ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

 手術痕が整体的な面でからだに影響を及ぼしていることは「必ずある」と私は考えています。
 帝王切開による出産の影響については以前に取り上げたことがありますが、一般的に、からだに負担が少ないとされている内視鏡による手術も、実際は少なからず影響をもたらすことがこの度わかりました。
 そして「こんなちいさな傷も影響があるの?」ということも実際にありますので、今回はそのことについて説明させていただきます。

内視鏡手術による負担
 外科的手術の技術も進歩し、内視鏡手術が盛んに行われるようになって入院日数はかなり短縮されていると聞きます。メスで切開する面積が減ったことで縫合範囲が大幅に狭まったことが大きな要因なのかもしれません。
 私は「それは良いことだ」と単純に思っていますが、しかし同時に「油断はできない」とも思っています。

 からだケアのために定期的に来店されている方が内視鏡による手術を受けました。お腹に3箇所穴を開けての手術だったようですが、入院日数は一週間程度で、予定通り順調に退院されました。手術の工程で、ガスを体内に注入したとのことです。術後しばらくの間はそのガスが体内に残っていることによる痛みを感じていましたが、その他には特に問題も生じていないとこのことでした。ガスによる影響も1ヶ月くらいでなくなり、「順調に回復しているのかなぁ」と思っていましたが、手術後2ヶ月ほど経った頃から手術による影響が現れ始めました。
 下腹部の病巣部分を切除して取り除いたのですが、その辺りが周辺部に比べてヘニョヘニョと腑抜け状態に感じられました。手術直後はからだも”緊急事態”と判断したのか、血液を手術したところに集め、筋肉の働きを強めていました。やがて、からだの状態も回復してきたので緊急事態モードから通常モードに移行したのですが、病巣を切除した箇所はまだまだ力が弱いために、触ると腑抜け状態が目立った感じに残ってしまっている、ということだと思います。

内視鏡手術による影響

 この腑抜け状態は、筋肉の働きに置きかえて表現しますと“収縮力や張りの弱い状態=働きの悪い状態”ですから、その影響で股関節が不安定になってしまいました。ご本人の自覚では「足首が硬くなって動きが悪い」ということでしたが、股関節が不安定なために足首周りの筋肉がこわばってしまい足首の動きを制限している状態です。
 このようなときに行う施術は、腑抜け状態に感じる部分に手を当てて、血液を呼び込むようにして筋肉や組織の回復を促すことです。10分くらい手を当て続けていますと次第に腑抜け部分に張りが戻ってきて股関節がしっかりしてきました。そして足首を動かしてもらうと、動きも回復し、左右の足首の動きが同じような状態になりました。
 しかしながら10分間の施術を1回行うだけでは、また時間の経過と元の腑抜け状態に戻ってしまいますので、このような施術を何回か行う必要があります。

 内視鏡手術を選択することで切開部分が少なくなるため、表面的な回復(傷も痛みも解消する)時間は明らかに短縮されます。しかしながら表面的には回復しても“筋肉や組織の機能”という“見えない傷”が回復したわけではありません。そのことをもっと知っていただきたいと思っています。

カテーテル治療による負担
 私事ですが、2016年10月に40日間ほど入院する病を患いました。その時、カテーテルによる治療を一回受けました。右鼡径部の大腿動脈からカテーテルを挿入していく治療でした。退院後、普通の生活に戻り、仕事も普通に行っていますが、2017年の秋頃から時々皮膚に湿疹が出ては冬場にかけて症状が少しずつ悪化していきました。これまでの人生で皮膚に湿疹が現れるようなことはありませんでしたから、「やはり入院がきっかけだろうか?」などと思っていました。
 カテーテル治療を受けたとき、医師から「カテーテルを挿入したところが痛くなるかもしれませんが、やがて痛みは治まるので気にしないでください。」と言われました。実際のところ、特に痛みは感じませんでしたので、ほとんど気にすることもありませんでした。
 秋口から症状が出始めた皮膚の湿疹も「温かくなれば良くなるのかなぁ」などと思いながら春を迎えましたが、症状が改善する兆候はでてきません。そこで、ふと、カテーテル治療のことを思い出しました。そして鼡径部を左右で触り比べてみました。すると明らかに左右で違いがあり、カテーテルを挿入した右鼡径部が大腿動脈の辺りを中心に全体的にゆるんで腑抜けのような状態でした。

カテーテル挿入による「ゆ」

 「やはり血管がゆるんでしまったんだ」と思いました。治療後の痛みは殆どありませんでしたから気にしていませんでしたが、カテーテルを挿入した部分の血管壁や、もしかしたら他の場所も、血管の筋肉層が弱い状態になってしまい、それで血液の流れが変わって皮膚に湿疹がでるようになったのかもしれない、と思いました。(このあたりの見解はあくまでも私感ですので、間違っているかもしれませんが。)
 それから毎朝ベッドから起きる前に15分間くらい自分でセルフケアをしていますが、不思議なことになかなか腑抜け状態は改善されません。血管そのもののゆるんだ状態も、その場では良くなるのですが、翌朝はまたゆるんだ状態になっているという状況がもう3ヶ月ほど続いています。

 私の母(80歳)は昨年の8月に心臓のカテーテル検査を受けました。その後、何かの症状が現れたということはありません。しかし、最近になってお腹が太ってきました。どちらかというと痩せ型の体型でしたが、この2~3ヶ月の間に「けっこう太ったなぁ」という印象です。
 母は10年ほど前にリウマチを患い左膝が変形してしまいました。その影響でこの2年ほどは杖を使って歩いていたのですが、いよいよ痛みがきつくなり、昨年10月に膝の人工関節置換手術を受けました。その後の経過は良好で、今は杖に頼ることもなく毎日よく歩いています。ですから運動量は以前より確実に増えました。食事の量が増えたわけでもないのに体型が太ったこと、それも退院直後から少しずつ変化してきということではなく、半年ほど経過した頃から、カテーテル検査から8~9ヶ月ほど経った頃から変化が現れてきたことを考えますと、私の場合と同じように、「もしかして血液の流れ方が変わり、その影響が表面化し始めたのが最近のことなのかな?」などとも思えます。

 カテーテルによる治療や検査と、私の皮膚湿疹、母の体型変化に直接的な因果関係があると思っているわけではありません。ただ、私のことで申し上げれば、カテーテルを挿入した場所の血管(右側大腿動脈)はゆるんだ状態になっています。そして不思議なことなのですが、同側の右側ではなく左側の頚動脈や橈骨動脈の血管がゆるんだ状態になっています。(橈骨動脈は、手首のところで“脈を測る”血管ところです。)そして右側はややこわばった状態になっています。
 血管の状態は自律神経の交感神経によってコントロールされますので、血管がこわばったり弛緩したりするのは自律神経の影響によるものと一般的には受け止められるかもしれません。しかし血管も筋肉でできていますから、神経支配とは関係なく筋肉自体の性質としてこわばった状態になったり、ゆるんだ状態になったりすることがあります。そして血管の状態は当然血圧にも影響を及ぼしますので、“血液の流れ”に変化をもたらします。私の場合は、右下半身と左上半身の動脈がゆるんだ状態で、左下半身と右上半身の動脈が少しこわばった状態ですので、全身の血流が“一様な状態”というわけではないと考えることができます。その状態が半年、1年と続いたために、皮膚に湿疹という形で歪みが現れたのかもしれません。
 実際、この3ヶ月ほどセルフケアを続けていますが、大腿動脈のゆるんだ状態はなかなか思うように改善しません。「ちょっとずつ、ちょっとずつ回復している」という感じでしょうか。単にカテーテルを挿入したところの問題なのか、あるいは薬剤を用いたのであれば、その影響によるものなのか、そのあたりはよく解りませんが、実感としては「血管の変調はそう簡単に改善するものではないのかなぁ」という感じです。

メスを入れた部分とメスの入れ方と
 再び私事ですが、18歳の時に臍のすぐ下、ベルトのバックルが当たる部分に“おでき”ができました。当時は野球を真剣にしていましたので、バックルに当たってしまう“おでき”は痛いので、とても邪魔な存在でした。
 我が家の家庭の医学では、“おでき”ができたときには、ある程度熟すのを待って膿を吸い出す薬( 「たこの吸出し」)を塗って、手指を使って膿を絞り出していました。ところが、その時には周りの人たちの勧めもあって聖路加国際病院に行きました。すると医師は何の躊躇もなく、巾2㎝くらいメスで切開して“おでき”の中身を出してしまう治療を行いました。アッという間の出来事でしたが、まだ若かったこともあってか回復も大変速く、バックルが気にならなくなったのも早かったように記憶しています。
 今の仕事に携わっていなければ、その時のことは全く気にならないことだったと思いますが、この仕事に携わってしまった今では「からだに悪いことをしたなぁ!」と思ってしまいます。たった2㎝程度の浅いメスの傷ですが、からだの正中線上を横に切ってしまったためにエネルギーの流れが弱くなってしまい、腹直筋の働きが今ひとつパシッとしない状態になっています。私の仕事の姿勢は前屈みが多いこともあってか、慢性的な軽い腰痛状態なのですが、「もしあの時メスを入れなければもっと楽だったかもしれない」と思っています。

任脈と切開

 東洋医学の見解では、からだの腹側正中線上を「任脈」と言いまして、生命力に密接に関係する大切なところとされています。「急所」がたくさんあるライン、と考えてもよいと思います。ですから、そこを傷つけてしまうことは“からだを弱めてしまう行為”と考えられます。あるいは、そこを大切にすれば「活力が高まる」と考えることもできます。インドの人が額の真ん中に赤いクムクムを塗ったり、アフリカの人が鼻輪をしたり、臍を飾ったりする伝統的な習慣は、おそらく活力を高めるための行為なのだと思います。ペンダントヘッドが首や胸の正中線上にくるように工夫されているのも、そのような意味があるのだと思います。
 最近は、ファッションとして臍ピアスをするために臍下に穴を開けている人もいますが、時々それが悪影響を及ぼしているのを見ることもあります。「ちゃんと理解した上でやってほしいな」と思ってしまいます。

 さて、以前にも申し上げましたが、からだのエネルギーの流れは基本的に縦方向です。ですから、メスを入れなければならないときは“縦に入れる”べきです。縦に切開するのであればエネルギーの流れを阻害する部分はとても小さくなります。私のように、たとえ2㎝であったとしても横方向にメスを入れてしまいますと、その2㎝巾でエネルギーの流れが切断されます。
 以前に、肝臓手術のために腹部を大きく横切るように切開された人が来店されたことがあります。腹筋をすっかり横切るように切開したこともあって、“まったく”と言っていいほど腹筋が働かない状態になっていました。そのシワ寄せが背筋の方にかかり、背中が盛り上がるほどガチガチになっていました。「ともかく切開したところにテーピングをして、少しでもエネルギーが流れるように工夫するしかない」そんな風にアドバイスしたと思います。
 薬局などで販売されているキネシオテープはエネルギーの流れを補助する意味で役に立ちます。テープかぶれの対策は考えなければなりませんが、もし腹部や背部、あるいは他のところでも、メスを入れた後が残っているようでしたらテープを縦方向に貼ってみてください。(メスの傷が横方向だからといって横方向に貼っても意味はないと思います。)それは筋肉の働きや機能を高めてくれると思います。



 私たちの通常の感覚では、細胞は新陳代謝によって再生されますので、ケガをしたとしても時間が経過すればすっかり元の状態に戻ると認識していると思います。おそらく90%以上は、その通りではないかと感覚的に思います。ところが、放って置いただけでは元に戻らないケガなどもあります。それは全体的に見ると数%かもしれません。その一つがメスによってできた手術痕です。その他には骨折によって傷ついてしまった骨膜、激しい捻挫によって伸びてしまった靱帯、産後のケアが悪く伸びたまま戻っていない骨盤底、ギックリ腰を繰り返したことによって働きがすっかり悪くなってしまった尾骨仙骨周辺の筋膜などがあります。これまでの私の経験で申し上げれば、それらは何十年経っても機能の悪いまま残り続けます。
 「10年前に出産して以来、ずっと腰痛」というのは骨盤底が戻る時期を逸してしまい骨盤が不安定なまま放置されているという意味です。
 また、40年前の捻挫、20年前の手術が、「これまで何ともなかったのに今頃になって影響が現れるの?」と質問を受けることがありますが、「若く体力のあるときは、そこの働きが悪くても他の部分がその働きを補ってくれていたのですが、体力の低下によって自分の仕事で精一杯になり、補う力がなくなってしまったために、昔の古傷の影響が急に表面化してきたのでは‥‥」と考えることができます。

 これらのマイナス面に対しては、積極的に改善を促さなければなりません。じっと待っていても自然治癒しません。つまりケガの90%以上は自然治癒力で改善しますが、数%は自然治癒しない可能性があるということです。
 これまでたくさんの人たちを施術してきての率直な見解です。
 反面、「この不調は一生ものかな」と感じていたとしても、古傷をしっかり改善することで不調が消失してしまうこともあります。
 一般的に病院等では、傷が癒えて痛みが消えれば、それで「治癒した」と判断されるのかもしれません。足首をねん挫したとしても、腫れが引いて、足首を動かしても、歩いても、走っても痛みを感じなくなれば、それで完治ということになってしまうと思います。ところが「機能が不十分な状態」で治療が終わってしまっていることはよくあることです。そして、それが原因で歯ぎしり癖になってしまった、というのもよくあることです。伸びてしまった靭帯をしっかりさせて足がカシッとした状態に戻すことで歯ぎしり癖がなくなったりすることもあります。

 今回は手術痕をメインに話をさせていただきましたが、ケガやギックリ腰や産後の不調などにも共通事項があります。何か心当たりのある方は、是非、専門家に相談されて積極的に対処されることをおすすめします。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
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 普段は海外で暮らされている方が次のような質問をされました。
 「向こう(西欧)で週3回ほどのペースでジムに通っているのだけれど、コーチに指導されて、お尻を突き出して中腰になり、膝を90°曲げたような姿勢をつくろうとするのだけど、太股の裏がきつくてきつくて。どうしてできないのだろう?」
 さらに、「いつも猫背を指摘されるだけれど、どうやったら猫背を直すことができるの?」

中腰


 外国の人たちに比べると我が国の人たちの姿勢は猫背が多く、お尻が下がっている人が多いと言えるかもしれません。私は外国の人では、中国人、韓国人、ブラジル人、フィリピン人のほんの少数しか施術したことがありませんので、もしかしたら間違った見解かもしれませんが、韓国人以外の他の国の人たちは明らかに日本人の体型とは違う印象を持っています。韓国の人も似ているようでやはり少し違うかもしれません。
 そして街で見かけたり、テレビなどを通じて目にするアメリカやアフリカの人たちは、やはり私たちとは体型的にまったく違うことがわかりますが、一番の違いは“骨盤の在り方”なのかもしれないと思っています。
 俗な言い方で表現しますと「外国人はお尻がプリッと上がって大きく、脚が長い」となると思いますし、それに比べて私たちは「お尻が下がって胴長で、ジーンズ姿も今ひとつ冴えない」となるのかもしれません。しかし、反対に着物姿は「やはり日本人が最高」だと思いますし、それは私たちの民族的な体型によるものかもしれません。お尻がプリッと大きな外国人の後ろ姿には帯は似合わないように思います。

お尻が下がるのは仙骨が後傾しているため
 一般的に、日本人は骨盤が後に傾きやすい(後傾)傾向にあると言われています。実際施術をしている実感からしても骨盤が後傾している人が多いですし、それがお尻が下がって見える一番の理由だと思います。

骨盤基礎01

骨盤基礎02

 骨盤は、真ん中に仙骨と尾骨があり、その両側に完骨がつながったものです。後面には仙腸関節があり、前面は恥骨結合があります。
 完骨は、その昔バラバラであった腸骨と恥骨と坐骨が癒合して一つになったものですので、骨盤の話題になったときには仙骨と腸骨の関節である「仙腸関節」、座った時に骨盤が座面にあたる「坐骨」という言葉がしばしば登場します。そして骨盤の底にあって、子宮や膀胱など骨盤内臓物や小腸など内臓が下垂しないように支える強力な筋肉や筋膜がありますが、それらを総称して「骨盤底筋」と呼んでいます。そして、その代表的な存在として「会陰」があります。

会陰01

 骨盤の特徴の一つとして、仙骨が前傾すると骨盤底(坐骨結節間)が拡がるという仕組みがあります。反対に仙骨が後傾すると骨盤底が狭くなり、骨盤底が狭くなると仙骨が後傾するという仕組みです。実感として表現しますと、仙骨が前傾している人はお尻の形が「ハの字」であり、仙骨が後傾している人はお尻の形が「逆ハの字」になっています。

呼吸と骨盤との関係

 普通の状態であれば、骨盤は呼吸に合わせて少し動きます。息を吸うとき、仙骨は下がり(後傾する)ますが、同時に骨盤上部が拡がって骨盤底が狭くなりますので、左右の坐骨間の距離は短くなります。息を吐くときはこれとは反対に動きますので、骨盤底が拡がって仙骨が前傾するように動きます。
 つまり筋肉の状態がおかしくなければ、仙骨が前傾した状態では骨盤底が拡がり、仙骨が後傾した状態では骨盤底が縮んだ状態になります。あるいは、骨盤底が硬くなって縮むと仙骨は後傾し、骨盤底が広がった状態になれば仙骨は前傾しやすくなるということになります。

骨盤の前傾と後傾比較

 この骨盤の仕組みを元に、私たち日本人が外国の人たちに比べて骨盤が後傾し、お尻が下がっている理由を考えますと、「息を吸うことばかりしていて息を吐くことが上手くない=緊張度が高い、交感神経の働きが優位」あるいは「生活様式として会陰を収縮することが多くて骨盤底を硬くしやすい」、「民族性として元来骨盤が後傾している」などが思い浮かびます。
 昔の日本人の生活様式は正座を中心とした着物の生活でしたでしょうから、女性は内股になりやすいので骨盤が後傾しやすいことは理解できます。(O脚と内股の状態は骨盤が後傾してしまうという仕組みがあります)しかし、正座は骨盤底を伸ばす座り方ですので、正座の習慣によって骨盤底が硬くなるというのは考えにくいことです。
 私たちは他の国の人たちに比べて勤勉で真面目だと言われていますが、それは反面、緊張気味で、交感神経が優位の状態で日々を暮らしているということに繋がります。ですから息を吸った状態=骨盤底が狭い状態で生きている傾向がある、と考えることもできます。
 そして民族性として「本来の体型が骨盤が後傾気味」だという考え方に立てば、そのことによって息を吐くのが苦手で、交感神経が優位になりやすいので緊張気味の人生となり、体型的にも内股やO脚になりやすい、と考えることができます。反面、着物姿が「様になる」なるわけですが。

姿勢を正すことは背筋を伸ばすこと?
 普段の自分の姿勢が悪いと感じている人は、姿勢を正そうとするとき「背筋を伸ばす」ことをするようです。それは‥‥つまり、背中に力を入れて背筋を収縮させることなのですが‥‥無理のある不自然な動作と言えます。意図的に背筋を伸ばして座り続けるのは体操疲れますし、自ずと首や肩や顔に力が入ってしまいますの良いことではありません。
 パソコンやスマホやタブレットの操作、その他手作業を主体としている人はどうしても首と肩が前に出た猫背の姿勢になりやすいのですが、気をつけて欲しいことの一つに「骨盤が寝た状態にならない」ことがあります。「骨盤が寝る」というのは仙骨を含めて骨盤が後傾することなのですが、必然的に腰椎も丸くなって後弯するようになります。

 本来、仙骨近くの腰椎は前弯しています。普通の状態の人は座った状態で上半身を後に反らす動作をしますと、この仙骨近くの腰椎下部のところを支点として上半身が後方に倒れるようになります。こういう人は、姿勢を正そうとするときには、背筋を伸ばすのでは無く、骨盤を立てる、つまり仙骨を前傾させるようにします。すると腰椎下部で前弯が起こりますので、自ずと背筋は真っ直ぐになりますし、前に出ていた首も戻り、顎が自然と引かれた状態になります。「下腹部がしっかりして腰に上半身を乗せることができる」あるいは「骨盤に上半身を委ねることができる」状態になりますので、背中には力が入りません。顎もゆるみ首の力も抜けます。
 ですから、正しい姿勢に戻す(=姿勢を正す)とは仙骨を前傾させて骨盤を立たせ、坐骨結節部で座る状態になることだと言えます。ところが、猫背+背中(腰椎も)の丸くなった人は腰椎の前弯が失われていますので、骨盤を立てて座ることが辛くなります。座った状態で上半身を反らそうとしますと、背中の中間地点くらいでやっと脊椎を反らすことができる感じで、骨盤近くの腰部はなかなか動かせません。

 さて、このような状態の人でも、お尻の横(外側)から座面と坐骨の間に手を入れて坐骨を外側に引っ張り、左右の坐骨結節間の距離を拡げますと(=骨盤底を拡げる)、骨盤を立てることが比較的容易になり、腰椎下部で前弯が生まれるので背中に力をいれなくても背筋が伸びるような感覚を味わうことができると思います。
 つまり、骨盤底に柔軟性が戻れば骨盤を立てて座ることが容易になり、仙骨が前傾して下腹部に力が集まるので首や肩から力が抜けるようになります。そして自ずと背筋が伸びて姿勢が良くなります。
 ですから姿勢を正す動作とは背筋を伸ばすのではなく、仙骨を前傾させて骨盤を立たし、骨盤底が拡がるようにすることだと言えます。
 骨盤底の硬い人は最初のうちはなかなか思うようにはできないと思いますが、練習してどうにか“感じ”をつかんでいただきたいと思いますし、併せて骨盤底に柔軟性と力を取り戻す運動をしていただきたいと思います。

骨盤底の柔軟性を取り戻すために
 骨盤底が硬くて骨盤が後傾している人に対して、骨盤底をほぐすような施術を行うことがあります。すると、骨盤底をゆるめているにもかかわらず「頬や肩から力が抜けていく」という反応を得ることがあります。つまり、顔や肩に力が入ってしまう原因の一つとして骨盤底の硬さ(=こわばり)があるということです。
 以前にも紹介しましたが、私は骨盤底のトレーニングとしてバランスクッションを使うことを勧めています。骨盤底には骨盤底筋と呼ばれる幾つかの筋肉があります。そしてそれらの筋肉と筋膜は総体として会陰を形成していますが、会陰は顎関節と対称する関係になっているようです。
 「会陰がゆるむと顎関節もゆるむ」「顎関節がゆるむと会陰がゆるむ」「会陰がしっかりすればそしゃく筋もしっかりし、全身の筋肉がしっかりする」。反対に「噛みしめや歯ぎしりの癖などで顎関節がおかしな状態になると会陰も硬くなって柔軟性を失い、骨盤はさらに後傾する」という仕組みのようなものがあります。

 会陰の働きが悪い人は、例えば両足とも床から浮いてしまう高い椅子などに座って、骨盤の力を主体に右のお尻に重心を移したり左のお尻に重心を移動したりして片方のお尻にすっかり体重を乗っけて座る動作を繰り返すことが苦手です。つまり会陰の筋肉(=骨盤底筋)をつかって自分の重心を移動させることが上手くできません。この動作ができないので首を振ってみたり、骨盤より先に肩や腕を動かして重心移動させようとしてしまいます。そして、実際このような人は大変多いです。「会陰の筋肉が働いている実感」が味わえません。
 筋肉を鍛えるためには「使っている実感」が必要です。その実感を味わうために、バランスクッションを使用することを勧めています。バランスクッションは座ると不安定な反面、重心移動が容易です。簡単に右のお尻から左のお尻に重心を移すことができますが、この時の会陰の動きを感じて欲しいのです。

バランスクッション 体幹クッション

 注意事項も含めて使い方を説明しますと
 「骨盤の動きに上半身が抵抗しないようにしてください。バランスが崩れて倒れそうになったら手をついてもいいですから、上半身をくねらせて抵抗して欲しくないのです(右に倒れそうになったとき、首や肩を左に曲げて倒れないように抵抗するなどの動作をすると会陰が動いて要る実感が薄れてしまうので)。クッションの動きにすっかり身を委ねて欲しいのです。そして会陰がどのように働くかを観察してください。」と言っています。

会陰トレーニング

 最初は不安定でバランスが取れないので上手くできませんが、すぐに、何分もしないうちにできるようになると思います。そして、何分間か左右に重心を移す動作をしたり、あるいは回転させて会陰が上下左右に働くことを感じていますと、会陰は柔軟性を取り戻します。バランスクッションを外して、普通に座りますと、それまで座っていた感覚とは明らかに違った感じになると思います。会陰が拡がったため「逆ハの字」だった骨盤は「ハの字」に近くなり座面が拡がったように感じると思います。そして仙骨を前傾させることが容易になるため自然と背筋は伸びた状態になると思います。

 尚、バランスクッションを使わずとも上記のような運動はできます。ただ先ほども申し上げましたが、間違えやすい点は、自分では会陰を使って重心移動させているつもりでも、実際は頭や首や肩や腕を動かすことによって右から左へ、左から右へ上半身を動かしているだけになってしまうのでは、会陰の動きが取り残されて後から付いてくるような感じになってしまいます。これではトレーニングの意味はありません。
 その他の運動としては、「外人さんのようにお尻をプリプリさせながら歩く」というのも会陰を鍛えることになります。お尻をプリプリさせながら左右の骨盤や下半身に、交互に体重をすっかり乗せきって歩くのは、会陰の働きがなければ可能になりません。
 「お尻の穴をしめる」というのは骨盤底筋の一つ肛門括約筋を収縮させることなのですが、それも会陰を鍛える手段の一つです。街を歩いている人をよく観察しますが、会陰を働かせながら=お尻をキュッ、キュッとさせながら地面を軸脚で蹴って進んでいる人はとても少ないです。多くの人が、上半身が前に行くの合わせて脚が後からついてくるような歩き方をしています。これでは、骨盤底はまったく鍛えられないと思います。

 私はよく「モデルさんのように一本のラインの上を腰を捻りながらゆっくり歩いてみてください」と言って、お客さんにやってもらいますが、思いの外、皆さん上手くできません。
 極端に表現しますと、膝から下ばかりで歩いている人は、腰を使って歩いているわけではありませんので(内股歩きが良い例)、腰部の柔軟性に欠けますし、会陰を鍛えることとは無縁の歩き方になっています。“モデル歩き”は、腰を捻って(実際は脇腹に捻りが生まれる)軸脚(後ろ脚)に重心を残したまましっかり立っていられる状態でないと前脚を一本ラインの上に乗せることができません(綱渡りような状態)。この時軸脚のお尻と会陰は収縮しますので、骨盤底を鍛える訓練になります。



 さて、冒頭の外国暮らしの方ですが、この方の骨盤底がこわばっていた主な理由は幼い頃から股関節の状態が悪く内股であったことと、腰椎の4番が捻れていたことでした。そして腰椎の捻れの原因は右手の小指と薬指にあって、一歳の頃の写真を見せていただいたところ、乳母車の取っ手を握る右手が少しおかしかいことから本当に小さいときの出来事が原因だったと思われます。
 いろいろなところを調整して、右手を念入りに調整したところ腰椎の捻れが軽減し、例の苦手のポーズが楽にできるようになりました。あわせて噛みしめの癖も改善し、ひどかったドライアイも改善しました。
 腰椎の捻れが良くなったことで会陰のこわばり状態が改善したため、からだが楽な状態になったのだと思います。
 骨盤も骨盤底も大切です。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 「体幹を鍛える」という言葉をご存じの方も多いと思います。からだの見方の一つとして、「体幹と四肢に分けて考える」というのがあります。
 体幹の正確な意味については幾つかの解釈があるようですが、四肢は上肢(腕~手)と下肢(太股~足)のことですから、体幹はそれ以外の骨盤から頭までの胴体を指していることになります。

 これまでの投稿で、「首や肩や手に力が入り、歯を噛みしめるなど顔に力が入っている人は不調になりやすい」というような説明をしてきました。そして「骨盤を中心にした腹部や腰部がしっかりしている方が健康を維持しやすく、リラックスして生きることができる」というようなお話しをさせていただきました。
 これらの説明については、その通りであると今なお考えております。そしてこれらの説明の中には精神的、心理的ストレスという要素も含まれていますが、今回は少し見方の角度を変えて肉体的な側面を中心にした内容です。

 今、糖尿病と闘っている方が定期的に来店されています。この方を仮にAさんとお呼びしますが、Aさんの糖尿病は遺伝的要因によるものが大きいとのことです。糖尿病の病態についての知識は私にはありませんので、Aさんの病状の進行状況がどのくらいなのかについては私には云々できません。ただ血糖値が250~300(食後は300以上)、尿タンパクが+2で、糖質制限を何日か続けると血糖値が200以下になるとのことです。遺伝性ということもあり、本人は病態の変化を日々とても気に掛けています。その他に、Aさんは幼い頃に鼡径ヘルニア(脱腸)を患ったとのことです。(手術はしていない)

 Aさんの整体的な面での一番の特徴は、ふくらはぎと太股が異様に張っていることです。本人は幼い頃から運動が苦手だったということで、現在も殆ど運動はしていません。仕事では「立っている時間は長いが、立ちっぱなしというほどでもない」とのことです。これまで立ち仕事の人はたくさん見ていますので、立ち続けることによるふくらはぎの張り感はよく知っています。しかし、それらとは質が違う感じで、ふくらはぎがパンパンに張っています。
 そして上肢である腕も硬く、肘から先(前腕)はふくらはぎ同様パンパンです。つまり四肢の筋肉は非常に強くこわばった状態になっているということです。
 対して体幹はまったく反対の感じです。体型的には腹部がゆるんで前に出た「お腹の出た人」なのですが、胸(胸郭)の厚みは薄く、肋骨が終わったあたりから筋肉のたるみが顕著となり、下腹部にはまったく力感が見られない状態です。鼡径ヘルニアの影響もあって臍の形が普通の人とは違い、臍から右鼡径部にかけて筋肉のゆるみが一層顕著に感じられる状態です。

体幹と四肢の関係(エネルギーと筋肉の変調)

 Aさん来店の当初の目的は、呼吸が悪いことと右足に上手く体重を乗せることができない状態を改善したいというものでした。糖尿病の体質改善を期待していたわけではありません。ところが、何度か施術を行っていますと、「施術した翌日は血糖値が良くなることがある。しかしその次の日はまた戻ってしまう」という話題になりまして、右足の状態も良くなった今、「体質改善に取り組みましょう!」ということになりました。

 あくまでも一般的な話ですが、健康な人は下腹部に力があります。「臍下丹田(せいかたんでん)」という言葉もありますが、下腹部が充実している状態が理想的です。お腹の状態は、みぞおち付近の胃のあるところが一番柔らかく、手を沈ませるように差し込んでいったとき、背中側まで届いてしまうくらい柔らかいのが理想です。大人でこのような人は稀にしかいないかもしれませんが、胃が空腹時の子供達にはこのような状態がたくさん見受けられると思います。そして下腹部に向かうに従って次第に硬くなり、臍下三寸、臍下丹田の辺りは、差し込もうとする手をしっかり跳ね返してくるくらいしっかりしているのが理想的だとされています。

 少し話は飛びますが、私たちの肉体は脊椎動物が最高に進化したものだと考えられています。脊椎動物の始まりは、今なお東北地方でよく食べられている海鞘(ほや)の仲間だったということで、まだ頭と尻尾が分かれていない海中動物だったということです。これをイメージ的に表現しますと、私たちの骨盤と頭部がくっついていて、一体化していた生物です。
 やがて時の流れとともに、骨盤から次第に頭部が離れていき(頭進という)、間に背骨(脊椎)ができました。ですから脊椎動物と呼ばれるわけですが、この状態は魚であり、「私たちの太古の祖先は魚だった」と言われる所以です。

海鞘

 そしてここで重要なことは、骨盤から頭部が離れていったことです。頭部から骨盤が離れていったわけではありません。骨盤が始まりなので、骨盤が肉体の中心になります。ですから、私たちは骨盤を中心とした腰部と下腹部がしっかりしていないといけないのです。
 私たちはいろいろな動作を行いますが、動作に必要な力は骨盤からやって来る力(エネルギー)でまかなわれるのが自然な状態です。今、私はパソコンのキーボードを叩いていますが、この指先を動かす力は骨盤や下腹部からやって来ます。ですから、実際には手指を動かしているのですが、手指を意図的に使っている感覚もなく、手指がそれほど疲れることもありません。頭を使い、目を使っていますので、それらが疲労して肩がこることはあっても、手指に疲労を感じることはありません。
 ところが、いろいろな理由から下腹部からの力ではなく肩や腕の力を使ってキーボードを操作せざるを得ない人がけっこういます。そういった人は“指を動かすのに手指に力を入れなければならない状態”にならざるを得なくなります。「思わず首や肩や手に力が入ってしまう」のです。ですからパソコン操作の時間が少し長くなりますと手や腕や肩や首に疲労を感じますし、字を書いたり、あるいはスマホを操作したりするだけでも疲労を感じるかもしれません。

 “ギックリ腰”については諸説ありますが、私は骨盤の更に中心部、尾骨と仙骨の境界辺りが肉離れのようになった状態だと考えています。つまり”ギックリ腰は骨盤の傷”です。その傷が手や足などの末梢部分であれば、部分的に不具合や痛みを感じるかもしれませんが、全身的にはさほど大きな問題にはなりません。しかし、その傷が骨盤の中心部になりますと話はまったく変わります。骨盤が上手く機能しなくなってしまいますので、中心部からの動作に必要なエネルギーが途絶えてしまうのです。するとそれまで無意識的にできていた動作の多くが意識しないとできなくなりますし、足や腕や首などの力をたくさん使わないと動作ができなくなりますので、全身はとても疲労するようになります。ギックリ腰を経験しますと骨盤の機能と力が如何に重要であるかが身をもって理解できるのではないかと思います。

 さて、話をAさんに戻しますが、Aさんの下腹部の力は大変弱いものです。筋肉で説明しますと腹筋がとてもゆるんで働きの悪い状態です。腹筋には、皆さんがパッとイメージを浮かべやすい腹直筋と、腹部を斜めに走る外腹斜筋と内腹斜筋、そしてお腹にサラシを巻いて腹圧を受け止めるような働きをする腹横筋(最深部)がありますが、とりわけ腹横筋の働きが悪いのかもしれません。これはもしかしたら先天的な体質的であり、腹圧に対抗できなくて鼡径ヘルニア(脱腸)になってしまったのかもしれません。

腹筋_前面

 お腹がゆるんで大きく前に出ているAさんですが、胸郭の方は厚みがなく、筋肉が硬くなって動きが悪くなっている状態です。呼吸をしていても胸郭の動きは弱々しいのですが、その主な原因は肋骨と肋骨の間にある内肋間筋が硬くこわばっていて、息を吸うときに肋骨を引き上げることができないからです。胸郭は常に息を吐いた時の状態になっているのですが、さらに胸の前面を広く占めている大胸筋もこわばっているため、胸郭の動きがとても制限された状態になっています。

大胸筋と肋間筋

 大胸筋は腕(上腕)に繋がっている大きくて強力な筋肉です。腕立て伏せを行ったり、何かを押したりするときに使われる筋肉ですので上肢を動かすための筋肉であると言えます。
 そして先ほど申しましたように、腕の筋肉、特に肘から下(前腕)が強くこわばった状態でパンパンです。仕事で手作業を多くしているわけでもないのに腕がパンパンになっている状態で、それは昔からだと言います。

 ですからAさんは、 体幹の中心である下腹部がエネルギー不足で「ゆるゆるの状態」、四肢は反対にこわばって「カチカチの状態」という状況です。
 繰り返しになりますが、四肢は体幹からエネルギーをもらって働くのが本来の姿、自然的な在り方です。しかしAさんはエネルギー源である体幹がエネルギー不足の状態ですので、四肢はそれぞれに自己の力に頼って働かなければならないため、負担が過剰になりこわばった状態になってしまっているということです。
 この状況は理解しづらいかもしれませんので例え話をしますと、包丁を使って硬い食材を切る時に、両足がしっかり地面に着地した状態であれば、からだ全体の力を使って食材を切ることができますので、手や腕だけに負担を強いることはありません。しかし、椅子に座って足が宙に浮いた状況で包丁を使おうとしますと、からだの力を動員することはできませんので、腕と手にたくさん力を入れなければならないためそれらの筋肉が硬くこわばってしまいますが、これと同じような状況だということです。

 実際Aさんは、何十年もこのような状態で生きてきましたので、そのエネルギーの流れ方を変えるのは容易なことではありません。施術を行い、お腹を整え、脱腸したであろうところを手当てし、胸郭を整えて呼吸が上手くできるようにするなど体幹を整えますと、自然と四肢から力が抜けて楽な状態になります。「まずまず上手くいったかな?」などと思い、ベッドから起き上がっていただき立ってもらいますと、また速やかに四肢にこわばりの兆候が現れだします。
 立ち方も歩き方も良くなって、血色も良くなり、呼吸の状態も良くなるのですが、体幹がゆるんで四肢がこわばり出す兆候はそう簡単には解消されません。

 「エネルギーの流れ方を変えることで、からだの使い方を変えるのが私の仕事」と、最近はずっと思っています。Aさんの場合も、四肢の運動が体幹からの力(エネルギー)で行えるようにエネルギーの流れ方を変えることができれば、糖尿病の改善にも役立つことができるのではないかと考えています。
 現に施術をおこなった次の日は血糖値が良くなるとのことですし、幾度か行ってきた施術の甲斐があってか尿タンパクの方は改善したようで、+2だった数値が安定して+1になっているとのことです。背中を指圧するといつも痛がっていた右側の肝臓や腎臓のあたりも痛みを感じなくなりましたし、腫れぼったさもなくなりました。
 血糖値は高めで推移しているものの顔色も良く元気さも出てきていますので、良い方向には向かったいるのだと思います。もうしばらく同じような施術を繰り返すことで、体幹がしっかりした状態が安定すれば、きっと「良いことになる」と思っております。

 さて、Aさんの例を引き合いに出して体幹と四肢の関係を説明してきましたが、肉体的な面で体幹が充実していることは、健康を築き、健康を維持する上で大切なことだと考えています。体幹がしっかりしていれば「楽に暮らす」ことが実現できると思います。
 足やふくらはぎが気になる人は体幹を見直す必要があるかもしれません。手や肩から力が抜けずリラックスできない人は体幹の在り方を考えてみるのも一つの方法だと思います。かといって「体幹を鍛える」「体幹のトレーニング」といった類の特別な運動やトレーニングが必要だということではありません。
 体幹を鍛える運動としては、私は“骨盤底筋”を使うことをお勧めします。以前にご紹介したバランスクッションやバランスボールに座って骨盤を動かしていれば骨盤底筋の運動になります。骨盤底の中心には“会陰”がありますが、“すべての動作を会陰から始める”というような感覚が養われれば素晴らしいことだと思います。
 ピラティスや加圧トレーニングやヨガなどいろいろありますが、「それよりも骨盤底筋(会陰)が大切」と思ってしまいます。

 今回は“肉体面のみ”という限定的観点で、体幹と四肢の関係について説明させていただきました。しかし、実際には、私たちには心があり、脳がありますので、それらによって生み出される精神活動にからだは大きく影響されるという実態があります。
 それまで20分くらいかけて施術を行い肩こりを改善したとしても、心配事や不安に心が支配された瞬間にまたキューッと肩が張ってしまったり胃が痛くなってしまったりすることはよくあることです。
 随分前の投稿になりますが、「首・肩・顔から力が抜けない」という話題で説明させていただきましたが、それらは心理や思考といった精神面と密接に結びついていまし、癖の一種でもありますので本当に強敵です。
 精神面が及ぼす肉体への影響についても、これまでとは違った角度から取り上げてお話しさせていただきたいと考えています。

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 数年前、女子サッカーの代表選手が「良性発作性頭位めまい症」という病名の“めまい”で苦しんでいたこともあって、めまいについての情報がある程度認は知られるようになったようです。

 常連のお客さんがしばらくぶりに来店され「めまいで苦しんでいたのよ!」「あのサッカー選手と一緒よ」と仰いました。
 「めまいなら、すぐに来れば良いのに」と私は心の中で呟きながら応対しました。
 “めまい”や“ふらつき”の場合は、まずクリニックなどに相談して、それでも上手くいかなければMRIなどの画像診断で脳の状態を確認する、という手順を踏むというのが多いのかもしれません。それは正しいことだと思います。まずは重大な病気でないことを確認して安心することが第一で、そうするだけで症状が軽減するかもしれません。

 さて、“めまい”や“ふらつき”についてはこれまでにも幾度となく取り上げてきましたが、内容を整理する意味も含めて、整体的な観点で改めて考えてみます。(ただし脳の病変は除いて)

循環不良によるものなのか? 器官の機能が異常なのか?
 “めまい”や“ふらつき”と言った症状を訴える人が来店された時に、私が先ず確認して行うことは、血液が不足して機能がおかしくなっているのか、血流は足りているけれど機能そのものが異常な状態にあるのか、という観点で区分することです。

①脳への血流が悪く、必要な血液が足りない状態(≒酸欠状態
 椅子に座った状態から立ち上がったときに瞬間的にクラッとしたり、目の前が暗くなったりする起立性低血圧あるいは脳貧血という症状があります。立ち上がることで頭の位置は高くなったのに、血液が脳まで昇るのに時間がかかってしまうため、一時的に脳が貧血状態になって機能の一部が麻痺状態になってしまう症状です。血圧が低かったり、高齢で心臓の瞬発力が低下していたり、首肩のコリが激しくて脳への血管が圧迫された状態の人はこのようになることがあると思います。
 起立性低血圧症は一時的な症状ですが、恒常的にこのような状態になってしまいますと、つまり脳への血液供給が不足した状態になってしまいますと、起き上がっているだけで“めまい”や“ふらつき”などの症状を起こしてしまう可能性があります。寝た状態では脳に血液が届くので大丈夫ですが、起き上がると血液が届きにくくなり、立ち上がるとさらに届かないので、クラックラッ、フワッフワッの状態になってしまったり吐き気を伴ったりするかもしれません。

心臓から頭部の血管

 ある高齢者が「立ち上がるとフワフワしてしまうけど、歩いているうちにだんだん症状は良くなる」という症状を訴えました。つまり、立っているだけでは脳への血液が不足しがちですが、歩くことで血液循環が良くなりますと脳に必要な血液が届くようになる、ということです。
 また、別の高齢者は「朝方は大丈夫だけど、仕事をしていて夕方になるとフワフワしてしまう」と訴えました。この方は若い頃から現在に至るまでずっと、つまり先天的な低血圧症です。仕事で疲労が溜まる夕方になると、からだの活力も乏しくなり、心臓や血管の力も衰えて血液を頭頂まで十分に上げることができなくなってしまうのかもしれません。

 極端な例ですが、小脳や脳幹の脳梗塞を患いますと後遺症として足と頭が一致しないような症状になることがあります。寝たり座ったりしているときは大丈夫なのですが、立ち上がって歩いたり作業をしたりしますと、足元がふらついてヨロヨロしたりフワフワしたりしてしまいます。バランス調整に関係する小脳へ血液が届かないからだと考えることができます。

 これらのように脳に十分に血液が届かないでもたらされる症状に対しては、「どうすれば血液が十分に届くようになるのか?」というのが解決策ですが、実際の臨床ではなかなか難しいことのようです。“めまい”や“ふらつき”に対して「ビタミン剤を処方して血液の流れを良くする」という方法がしばしば用いられるようですが、「???」と私は思ってしまいます。それではあまりにも芸がなさ過ぎなのではないでしょうか。(かつて私は顔面神経麻痺を患ったことがありますが、その時も耳鼻科でビタミン剤が処方されました。しかし薬が効いたという感覚はありませんでした。)

 心臓の働きが弱いとか、体質的にかなりの低血圧だという場合は対策がなかなか難しいかもしれません。心臓に負担が掛かりすぎないように注意したり、疲労が蓄積しないように気をつけることは肝要だと思います。整体的手法として心臓や血管の働きを補助し、血流をアップする方法が無いわけではありません。私は時々行ったりしますが、「確実性」という面では何とも言えませんので、ここでは取り上げないことにします。

 脳への血液供給は、心臓のポンプ力で首の動脈を昇らせるわけですから、首の動脈が圧迫されていたり、あるいはその他の理由で流れが悪いと血液供給が十分ではなくなる可能性があります。
 首肩の強いコリは血管を圧迫するため循環不良の原因になる可能性があります。少し前の投稿で説明しました「椎骨動脈の流れ」はとても影響すると思います。それ以外に、「動脈の流れは静脈の状態に影響される」という整体的観点の見方があります。むくみなどで静脈血の流れが停滞していますと“渋滞状態”で動脈血が入っていけないというものです。
 これらのことを細かくチェックしていきますと、脳への血液供給量を増やす方法は見えてくると思います。

②血流の問題ではなく、機能の問題の場合
 めまいに関係する器官として真っ先にチェックすべきは内耳の平衡器(三半規管)です。「耳石が悪さをしている」と診断される場合もありますが、それ以外に「耳がずれている」というのもあります。また「頚椎が歪んでいる影響」というのもあります。
 私たちも含め、地球上の生物は海(水中)で誕生しました。ですから、すべての代謝や反応や機能は水の中で行われるようにできています。
 三半規管は「内リンパ」と呼ばれる水で満たされています。頭が傾くことによって耳石が動き、内リンパに流れが生じますが、それを感覚細胞が察知して平衡感覚が維持されるようにできています。ですから「リンパ」「水」というキーワードはとても重要です。
 「耳がずれる」というのは頭蓋骨が歪んでいるため、耳(内耳も含む)のある側頭骨が本来の位置からずれているということです。そして、このような人は本当にたくさんいます。(左右の耳がまったく正しい位置にあるということは殆ど無いと言ってもよいと思います。)
 おそらく、からだのすべての器官について言えることだと思いますが、許容範囲内での“ずれ”は“症状”という問題を起こすことはないと思います。しかし、許容範囲を超えたり、あるいは“ずれ”が幾つか重なってしまうと“症状”が現れるのだと思います。

 さて、内耳を含む側頭骨が歪みますと、静脈とリンパの流れに影響が出ます。それは膝の関節がずれると膝に水が溜まってしまうのと同じ原理です。ここで「リンパ」というキーワードが登場します。「内リンパとリンパは違う」という見解を示される方がきっといらっしゃると思いますが、私はそのように考えず施術を行っています。側頭骨の状態を修正し、耳の周りの筋肉や筋膜の状態を整えます。そうすることで耳周辺のリンパの流れが良くなり、内リンパの状態も改善し、三半規管の機能が正常な状態に戻ると考えるからです。
 そして同時に頚椎の歪みを整えます。「頚椎4番は耳に関係する」という整体的な見解があります。「どうしてそうなのか?」という理由については知りませんが、実際の現象としてそういうことが多いので、私はこの見解を支持して採用しています。
 一通り施術を行った後で、頭を振ってもらい、筋力検査を行います。平衡器官の働きにバランスが戻りますと、頭を振った直後でも筋肉の働きに影響はでません。少しでも筋肉の働きが低下するようでしたら、それはまだ「めまいの種は残っている」と判断して、施術を継続するようにします。

 ところで、このように機能を整えたとしても、座ったり、立ち上がったりするとおかしくなってしまうことがあります。①で説明しました「血流」のこともありますが、それ以外に骨盤や下半身に問題がある場合があります。
 「座った時に症状がでる」ということは、骨盤や坐骨に荷重が掛かるとからだの機能がおかしくなる、つまり骨盤がからだをしっかり支えられない状態にある、ということを意味します。「立ち上がったときに症状が出る」場合は、股関節、膝関節、足関節(足首)などに問題があって、しっかり立つことができないということを意味します。

足と頭の連係
 目から入る視覚情報は平衡感覚の安定性に貢献しているようです。普通に立っているときは大丈夫でも、目を閉じると不安定になってしまったり、真っ直ぐに立っていることができなくなってしまう人がいますのでこのことがわかります。比率的には高齢者の方に多いかもしれません。
 ところが、このような人でも座った状態では大丈夫だったりします。ですから視覚情報は直接平衡感覚に影響を及ぼすというより、足のバランス感覚を調整することを通じて平衡感覚に貢献しているのかもしれません。(但し、視覚障害の人でも平衡感覚に問題のない場合が殆どでしょうから、視覚情報は平衡感覚維持にとって必要条件というわけではないのでしょう。)

 では、足の状態が平衡感覚に影響を与えるか否かについてはどうでしょう? 
 冒頭に登場していただきました常連の方に対して、めまいに対するいろいろな施術を行った後でベッドから立ち上がっていただきました。症状は良くなったものの、今一つしっくりしない表情を浮かべました。「ふらつきもないし、フワフワもしないけど、何となく安心できない」という感想です。そこで「これは足の問題が残っているんだな‥‥」と思いまして、膝や足首や足の状態を詳しくチェックしてみました。すると右の膝関節が少し歪んでいることがわかりました。
 それを調整して、再び立ち上がっていただきますと今度は表情も晴れて、安心した様子になりました。足の不安定さが安心感も含めた平衡感覚に影響を与えていたということです。

 さて、膝や足首の悪い人はたくさんいますが、それらの人が全員、平衡感覚に問題を抱えているというわけでありません。ですから「膝や足首がおかしくなると“めまい”や”ふらつき”を起こす」という考え方は間違いということになります。
 しかしながら“めまい”や“ふらつき”など平衡感覚に問題が起きた状態を改善しようとする場合に、血流を整え、内耳の状態を整えるだけでは不十分で、足(下半身)の状態を整えなければならない場合もあります。
 ですから「足のバランスが悪くなると」あるいは「足からの何らかの情報が脳に届かなくなると」あるいは「足から頭への情報が乱れた状態になると」平衡感覚が正常ではなくなる可能性がある、と言うことはできるかもしれません。

 ところで足と頭(脳)の精妙な連携にとって「小脳の働き」はとても気になります。下記のサイトを是非ご覧になってください。


 高齢化の現象として、加齢現象の一つとして、“足元の不安”があります。「段差もないのにつまずいてしまう」「なにしろ転ばないように用心深くなる」と高齢者はよく仰います。その用心深さが足首の動きを硬くしてしまうため、からだに悪影響が及んだりすることもあるのですが、そのことよりも“足元の不安感”の方が先に立つようです。
 ですから「足元に不安定さを感じるようになったら老化が進んだ」と言えるのかもしれません。それは単に「筋力が衰えた」「骨格が弱くなった」という老化現象ではなく、小脳と足の連携に“ずれ”が生じ始めたことによって“不安”が心を占めるようになってきたという老化現象です。
 もしそうであるならば、対策としては足趾や足底の感度を高めるために裸足で動く時間を増やしたり、足元に不安を感じたとしても外出して歩いたり作業したりする時間を増やすことなどかもしれません。
 「危ないから家でじっとしていて!」という家族の気持ちはわかりますが、それでは益々小脳と足との連携のずれが大きくなってしまうかもしれません。ですから、見守りながらも、なるべく足を使って動く時間を増やすのが良いのではないかと思います。



 以上をまとめますと、めまい、ふらつき感、足元の不安定感の原因としては
①脳への血流が悪く、必要な血液が足りない状態(≒酸欠状態)
②頭蓋骨の歪みなどにより内耳(三半規管)機能のバランスが悪くなってしまった
③小脳と足の精妙な連携にずれが生じた
 などが考えられるということになります。
 そして、どれか一つの問題だけでは症状を発することはなく、2つ3つ悪い状態が重なったときに症状が現れるのではないかと思われます。
 ですから、症状を改善しようとする場合は、「①血流、②耳(頭蓋骨)、③足(下半身)の3つの側面を全部確認して調整する必要がある」ということになります。


参考文献‥‥「ヒトのからだ」(三木成夫著)より引用
平衡器(耳)
 われわれは、自分自身の体位や動きの変化を、耳の奥にある平衡器で感ずる。これは骨迷路に浮かぶ膜迷路の後ろ半分からなりたつ。それは球状と楕円状の袋(球形嚢および卵形嚢)に三つのドーナツ型のチューブ(三半規管)が、たがいに直角に交わるようにくっついたもので、これらの袋やチューブの中には液体(内リンパ)がみちている。

ヒトとクラゲの平衡覚器

 球形嚢と卵形嚢の底には、小さな石(耳石)がしずみ、そこにはえている感覚細胞の毛を静かにおさえつけている。そして、からだがよろめき、あるいは頭が上下、左右、前後に動いたとき、この石がゆれて、毛をなでるしかけとなっている。一方、三半規管のそれぞれの輪の一端は、わずかにふくれ上がって、その壁には、やはり毛のはえた感覚細胞がならんでいる。そして、頭が前後左右、あるいは水平に回転したとき、それぞれの半規管に内リンパの流動がおこって、この感覚細胞の毛をなびかせるしかけとなっている。そして、この興奮が脳へ伝えられるのである。
 このような平衡器は、すべての動物に共通したものである。すなわち、動物が地球上でひとつの運動をする時には、そこが水中であれ陸上であれ、あるいは空中であれ、これだけの装置が必要なのである。ただしこの場合、一般に運動の単純な無脊椎動物では、わずかに球形嚢に相当するものだけしかなく、もっとも簡単なアメーバでは、細胞質内の粒子の慣性だけでこれがまかなわれるという。
 一般に平衡反射は、全身の動物性筋肉によって体位の立て直し、すなわち、反動という形でなされるが、この際特に眼球の運動が、このひとつの代表として行なわれる。これは目標がからだの外になくて、その内にあるので、そこでは一般の向背運動は見られない。このように動物性筋肉によってささえられている平衡反射も、動物の分化とともに、しだいに植物性筋肉の運動がこれに加わり、特にめまいによる吐気(はきけ)は、日常しばしば経験するところである。


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 花粉症の時期も終盤にさしかかりましたが、この時期(春先)は季節的な要因で胸に変化が起こりやすくなっています。
 花粉症に関係するからだの変化としては、胸(胸骨)が下がり、それに合わせて鼻(鼻骨)も下がってしまうことがあります。東洋医学では「鼻は肺の煙突」と表現されるほど、鼻と肺にはとても深い関係性があるとされています。アレルギー性の症状として鼻炎(花粉症)と気管支喘息がありますが、ともに肺と関係があると考えますと、肺―胸―胸腺―免疫という一連の関係性が浮かび上がってきます。そして実際、胸骨や胸郭を整えますと鼻骨が上がり、鼻の通りが良くなることがあります。

 花粉症の人も、そうでない人も、多くの人が春先は胸が下がり鼻が下がるわけですが、それは季節的な要因であり、季節の変わり目の影響であり、三寒四温など自然現象による“からだの変化”と捉えるのが妥当かもしれません。
 そして胸骨が下がるだけでなく、胸の筋肉(大胸筋と小胸筋)がこわばって胸郭が狭くり、肋骨の動きが悪くなっている人がたくさんいます。これらの変化は動悸や息切れ(浅い呼吸)などの症状をもたらすかもしれません。

“肋骨の帯”のように働く二つの後鋸筋
 さて、「胃の調子が冴えず、背中に辛さを感じる」という症状の原因の一つとして、背中の筋肉が張っていて肋骨の動きが制限されているというのがあります。これまでの投稿で、背中の辛さや痛みについて、肩甲骨の内側、胃の裏側、肋骨下部など場所別に説明してきましたが、今回はそれらに加えての説明になります。
 背中の深いところに後鋸筋(こうきょきん)と呼ばれる筋肉があります。肩~肩甲骨辺りの深部に上後鋸筋(じょうこうきょきん)があり、肋骨の下部に下後鋸筋(かこうきょきん)があって胸郭の背面を支える働きをしています。学問的には、その働きは「肋骨(胸郭)を上下に動かし、呼吸を補助する」とされていますが、実際は胸郭の上部と下部を“帯で縛る”ようにして安定させたり、動きを制限したりしているのではないかと私は感じています。

上後鋸筋と大胸筋(だいきょうきん)の関係
 強い肩こりや背中のこりを持っている人は左右の肩甲骨の間が盛り上がったように硬くなっている場合があります。肩甲骨周りには表層から僧帽筋(そうぼうきん)、菱形筋(りょうけいきん=大菱形筋と小菱形筋)という筋肉がありますが、通常の肩こりや背中のハリでは、この二つの筋肉が施術の対象となります。しかし、その奥が硬くなっていて指圧しても、揉みほぐしてもなかなかコリが解消しない場合があります。「難治性の肩こり」と表現している施術者もいるようですが、その筋肉が上後鋸筋です。

僧帽筋・広背筋・菱形筋・下後鋸筋

後鋸筋と脊柱起立筋

 この筋肉が硬く盛り上がっている人の多くは胸郭の厚みが増していますが、それは上後鋸筋のこわばりが肋骨を背骨の方に引きつけているからだと考えられます。
 からだの個性として、「胸板の厚い人」「丸っこい胴体の人」「胸が平たく薄い人」「鳩胸の人」「お腹は出ているのに胸は薄い人」等々、いろいろなタイプの人がいます。こういった個性が本来的なものか、それとも胸の変化による一時的なものかを判断しなければなりませんが、胸はいろいろな要素によって刻々変化します。そして、その変化をもたらすのは肋骨に関係する筋肉になるわけですが、上後鋸筋はその一つです。

大胸筋と小胸筋

 胸の骨格である胸郭は前面中央にあります胸骨と肋骨と背面中央にあります背骨(胸椎)でできています。胸部(前面)には大胸筋という力強い筋肉があります。大胸筋は鎖骨と胸骨と肋骨など胸郭前面の骨と腕のつけ根(上腕骨大結節稜)を繋いでいますので、胸骨や鎖骨が変化することで大胸筋の状態が変わったり、あるいは大胸筋の状態によって胸郭の状態が変わったりします。
 そしてこの時期(春先)は大胸筋がこわばっている人が大変多くなるのですが、それによって胸郭の前面が狭くなり、息苦しさや動悸などを招いてしまうことがあります。私の感覚では、このような状態の人の胸は「内側に落ち込んでいる」と感じます。
 両腕も肩のつけ根のところで内側に入り込んでいたり(内旋)、あるいは腕のつけ根の辺り(大胸筋停止部=上腕骨大結節稜)を強めに触ると痛みを感じたりしますが、それは大胸筋がこわばっているからです。

上後鋸筋のこわばり

 「春先は胸骨が下がり、胸郭が内側に落ち込んでいる人がたくさんいる」というのが私の率直な印象です。そして「背中や首のつけ根辺りにツッパリ感を感じる」という人も多くいます。
 そして、この背面上部の突っ張りは上後鋸筋のこわばりによるものだと考えられます。
 胸郭の前面にある大胸筋のこわばりによって肋骨が胸骨の方に引きつけられますが、それは胸骨が相対的に落ち込んだようになるのと同時に、肋骨が内向きに回旋しますので背面では背骨から肋骨が離れるような状態になります。それを阻止しようと上後鋸筋は収縮するわけですが、この状態が常態化して上後鋸筋の慢性的なこわばり状態を招くと考えることができます。

 そして、このこわばり状態が「すっきりしない背中の上部」「帯で締められたような感じ」「呼吸で息が深く入いらない」「仰向けで寝ると首のつけ根から背中にかけて嫌な感じがする」などといった症状をもたらすことになります。
 「強情な肩こりや背中のこり」だと思って、道具を使って一生懸命叩いてみたり、誰かに揉んでもらったりしても、一時的に解放されて気持ち良くなったと感じるかもしれませんが、スッキリ解決することはほとんどないと思います。なぜなら原因の多くは胸の前面にあるからです。

 さて、大胸筋や胸骨の問題で上後鋸筋がこわばっている場合の対処方法について考えてみます。
 繰り返しになりますが、この季節は誰もが、胸の状態が程度の差こそあれおかしくなります。胸はいろいろな事象に反応して変化しやすい部位です。季節の移り変わりを感じますし、精神的なことでももちろん変化します。そして「変化する」というのは、具体的には骨格の形が変化するということですが、それを行うのは筋肉であり、筋膜です。ですから、筋肉と筋膜を整えることで対応することができると考えることができます。
 実際、大胸筋のこわばっている人がたくさんいます。大胸筋は鎖骨の下から腕にかけての広い部分にありますが、その部分を少し強めにマッサージすると痛みを感じると思います。特に腕の近く、腋の下の部分は筋線維が集まっていますので、かなり痛く感じると思います。
 その痛みが軽減するまでマッサージしたり、筋束を掴んでゆるめたりしていただきたいと思います。そうしますと次第に胸が解放されるような感じになり、実際に胸が広がるわけですが、同時に背面の上後鋸筋のこわばりも改善しますので、呼吸が楽になるなどの変化が現れると思います。

大胸筋へのセルフケア

 また普段の顎の使い方として、顎先に力を入れて口を動かしている人も多くいますが、そういう人は顎先(オトガイ)から顎ラインに掛けて硬くなっています。オトガイが梅干しのようになっている人は確実にこの状態だと言えます。このような人は、指圧などでこれらの硬さを解消しますと、胸のこわばりも解消しやすくなり、セルフケアが効果的になると思います。

下後鋸筋のこわばりは背骨を整える
 肋骨の下部には「腹部の帯」のような感じの下後鋸筋があります。解剖学的には息を吐くときに働く呼吸筋、あるいは呼吸補助筋として取り扱われていますが、それよりも上後鋸筋同様、肋骨を安定させる意味合いの方が強いと思います。
 時々「背中の下の方が辛い」と訴える人がおりますが、下後鋸筋のある肋骨下部には腎臓があります。からだに疲れが溜まると腎臓が腫れてしまう人が少なからずおりますので、まずこの部位の「ハリ感」や「辛さ」は下後鋸筋のこわばりによるものか、腎臓の膨大によるものかを識別しなければなりません。
 その上で、下後鋸筋のこわばりによって「背中の下部が張って辛い」「寝ていても背中が反っているように感じる」などの場合は、背骨(下位胸椎と腰椎)を整えることが解決策だと私は考えています。

下後鋸筋のこわばり

 下後鋸筋がこわばっている人の多くは、腰部の背骨が「真っ直ぐ棒のような感じ」です。背骨は椎骨(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)が椎間板をクッションにして連結してできていますので柔軟性があり、普通は一つ一つの椎骨を触り分けることができます。ところが時々、椎骨間が詰まっていて一本の棒のように感じることがあります。「背骨に余裕がない」と私は思ってしまうのですが、腰部の背骨がそのような状態の人は大抵、下後鋸筋がこわばっています。
 腰部の椎骨に関係する筋肉には大腰筋(だいようきん)と腰方形筋(ようほうけいきん)があります。背骨全体にわたって脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は関係しますが、下後鋸筋の変調に関係するという意味では、大腰筋と腰方形筋に着目すべきではないかと私は考えています。
 そして腰方形筋は殿部の中殿筋(ちゅうでんきん)と連動しますので、中殿筋が硬くこわばってしまいますと腰方形筋もこわばり腰椎が詰まった感じになります。あるいは、中殿筋の働きが悪くなりますと、太股の骨(大腿骨大転子)が下がってしまうので、大腰筋が緊張して張ってしまい、腰部の背骨に余裕がなくなり、下後鋸筋がこわばって「お腹に帯が巻かれている」ように感じたりすることがあります。そして、実際はこちらの方が多いかもしれません。

 下後鋸筋のこわばりに対しては、脊椎、大腰筋、中殿筋、腰方形筋などの専門的な知識を要しますので、一口にセルフケアを説明することはできません。
 下後鋸筋がこわばっていたとしても、「腹部が帯で巻かれているように感じる」とか、「仰向けで寝ると反っているようで落ち着かない」といった程度の不快感を感じる症状ですから「大きな問題ではない」とも言えます。ですから、実際は無視している人がたくさんいると思います。気になる人は専門家へ相談されることをお勧めします。

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