)が上手くできない状況が原因で全身的にむくんだ状態になってしまっている症例を取り上げます。

 Aさんは現在、週3日勤務の事務の仕事をしています。仕事内容はそれほどハードではありませんし、たくさん歩いていることもないのですが、常に下半身がパンパンの状態で、腕もパンパンしています。全身がむくんでいる状態ですが、水分が溜まった単なるむくみとは違って筋肉も全身的にこわばっていますので、からだ全体が硬く腫れているような状態です。

 Aさんは30歳代前半ですが、しばしば首の調子が悪くなりますし、毎日のように頭痛に悩まされているとのことです。Aさんは高校時代まで新体操をやっていて開脚なども大きくできますし、からだが硬いわけではありません。ところが筋肉はこわばった状態なのです。
 これらの状況から推察しますと、Aさんは本来、からだは軟らかく筋肉も軟らかいのですが、何かの理由によって全身的に筋肉がこわばった状態になっており、それによって静脈やリンパの流れが停滞して全身がパンパンした状態になってしまっていると考えられます。
 ですから、その「何かの理由」を探し出して特定し、それを修正する必要があります。

 Aさんは過去に大きなケガや故障は経験した記憶が無いとのことです。新体操の練習においてもケガは無かったとのことです。
 ですから、手首や肘や肩の関節、股関節、膝関節、足首などの状態を確認する作業から始めました。関節の状態を初めに確認するのは、むくみは関節の歪みに密接に関係しているからです。
 すると右の肘関節が不安定になっているのがとても気になりました。そこで肘関節を90°に曲げた状態で回内動作と回外動作を行ってもらいました。内側に捻る回内動作はそれほど問題はありませんでしたが、外側に捻る回外動作では、肘関節で回外を行うことができずに手首のところで外側に捻っている状態でした。つまり、肘関節の回外がまともにできない状態です。
 「右肘が歪んでいて力が入らないけど、何かこころ当たりはありますか?」と尋ねましたが特に思い当たることはないとのことです。
 そこで新体操の競技について尋ねながら、からだの使い方などを連想していきました。肘を打撲したり酷使したりすることはないだろうか? ボール競技で肘でボールを受けたりして筋肉を傷めたりしないだろうか? リボンやその他の競技で肘を傷めるようなことはないだろうか?
 よく解りませんでしたが、改めて詳しく肘周辺を観察しますと上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)が前腕の橈骨に付着している部分(腱)周辺がゆるんだ状態になっているのがわかりました。そしてその部分に手を当てて、ゆるんだ状態を補い、そして再度回外動作をしたもらいますと、今度はしっかりと回外動作を行うことができました。

 ここに問題があったのです。その後、ゆるんでいる部部にしばらく手を当て続けていました。すると2分くらい経過した頃から、太股や鼡径部の硬い膨らみがやわらいでいきまして、筋肉からも力が抜け出し、その流れが次第に全身に及ぶようになりました。
 頭も首周りも楽になり、呼吸も大きく深くできる状態になっていきました。肉厚だった手の親指つけ根(母指球)も中身が消えたように薄くなり、全身がリラックスした状態になっていきました。
 さらに10分、15分と手当ての状態を続けていきました。パンパンだったジーンズはスカスカな状態になり、ウエストも細くなっていきました。
 右肘だけの問題で、これほどまで全身に影響が及んでいたということですが、改めて人体の不思議さ、人体に隠されている秘密を知ることになりました。


 ここで簡単に回外動作と筋肉の関係について説明します。
 肘関節で回外動作を行う代表的な筋肉は2つあります。ひとつは回外筋(かいがいきん)です。そしてもうひとつは今回取り上げました上腕二頭筋です。
 回外筋と上腕二頭筋は解説書などによりますと、ともに「回外に働く筋肉」となっていますが、肘を伸ばした状態で前腕を回外する動作では回外筋が収縮し、肘を曲げた状態では上腕二頭筋が収縮して回外動作が行われるという違いがあります。
 Aさんの場合、上腕二頭筋に問題がありましたので、肘を曲げた状態で回外動作を行うことが苦手な状況でした。このような状態の時にドアノブを握って外側に捻るような動作をしますと、手首を捻って動作を行うようになりますので、それはそれで別な不具合を招く恐れがあります。

つい忘れてしまう肘の打撲

 冒頭に、肘をコツンとぶつけても日常生活への影響が感じられなければ、それは一時的なことであり痛みが消えてしまえば、皆さんすぐにそのことを忘れてしまうようです。それはそれでOKなのですが、肘関節が不安定になるような影響が残っていますと、「手に力が入らない」「腕の筋肉がいつも硬い」「親指のつけ根が太くて硬い」などの症状が現れます。そして既に取り上げましたように全身がむくむなどの症状の原因になる可能性もあります。そして、それ以外にもいろいろと症状が現れますが、それらをいくつか簡単に紹介します。

坐骨神経痛の原因が肘の歪みだった

 常に坐骨神経痛を感じている状態は治まったのですが、横になってリラックスしていたりすると症状が現れると訴える人がいます。座っていても大丈夫、立っていても歩いていても大丈夫、それなのにからだを楽にしていると症状が現れるというのは、坐骨神経痛の現れ方としては異例の部類に入ると思います。そして結局、その原因は肘の歪みによる影響でした。その人は昔、頬杖をたくさん着いていたし、今も自宅で転がりながらテレビを見るときには肘で頭を支える(片側の頬杖状態)姿勢をするとのことです。つまり頬杖によって肘関節が歪み、その肘に荷重がかかる状況になると頚椎や背骨や股関節が歪み、坐骨神経痛の症状が現れるのではないかと私は考えました。

ヨガのブリッジができない

 仰向けの状態で背中を浮かせ、手と足でからだを支えるブリッジの状態をつくるためには、手首を最大限に背屈して掌を地面に着ける必要があります。
 掌が真っ直ぐ着地できるかどうかは重要な要素になります。

 そして、そのためには肘関節での回内が十分に行える状態でなければなりません。回内が不十分な状態ですと、小指側は着くけど親指側は浮いてしまいますが、それを補うために手首を捻るようになります。するとその捻れはからだの別の部分にも及びますので、正しいブリッジの姿勢を築くことができなくなってしまいます。

片側の足の着地感がいつも気に入らない

 肘関節を曲げて、そこに買い物袋やバッグを引っ掛ける癖を持っている人は肘関節内側の筋膜が損傷していたり、あるいは筋肉がゆるみ過ぎの状態になっていて肘関節で前腕がすこし離れた状態になり不安定になっている場合もあります。そして肘関節の不安定さは肩関節、股関節、膝関節、足首へと連動し、下半身が不安定で足の着地感がいつも気になる状況を招くこともあります。
 手で重たいバッグを持ち続けることは苦痛なので、つい肘に引っ掛けてしまう人もいるかと思いますが、それはそれでリスクもあります。
 「極力、持ち歩くバッグは軽くしてほしい」と私は思っています。


 今回は肘関節について取り上げましたが、からだにある大きな関節‥‥肩関節、肘関節、手首、股関節、膝関節、足首は、どれも大切です。
 その他にも小さな関節はたくさんありますが、大きな関節が歪みますと全身的にバランスが変化しますし、循環に影響が生じます。ですから、まず大きな関節がしっかり整うようにと私は施術を心がけています。

 膝関節は変形しやすい関節ですが、骨と骨の関係が歪んでいる状態であれば、筋肉や靱帯を整えることで関節を良い状態に整えることはできます。ところが、軟骨やその他の大事な組織が消耗して無くなってしまうなど器質的に変化してしまいますと、手術によって人工関節に置換しなければならなくなったりします。股関節も肩関節も同様です。

 ですから、大きな関節に問題が生じたと感じたのであれば、速やかに対処されることをおすすめします。ただし、適切に対処できる専門家に相談してください。すべての整形外科がそうであるとは思っていませんが、レントゲンを撮って経過観察だけ行い、痛みに対しては湿布や痛み止めだけで対応するようなところは避けた方が賢明だと思います。結局のところ症状は徐々に進行し、やがて手術しなければならない状況になってしまう可能性があるからです。

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